違法行為「仕切り営業」まかり通っていた時代があった
ある先輩は月初に1カ月分のノルマを達成したあと、無断で休みを1カ月取り米国へ旅立ってしまいました。戻ってきたときはさすがに課長代理が怒鳴りつけていましたが、支店長は黙認していたのを覚えています。証券会社では、多少素行が悪くとも、結果さえ出せていれば、何をやっても許されるような面があったのです。
ただなかには営業成績を上げるためなら手段を選ばず、顧客のことをいっさい考えないで取引を提案する人もいました。ここは証券会社の闇の部分といっていいでしょう。
■本当にあった違法手口
私が実際に見聞きした、証券会社のあくどい、それこそ犯罪に限りなく近い違法な手口を紹介しておきましょう。正真正銘、ここだけの話です。
私が社会人になりたての1992年にはすでになくなっていましたが、以前は「仕切り営業」と呼ばれる営業方法が存在していました。
支店長が朝方に株式部へ電話をし、例えば○自動車の株を10万株購入します。まだ顧客がついていない状態で、です。そしてその買い手が決まっていない10万株を、1人1万株ずつノルマとして営業員たちに課し、各自が抱える顧客へ売る方法が仕切り営業です。
これはまさしく違法行為。しかしまかり通っていた時代があったのだそうです。
もしこの○自動車が買った値段より上昇すれば、簡単に売ることができます。なぜなら「今7300円の値がついている○自動車ですが、うちなら7200円で買えますよ」というようなセールストークで販売ができるからです。逆に買った値段より下がっていたとしても、なんでも言うことを聞いてくれる顧客にお勧めし、買ってもらうようにします。
その日のうちにすべて販売しなければならないので、みんな必死になって営業していたのだとか。
さらにそのような切羽詰まったノルマが、いよいよ達成できない状況にまで追い込まれると、今度は「ダマ転」をする者も現れたそうです。ダマ転とはつまり黙って転売。顧客に黙ってこっそりと、顧客の保有している株式を売買する手口です。