東京、大阪で起きた不可解な「土地」取引
不動産に纏(まつわ)わる政治ショウは今も昔もなくなることはない。
2018年、東京豊洲の新市場では、土地の売主であった東京ガスから東京都へ譲渡された土地に関し、土壌汚染の処理を巡ってその対応や契約の仕方、そして建物の建設方法や竣工後の地下水検査の結果について、喧々囂々の騒ぎがつづいた。
市場の豊洲への移転をするべきか、せざるべきか、首都東京が大議論をしているうちに、今度は西の商都、大阪で新たな火種が持ち上がった。「瑞穂の國記念小学院」なるいささか大袈裟な名称の学校の建設用地取得をめぐる疑惑が、時の政権をも巻き込む大騒動に発展したのだ。
この、日本を代表する2つの都市で同時進行した騒動は、不動産屋の観点から見ると、実によく似た構造にある。
現代では不動産取引を行なう際に、土地について土壌汚染があるか、ないか等の調査を行なうことは、少なくとも国や自治体、主要な法人間での取引では、ごく「常識的」な手続きだ。
また地中に埋設物があるかどうか、ゴミなどの廃棄物が存在するかどうかについても、その負担の仕方も含めて、これは必ず必要となる手続きだ。この手続きが、どうやら2つの騒動では、少なくともあまり「常識的」とは思われない、言葉を替えるならば、きわめて「特殊」な形態で行なわれていたようだ。
豊洲の土地は、東京ガスが工場として保有していた土地という。土地の用途地域は工業専用地域である。不動産屋からこの土地を眺めると、工業専用地域でガス工場があった、という時点で、表現は乱暴だが「汚い土地」ということになる。
つまりそのまま土地を取得したのでは、その後の利用に大きな支障が出るので、通常は売主側に必要な対策をすべて施してもらってから受け取るというのが、「常識的」な取引である。また取得後に発覚した土壌汚染等に対しても売主側が瑕疵担保責任(買主では簡単に発見できないような欠陥があった場合には、売主側が負わなければならない担保責任)を負う、というのが、少なくとも「常識的」な取引だ。