新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

安っぽい「ゆるキャラ」とB級グルメの押し売り

地方創生では、地方の自立的な発展を目指して多くの施策を自治体独自で作り出すよう仕向けていますが、現状での地方創生は相変わらず安っぽい「ゆるキャラ」の闊歩と、何も特別に食べに行かなくてもよいようなB級グルメの押し売りばかりというのが、実態です。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

外国人観光客を呼び込むことも各地で試みられていますが、どうも外国人が好む日本の景色や風物、食事やサービスと、地方が勝手に考える「おもてなし」との間にも、ギャップが大きいことも明らかになっています。

 

外国人は勝手に日本中を歩き回って、気に入ったもの、気に入ったところであれば、惜しげもなくお金を使います。それは商品であっても不動産であっても同じです。

 

京都などで古民家に宿泊することが外国人の間では「ワンダフル」と喝采されるように、彼らが好む不動産も私たち日本人の常識から判断してはならないようです。

 

日本の地方都市は、実はここ数十年でずいぶんと豊かになりました。今では地方の 中核都市に行けば、東京人でもびっくりするような立派な美術館、図書館、アリーナ、ドーム付き競技場など、公共施設の充実ぶりには目を見張らされます。

 

しかし、冷静な目で見ればこれらの施設は、住民が利用するにはあまりに豪華すぎる一方で、不動産の価値としては対外的には何も発信できていない施設にも映ります。

 

たしかに札仙広福(札幌・仙台・広島・福岡)といわれる地方四市くらいにまで、今回の不動産バブルはやってきているかもしれませんが、その他の地方中核都市に及んでいない理由は明らかです。つまり、対外的には「不動産としての価値がない」ということなのです。外国人の審美眼は、ある意味とてもドライです。

 

不動産における都会と地方の差は広がるばかりです。人口減少と高齢化の歯止めがかからない地方は今後「いかにして人を呼び込むか」、そのソフトとしての事業戦略を組み立てるべき時が来ています。それは単なる移住やUターン、Iターンを念仏のように唱えるのではなく、都会から人を買うリクルート戦略とその人が使う不動産の付加価値をいかに高めていけるかに、かかっているのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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