年間約130万人が亡くなる日本社会。故人の遺産をめぐり、親族間で醜い争いになるケースが多発しています。相続が発生してから「家族と絶縁する羽目になった…」「税金をごっそり取られた…」と後悔してしまわないためにも、トラブル事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説していきます。

資産の分散を防ぐため祖父が用意した、公正証書遺言

今回の相談者であるY山さんは、大地主のお孫さんです。祖父が亡くなったことで相続税額に不安があるとのことで、筆者のところにいらっしゃいました。

 

 

Y山さんの家は、36代・400年にわたって続く旧家で、地元では有名な大地主の梨農家です。農地解放でかなりの土地をなくしましたが、それでも亡くなった祖父の財産の大半は土地であり、その所有地の大部分は自宅まわりの調整区域の農地となっています。

 

梨農家だけに畑がないと生計が立てられないため、代々の農家を守るのが本家の務めであり、自分の代で没落するわけにはいかないというのが孫であるY山さんの信条でした。

 

祖父が高齢で隠居をしたとき、Y山さんも梨作りを手伝うようになり、両親と3人で従事してきました。しかし数年前、父親が軽い脳梗塞を起こし、幸い後遺症は残らなかったものの無理ができなくなったため、現在は主に母親とY山さんの2人が農業を切り盛りしている状況です。

 

祖父は、娘たち(Y山さんのおばたち)の普段の言動から、相続になれば財産を分けてもらいたいといい出すことを予想して、孫のY山さんと母親を養子にし、公正証書遺言も作成してくれました。大部分の財産を長男(Y山さんの父親)と孫(Y山さん)に相続させ、娘4人は現金、配偶者(Y山さんの祖母)には二次相続の不安をなくすため、相続させるものはないという内容でした。

 

●相続関係者

被相続人:祖父(配偶者あり)
相続人8人(配偶者、長男、長女、次女、三女、四女
      養子:長男の配偶者、孫〈長男の子・相談者〉)

自宅は「800坪の宅地」として2億円もの評価額に…

自宅の宅地は1筆ですが、登記簿で800坪ほど。固定資産税評価は全部が宅地とされ、2億円となっています。毎年の固定資産税も相当な金額です。しかし、建物が建っているのは3分の1程度で、残りは作業小屋や駐車場、通路等など農業用として使われており、面積は広いものの、どうみても2億円の価値があるとはいえません。

 

なにより、調整区域の専業農家の自宅で、宅地とはいえ宅地分譲できる場所ではないのにあまりに評価が高く、それだけで相続税がかなりかかるのではないかと、以前から不安に思っていたとのことでした。

 

農家を継いでいるY山さんは、生前、ことあるごとに祖父から「土地や家やお墓を守ってくれ」と頼まれていたということです。祖父が亡くなってから、なんとかして相続税を安くして乗り切れないかと調べ、母親とともに筆者のところへ相談に来られたのでした。

 

あああ
36代・400年にわたって続く旧家
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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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