本記事は、人材育成・組織行動調査のコンサルタント西村直哉著『世代間ギャップに勝つ ゆとり社員&シニア人材マネジメント』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    日本はハイコンテクストな「忖度(そんたく)」文化

    ハイコンテクストな文化の代表として、ホールが例に挙げているのが日本です。島国であり、歴史的にも「鎖国」制度を採っていたこともあって、日本は同質性の高い文化ができ上がりました。アイヌや琉球人や在日外国人といった例外はあるものの、ほぼ同一民族で同一言語が話されている日本では、すべてをくだくだしく言語化しなくても、お互いに理解し合えるハイコンテクストな「忖度(そんたく)」文化が支配的でした。

     

    たとえばホールは、1960年代に日本で長期滞在していたホテルで、何の説明もなく部屋替えが行われ、荷物が勝手に移動される経験をしました。アメリカ人であるホールにとって、事前の了解なく部屋を替えられたり私物に勝手に触られたりすることは、深刻なパーソナルスペースの侵害にあたりました。しかし、ホールは同じことをされても怒らない日本人を見て気づきます。

     

    日本においては、どこかに「所属」することが何よりも重要であり、ホテルに所属した客は「ヨソ者」ではなくなり、ホテルの一員として家族扱いを受けるのです。それはホテルの「おもてなし」であり、そうなって初めて客もリラックスできます。事前に了解を得ることもなく部屋を替えるのも、荷物を勝手に移動するのも、家族の一員として扱っていることを示すホスピタリティーだったのです。

     

    なるほど、家族であれば、いちいち了解を求めるようなことは「水臭い」と捉えられるかもしれません。親は子どもに「掃除のためにあなたの部屋に入ってもいいですか?」と尋ねることはないでしょう。それは家族間の暗黙の了解でOKとされているからです。

     

    しかし、アメリカではたとえ親子であっても、勝手に部屋に入ったり、無断で家に人を呼んだりするのはルール違反だとみなされます。それだけ個人が尊重されているのでしょうし、言葉にして了解を得なければ深刻な問題になるかもしれないからです。

    「いったん財布を出す女性」もハイコンテクスト?

    移民が多く多文化が共生するアメリカや、周辺諸国と地続きで多民族が暮らすドイツは、ローコンテクストな文化の代表です。そこでは、相手がどう感じているのか、何をしたいのかをいちいち言葉で確認しなければ分からないものとされていますし、自分の意向や意見もまた、丁寧に言葉で説明しなければならないとされています。それができない場合には、不気味なヨソ者とみなされてしまうのです。

     

    たとえば、日本では男性が女性を食事に誘ったときに、暗黙の了解で男性が支払い、女性もそれを期待しているとされています。そのため、割り勘を求められた女性が、その場ではにこやかにしつつも、あとからネットなどで「信じられない」と愚痴っているのを見ることはよくあります。

     

    このようなハイコンテクストな文化が度を超すと「せっかくお手洗いに立ったのに、その間にスマートに支払いを済ませておかない男性は駄目」だとか「女性はおごってもらうつもりでも、いったんは財布を出して支払う姿勢を見せるのがマナー」だとか、謎の忖度合戦が繰り広げられます。

     

    ところが、ドイツ人男性とデートをした日本人女性によれば、食事のときにストレートに「私はおごってもよいと思っているが、あなたはどう思っているのか。もしおごってほしいのであれば、そう言ってほしい」と言われたそうです。

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    世代間ギャップに勝つ ゆとり社員&シニア人材マネジメント

    世代間ギャップに勝つ ゆとり社員&シニア人材マネジメント

    西村 直哉,江波戸 赳夫

    幻冬舎メディアコンサルティング

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