新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

サブリースには隠れた数々の契約がある

しかしそのストーリーは、あたりまえですがアパート事業というビジネスが順調であることが大前提です。日本は少子高齢化が進行していることくらいは、誰でもが知っているはずです。そして、自分が所有する土地の周辺に、アパートニーズがどの程度ありそうか、そのくらいはセールスマンの口上を聞くだけではなく、よく考えて判断したいものです。

 

自分のアパートを建設してから周りじゅうに同じようなアパートが建って驚いたなどという感想もよく聞きますが、業者が自分だけに耳寄りなアパート投資の話をしているはずがありません。エリア内の需給バランスと将来的なリスクくらいには目を配っておきたいところです。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

トラブルになりやすいのが、サブリースです。サブリースはアパート業者が一定期間アパートを借り上げて、賃料を保証してくれる仕組みです。だからアパート事業など何も知らなくとも安心、と考えがちです。たとえ空室が多くとも業者が保証してくれるからです。

 

しかしアパート業者とて、商売です。こうした契約にはいろいろな条件を付して、大きなリスクを会社としてもとらないように工夫をしています。多くの場合は建物賃貸借契約期間とサブリース契約期間が異なることです。賃貸借期間は30年であってもサブリースによる保証は10年間だけだったり、保証金額も5年で変更できるといったものもあります。

 

また、サブリース期間満了時には、指定された業者によるリニューアル工事を行なわなければサブリース契約を継続しない、といった条項も多くの契約内容に見ることができます。サブリースは業者にとっても大きなリスクです。当然そのリスクをどこかで穴埋めしなくては、商売にはならないのです。

 

こうした契約内容をよく理解せずに、金融機関から言われるままに多額の借入金を調達し、アパート経営を始めたつもり、になっている不動産オーナーが数多く存在します。

 

さて、不動産バブル崩壊が現実となった場合、こうしたアパートオーナーたちはどうなるでしょうか。まず、マーケットでの金利水準が上昇することによって、アパートローンの金利が上昇するリスクがあります。景気の悪化を受けてアパートの空室が増え、テナントの賃料が下落するリスクも顕在化します。

 

サブリースだから安心と思っても、業者側から保証賃料の引き下げを求められるリスクもあります。「保証したじゃないか」と考えたいところですが、日本では借家法によって不動産の借主はサブリース業者であろうとも、法的にはきわめて有利に保護されています。

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