「スルガに持ち込めばなんとかなる」風潮があった
しかしスルガ銀行は、物件の価値に注目しません。貸し倒れのリスクは考慮しつつも、そのオーナーとなる人物がどれほど借りられるかにフォーカスを当て、できるだけたくさんの融資を下ろそうとします。その結果、メガバンクで5000万円と査定される物件に、スルガ銀行だけが1億円もの値をつけるような事態が頻発してきました。
それゆえにスルガ銀行は、サブリース事業者をはじめとする不動産事業者にとって、簡単に融資をつけてくれる「駆け込み寺」的な存在となり、普通の金融機関なら審査が通らないような物件でも「スルガに持ち込めばなんとかなる」という風潮を生みました。
■最後に泣くのは結局「投資家」
実際にスルガ銀行では、一般的な金融機関が扱わないような不良物件にも、積極的に融資を行ってきました。
スルガ銀行の金利は他に比べ圧倒的に高いのですが、業者側としては、それでも不良物件を在庫として抱えるよりはましですし、高い金利のツケは結局投資家に払わせればいいとして、スルガ銀行を利用してきました。
投資家は、土地を所有しておらずとも、頭金がなくとも、多額の融資により不動産投資を始められる。不動産事業者は、例え二束三文の物件であっても、スルガ銀行の査定および融資を背景として高値で販売しやすい。そしてスルガ銀行自体も、高い金利を手中に収められる。この一見すると三方よしにも見えるようなスキームこそ、スルガスキームだったのです。
ただ、冷静に考えれば分かるはずなのですが、このスキームで最も損をするのは投資家です。物件を買う時点で相場よりもはるかに高い価格を支払っているわけで、それをもし一般価格で売ろうとすれば当然大きな損が出ますから、なかなか売ることができなくなります。例え空室が多くなり、赤字になっても運用を続けざるを得ません。こうなるとまさに八方ふさがりの状態です。
そしてまた、不動産事業者にとっても、大きなリスクがあります。スマートデイズが倒産したのも、「スルガスキーム頼み」の経営手法のせいです。