年間約130万人が亡くなる日本社会。故人の遺産をめぐり、親族間で醜い争いになるケースが多発しています。相続が発生してから「家族と絶縁する羽目になった…」「税金をごっそり取られた…」と後悔してしまわないためにも、トラブル事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説していきます。
不動産事情に明るい父親が残した「広い整形地」
今回の相談者は、多忙な会社員のU田さんです。U田さんの父親は、若いころから鳶職をしてこられました。第一線を退いてからも鳶職組合の役員を務めるなど尽力してこられたとのこと。職人気質のしっかりした父親だったと話して下さいました。
父親が所有する土地は角地にあり、自宅とそのまわりの畑で、約1000坪あります。道路に面しているところはいいのですが、敷地は奥が深いので利用しにくい地形でした。そこで父親は自宅の横と奥に3本の道路を造りました。幅員6mのゆったりした私道で、造成費を捻出するために、一部の土地は売却しなければいけなかったようです。おかげで自宅は四方が道路に囲まれた敷地となりました。他の区画も角地となり、すっきりと整備されています。
父親は仕事柄、不動産や建築に詳しく、まわりの農家に先駆けて昭和40年代のはじめに貸家業をはじめています。近隣に工業団地があること、車の通行が頻繁な道路に面していることもあり、借り手はいくらでもいました。しかし、築30年も過ぎるとやはり建物の老朽化が進み、退去したあとに新しい借りがつきにくくなりました。なかには家賃を滞納する人も出てきて煩わしくなったこともあり、ここ数年は貸家が空くごとに解体して駐車場に切り替えています。
そんな状況のなか、父親は70代半ばで体調を崩し、入退院を何度か繰り返したのちに亡くなりました。財産のほとんどが不動産であり、また、ほとんど整形地で道路状況もいいため、評価を下げられる要因がありません。それだけ利用価値は高いといえます。
相続関係者
被相続人:父(不動産賃貸業)
相続人 :2人(妻、長男・相談者)
徹底した借金嫌いで、相続対策はしておらず…
父親は借金嫌いで、道路の造成費と同様、貸家の建築費も土地を売却した代金を充てていたため、負債はありませんでした。逆にいうなら、相続税の節税対策をなにもしていなかったことになります。
相続人は配偶者(U田さんの母親)とU田さんの2人だけです。二次相続での相続人はU田さんだけとなり、遺産分割で揉めることがありません。しかし、土地が広いため、それにかかる相続税も少なくありません。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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