新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

不動産業がハコの中身を企画立案できるか

社会学の言葉に、「ストロングタイズ」と「ウィークタイズ」という言葉があります。「タイ」とはネクタイのことです。つまり「強く締めたネクタイ」と「少し緩めたネクタイ」という意味で、社会の在り方、価値観の置き方の違いを説明した言葉です。

 

ストロングタイズの世界は、びしっとネクタイを結んだ状態。つまり確たる「成功の方程式」が存在し、その目標を達成するために一心不乱に仕事する、そのために強固な組織を構築する、圧倒的な資金力を持って市場を制する、こんなビジネスモデルです。これまでの不動産業界がまさにこの「ストロングタイズ」の世界です。不動産屋の多くはネクタイを必ず着用していますよね。

 

これに対して「ウィークタイズ」の世界は、ネクタイを緩めた、あるいはノーネクタイのちょっとだらしない人たちの集まりです。相互に強固な関係性はなく、お互いがそれぞれの立場から発言する、仕事に関わる緩い関係を示しています。こうした仕事は、複雑な方程式を解くために外部組織とも連携しながらプロジェクトを企画立案する能力が必要になります。

 

これからの不動産業がハコの中身を企画立案しなければならない時、実はこの能力が業界には十分に備わっていないのです。

 

私は現在、不動産の事業プロデュース会社を経営していますが、私が狙ったのは、まさに不動産に関する事業企画立案をお手伝いするというソフトウェア事業です。私の会社は不動産投資をやっているわけでもありませんし、不動産管理を行なっているわけでもありません。よく関係者から、

 

「牧野さんの仕事って何やってんの?」

 

と聞かれることも多いのですが、この仕事を専業でやっている会社は、私の知る限り日本国内にはほとんどありません。

 

私の会社がある小さなオフィスに日々集まるのが、このちょっとネクタイの緩んだ人たちです。バリバリの不動産屋さんはあまりいらっしゃいません。不動産にソフトウェアを構築する、不動産の未来事業です。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

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