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「会社に反感を持っている」…アメリカと日本の“差”
アメリカの人材コンサルティング会社が2013年に行った「従業員忠誠度(employee engagement)の各国比較」によれば、日本の社員で「会社に強く忠誠心を感じている ((highly engaged)」と回答した人の割合は、調査対象国中で最低の9%でした。
一方、「会社に反感を持っている」と回答した人の割合は調査対象先進国中で最高の33%でした。別の調査でも、日本のサラリーマンは、世界で最も自分の働く会社を信用していないという結果が出ています。日本企業はいつのまにか、社員に嫌われる会社になっていたのです。
会社と社員との間のエンゲージメント(絆)が失われてしまえば、残るのはただの利害関係です。社員は常に会社に搾取されていないかを気にするようになり、会社は社員に裏切られないかと社員を監視するようになります。そこまでいかなくても、もらっている給料以上に働くことをばかばかしく感じ、会社と社員とは労働契約によって結ばれた利害関係でつながっているにすぎないと冷めた考え方をするようになります。
実際、近年のブラック企業告発の流れやCSRやコンプライアンス重視の風潮には、このような会社と社員との関係の変化が背景にあります。このような時代の変化を最も鋭敏に感じているのが若手社員です。彼らは会社と社員とがファミリーであった時代を知らず、それを話として聞いても、うらやましいとは思いません。
それよりも、労働契約にのっとって有給休暇を何の遠慮もなく取得できたり、サービス残業を拒否できたりすることのほうを望みます。
言い換えれば、昭和を引きずるベテラン社員と、平成生まれの若手社員では、会社との関係性についての前提条件が異なります。
私が新人だった頃は、上司によく飲みに誘われましたし、誘われたらそれがどんな相手であっても二つ返事で参加していました。断るという考えはありませんでした。それはお酒を飲むのも、お酒の場で上司や同僚と会話をするのも楽しかったからです。
しかし、今の若手社員には、会社の飲み会はそれほど楽しくないと感じている人もいるようです。いったい、彼らはどのような感性を持っているのか、どのような働きかけをすれば仕事のやる気が高まるのか、頭を抱えている管理職が大勢います。
「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」の違い
より良いマネジメントをするためにはどうしたらよいのか。その答えを探してさらに古典をひもといた私は、文化人類学者エドワード・T・ホールの著書『文化を超えて』の中で、そのヒントを見つけました。
ホールは世界各国の文化を比較するなかで、コンテクスト(文脈)に注目しました。コンテクストとは、実際に言葉として話される内容に対して、言葉にされていないのにお互いに了解されている内容のことです。
ハイ(高)コンテクストな文化では、交わされる言葉以上に、お互いの関係やその場の状況や空気による理解が重要とされます。一方、ロー(低)コンテクストな文化においては、言葉にしなくては内容が伝わらないために、できるだけ精緻(せいち)にすべての情報を言語化なければなりません。