都心不動産、さらなる上昇の条件とは
彼らは結局どうやって儲けるのかといえば、3%のキャップレートで仕入れた東京のオフィスビル(証券化されていますが)の権利を、数カ月から2、3年後までの間に、キャップレート2.5%で買う投資家が出てくると見ていて、その投資家に売却(出口=エグジット)することで利益を確保しようとしているのです。
簡単なモデルでお話ししましょう。東京中心部のオフィスビルを100億円、3%の投資利回りで買うとします。この投資の意味は100億円支払って買ったビルから毎年、諸経費を除いた利益3億円が手元に残るという投資です。3億円の年間利益しか出なくても価値があると見なすのは、数カ月後、同じ3億円の年間利益のビルを120億円払ってでも買いたいという投資家(つまり3億円÷120億円=利回り2.5%)が現われる可能性があると考え、そうなれば彼らにとっては差し引き20億円もの利益を出口で手にできると想定できるから「買う」という判断を行なうのです。
もちろん、3億円だった年間利益が賃料などの上昇で4億円に上がっていれば、投資家目線としては同じ3%の利回りであっても133億円(4億円÷3%)の値段をつける投資家が現われるという目論見になるわけです。
このように3%で買って2.5%で売って儲けるようなやり方をアービトラージ(鞘取)取引といいます。マネーゲームをやる人たちにとっては、ごくあたりまえの考え方です。
結局彼らは、こうした数字上でのゲームをやっているだけなのです。チキンレースと呼ばれるのも、まだまだ今後もキャップレートは下がる(価格は上がる)と見るか、東京のオフィス賃料が上がる(キャップレートが上がったことに伴って、利回り調整が生じて価格が上がる)と見るか、あたかも麻雀の卓を囲んでいるような光景なのです。
金融資本主義というのはこんなものです。所詮、日本の将来やらなにやらをまとも に分析している姿など、私はほとんどお目にかかったことがありません。むしろ、自分たちの投資を成功裏に終わらせるために、彼らはさまざまなフェイクニュースを拵えたりさえします。
そして結局、最後に誰かが「ババ」を摑んでこのマネーゲームはいったん「お開き」ということになります。「いったん」と言ったのは、ゲームはまたどこかで再開されるからです。上がり切れば売り、下がり切れば買う、この単純な投資ゲームに付き合わされる真面目なビルオーナーやビル管理など、実業を司る方たちにとってはある意味迷惑この上ない世界なのかもしれません。
さて、最後の利益とりを目指して、チキンレースはさらに加速するのでしょうか。都心の不動産はそうした意味でまだ、上がるかもしれません。そのための条件とはなんでしょうか。
投資家たちの「絶えざる欲望」です。少し心配なのが、海外投資家でも2017年あたりから、あまり日本に馴染みのない国の年金基金やら投資ファンドやらが入ってきていることです。彼らが最後のババ摑みであれば、そろそろ宴はお開きなのです。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役