AI、IoTが不動産を支配する時代に突入
もともと不動産業界は超ドメスティック産業ともいわれ、いつの時代でも「経験とヤマ勘」の世界でした。そのせいか、どちらかといえば、体育会系の度胸と根性で勝負できる人材や、英語はまったくダメでした、理数系は苦手、などというタイプの人材の宝庫でした。
不動産の証券化が進むことによって、それまでブラックボックスといわれた不動産の運用状況、つまりどんなテナントにいくらで貸しているか、管理費はどのくらいかけているのか、投資家向けに情報開示が進みました。理数系は苦手とはいってはいられなくなったのです。ついでにいえば外国人投資家も登場してきたので、英語苦手も通用しなくなりました。
さらにこれからの時代、この業界にもご多分にもれずAI(人工頭脳)、IoT(モノのインターネット)の世界がやってきます。
ある日、私のオフィスに聞きなれない会社の方からの訪問がありました。彼らの相談事というのは、中古マンションの住戸すべてについて、AIを駆使して毎日株価ボードのようにその日の値段をつけるビジネスをしたいという素っ頓狂なものでした。
マンション住戸を上場しているわけでもないのにどうやって株価、否、不動産価格が付くのか仕組みは最後までよくわかりませんでしたが、こうしたシステムが世の中的にはどのような役に立つのか、あるいはどのように構築すれば役に立つのかといった難しい質問でした。
マンション相場が下がっている時には、自分の住んでいる住戸の暴落ぶりを嫌でも見せられる、そんなことでよい気分になる人は皆無じゃないかと初めは思いました。しかしよくよく考えてみると、多くの人は自分が住んでいる住宅の現在のマーケット相場をあまりよくご存じない、自分の持っている株式は毎日株価ボードとにらめっこしているくせに……。では時価を知れば、その所有者は狼狽して慌てて売りに出すかもしれない。それはひょっとして「人助け」になるかも。