最後は子どもにしわ寄せがくる商品の仕組み
ここで注意したい点は、担保に入れた自宅の価値だ。金融機関は一定期間(たとえば1年)ごとに担保価値を見直し、評価が下がったときは、極度額の変更、利用可能額の低減などを行なう。また、担保価値を下回った場合には、追加担保の差出や期間内での借入額の返済なども要求してくる仕組みになっている。
借入人が死亡したときは、自宅を売却して返済できればよいのだが、売れなかったり、売却金額が、借入額に満たない場合は、その返済は相続人にも及ぶというところも、ポイントだ。
郊外戸建て住宅地は今、急速に高齢化が進み、都心居住が強まる中、その資産価値は下がりつづけている。とりわけ駅からバスでアクセス、都心まで一時間以上もかかるような家はいざ相続となった時に簡単には売却できない、というリスクが今後急速に高まってくることが予想される。売却できなければ、結局相続人である子供たちは、親の残していった、「やっかいものの不動産」と、そこにへばりついた膨大な借入金と、その利息の返済に悩まされることになるわけだ。
親は子供が興味のない家だから次の世代に残すのではなく、その資産価値を味わい尽くせばよい。子供から見れば、どうせ相続しても自分は住まないし、売ってしまえばよいと思っていたので好都合だ。「親は親、子は子」と考えがちだ。
しかしこの一見すると理にかなった、みんながハッピーなように見えるリバースモーゲージ。相続が発生して、さあ売ろうと思った時に、「売れない!」「親の借入額以下でしか売れない!」という事態に遭遇した場合に、何が起こるのだろうか。
「親が勝手に借金しただけで、自宅を売ってしまえばそれでよいと思っていた」といくら叫んでも、金融機関からは「足りない分は相続人のあんたに払ってもらいましょう」という冷たい返事が返ってくるだけだ。
リバースモーゲージの商品性をよく考えなければならないのは、実はこれから死んでいく親なのではなく、このリスクまでをも「相続」する可能性のある子なのである。
肝心なのは、リバースモーゲージの結果として「借金まみれ」になった親の家を最後に売却して返済するのは、どこまでいっても子自身であるということだ。
ニコニコと銀行員の話を聞く親の傍で「ま、親父の家なんだから好きにすればいいんじゃね」なんて鼻をほじっているバカ息子、アホ娘になってはならないのだ。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役