団塊世代の親が築いた家は「財産」ではなくなる
不動産はこれまで、所有していれば価値がある「財産」として多くの国民が認識してきました。高度成長期から平成バブル時まで不動産はほぼ一貫して「右肩上がり」の成長を続け、一般庶民はとりあえず家さえ持つことができれば財産形成ができるとされました。
とりわけ1970年代から80年代にかけて、多くの若者が地方から東京などの大都市の学校で学び、企業に就職して「勤労者」の道を選ぶようになりました。団塊世代はその典型的な世代といえましょう。彼らの多くは地方に戻ることはなく、そのまま家族を持ち、大都市で定住するようになりました。定住するために彼らが求めたのは財産である「家」でした。
都心の地価は高すぎて手が出なかった彼らは、都心から郊外へと放射線状に延びる鉄道沿線に家を買い求め、長時間の通勤ラッシュと長期間にわたる住宅ローンの返済に耐えて生活を営んできました。
そんな彼らも定年退職。住宅ローンに次ぐ多大な教育費をかけて育てた子供たちも無事に巣立って、夫婦水入らずの老後生活を送っているご家庭も多いのではないでしょうか。
しかし、こうして手に入れた生活は今後、子供たちや孫たちの代へと引き継がれていくのでしょうか。家という財産を持ったのだから、この財産は次の代へと当然のように引き継がれていくべきなのですが、子供たちは都心のマンション住まい。家に帰ってくることなど考えられません。
それでは自分たちが亡くなった後の家はどうなるのでしょうか。子供たちが住まないとしても家は「財産」なのだから、子供たちの生活を豊かにしてくれるものになるはずです。ところが、事態はあまり良い方向には向かっていないようです。彼らが汗水垂らしてやっとの思いで手に入れた家が「財産」ではなくなりつつあるからです。