不動産投資業界では悪名高かった「スルガスキーム」
地方銀行のビジネスモデル自体も存続が危ぶまれるなか、スルガ銀行はいち早く個人分野に特化して独自の収益構造を確立。金融庁からも「地銀の一つのあり方」としての評価を得るまでになりました。
スルガ銀行の地位が確立したのは、投資用の不動産購入資金を融資するパーソナルローンができたからです。スルガ銀行の利益のうちの9割は、アパートやマンションに対する投資ローンから生まれており、2017年には9000億円もの売上を誇りました。
広く個人を対象として口座を開き、資金運用や手数料などで事業を行う一般的な銀行とは、一線を画すビジネスモデルです。そしてこのローンの誕生こそ、ここ数年の不動産投資ブームの火付け役となったといえます。
実はスルガ銀行の融資を組み入れた投資手法は、不動産投資業界では「スルガスキーム」と呼ばれており、以前から悪い意味で有名でした。その特徴は、融資審査の独自基準にあります。
本来、不動産に対する融資審査は、物件の価値を査定することから行われます。しかしスルガ銀行では、物件そのものではなく、それに投資する人の属性――つまり「どれほどのお金なら払えるのか」という資産状況から融資額を算出するやり方をしていました。
ちなみに「かぼちゃの馬車」事件において、スマートデイズはそのスルガスキームに沿うかたちで、30代〜40代の働き盛りのサラリーマンを営業の主要ターゲットにおき、特に一定以上の収入がある大手企業の社員らを狙い撃ちにしていました。
スマートデイズが販売していた物件は、1棟あたり1億円前後。所有者の多くは、スルガ銀行からの全額借り入れによって物件を購入していました。これが具体的にどんな事態を招くのか――。
例えば、メガバンクで5000万円と査定された物件があったとします。メガバンクの査定は一般的な相場からそう大きく外れることはありませんから、その物件の価値は、まっとうに算出すればどこの銀行でも5000万円前後に落ち着きます。