不動産はハード整備に力点が置かれてきた
新築住宅着工戸数が減少し、新築オフィスの供給が止まり、インバウンド狙いのホテル建設が一服すると、これまでひたすらハードのみで勝負してきたデベロッパーやゼネコンが苦境に陥ることが予想されます。
彼らにとっては、経済変動だけでなく、人口減少および高齢化という、日本社会が置かれた状況から「構造的に」顧客がいなくなるというのは、おそらく初めての経験になるのではないでしょうか。
これまではとにかくハコさえ作れば、多少売れない時期や借り手が現われない時期があったとしても「まあなんとかなる」というのが、彼らのビジネスでした。
ところが「ハコはもういらない」と言われた瞬間、彼らは存在意義を失ってしまうのです。今回、不動産バブルが崩壊した時に、彼らのうちの何社かが苦境に晒されると見るのは、不動産における「価値観の変革」を、今回の崩壊がもたらすのではないかと見ているからです。
ハコはすでにたくさん存在しています。ですが、それぞれのハコはそれを作った時代のニーズに合わないものが多くなってきました。ではハコを作り直すのか。一部の大きなハコは作り直せばよいですが、それ以外のハコは作り直すだけのお金もありませんし、費用対効果も見込めません。
そこで考えなければならないのが「ハコの中身」です。これまでの「オフィス」あるいは「住宅」と称していた中身、つまり用途が現代にそぐわなくなってきているのです。したがって中身を考え直さなくてはなりません。これが不動産バブル崩壊後の業界の命題なのです。
ソフトウェアの登場です。これまで不動産はひたすらハードの整備に力点が置かれてきました。以前、住宅は常に不足し、オフィス床は経済成長とともにニーズは拡大する一方でした。ひたすら「量」を供給していけば、顧客の要求に応えられた時代でした。
そして人々の生活が豊かになり、ビジネスも複雑化高度化する中で、より機能性があるオフィス、立派な設備仕様のマンションが整えられてきました。これも環境変化に対応しただけでハードをより強固にした変化にすぎませんでした。