新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

家に財産としての価値がなくなる日

これからの日本で確実に起こる「多死社会、大量相続時代」は、不動産市場に大きな影響を及ぼすものと想定されます。つまりこれまでの、人口が増加する、あるいは都市部へ集中する、そして経済成長が続くという環境の下で、実需に基づき価格形成が行なわれてきた不動産市場が、今後は叶わなくなるということを意味しています。

 

家に財産としての価値が見出されなくなるのです。

 

家は放置しても、固定資産税などの税金の負担がある。
家は放置しても、固定資産税などの税金の負担がある。

 

空き家は、今後首都圏郊外を中心に大量発生することが予想されます。団塊ジュニアは相続した郊外部の家の処理に困り、空き家のまま放置せざるをえなくなる状態に追い込まれそうです。

 

家は放置しても、固定資産税などの税金の負担を余儀なくされます。またしばらく放置状態を続けると木造家屋は急速に傷み始めます。敷地内は雑草が生い茂り、樹木は枝を伸ばして隣家との境界を平気で跨 また いでいきます。

 

それでも親が残した家、何とか管理を続けようとしますが、金銭的な負担も含めていったいいつまでこうした状態を保ち続けることができるでしょうか。

 

私のところにも、相続した家の問題で相談がよく持ち込まれます。正直このまま持ち続けても、平成バブル時のように不動産全体が値上がりするような時代が来ることは考えられません。「いくらでもかまわないので売却できるのならば売却したほうが良い」というのが、多くの相談に対する答えになってしまいます。

 

ところが、親の家というのは意外とやっかいなものです。兄弟姉妹で相続をして持ち分を共有で持っていたりすると、決断がまったくできなくなります。

 

私の知人は東京の多摩方面のニュータウン内にあった親の家を相続で兄、知人、妹の3人で引き受けたものの、今後の家の取り扱いで大揉めです。本人は都心まで通勤で1時間30分もかかる親の残した家に住むつもりはありませんし、エリアに愛着もありません。不動産サイトで調べてみると、1000万円近くなら売却できるかもしれない。それならば早く売れるうちに売っておこうという意見。

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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