「自分が頑張らなければ」…母との同居で追い詰められた息子
良一さん(仮名・52歳)は、75歳の母・春代さん(仮名)と実家で暮らしていました。父は10年前に亡くなり、春代さんの年金は月12万円ほど。
良一さんは会社員として働き、月収は約37万円ありました。独身で子どももいないため、親戚からは「お母さんのそばにいてあげられるのは安心だね」と言われることが多かったといいます。
同居そのものは、最初から苦痛だったわけではありません。春代さんは足腰が少し弱くなっていましたが、身の回りのことはまだ多くを自分でできました。良一さんも、買い物や通院の付き添い、重い荷物を運ぶ程度なら問題ないと考えていました。
しかし、年月とともに負担は増えていきます。仕事から帰ると夕食の準備、薬の確認、翌日のごみ出し。休日は買い出しや病院、家の片付けで終わりました。
春代さんに悪気はありませんが、良一さんが残業で遅くなると「何かあったらどうするの」と不安そうに言います。友人と会う予定を入れても、「今日は早く帰ってこられないの」と聞かれるたび、良一さんは予定を取りやめるようになりました。
厚生労働省『国民生活基礎調査』では、要介護者を主に同居家族が介護している割合は約54%で、そのうち介護者の約6割が60歳以上とされています。介護や見守りは、身体的な負担だけでなく、仕事や人間関係、自分の将来設計にも影響します。良一さんの場合、まだ本格的な介護ではないと思っていたため、外部サービスを使うことに抵抗がありました。
転機になったのは、良一さんが体調を崩した日のことでした。仕事の疲れが抜けず、発熱もあったため会社を休みましたが、その日は春代さんの通院日でした。
タクシーを使えば一人で行けるはずだと思っても、春代さんは「あなたが一緒じゃないと不安」と言います。良一さんは無理をして付き添いましたが、帰宅後、玄関で座り込んでしまいました。
「もう疲れたよ……」
その言葉が口をついて出た瞬間、良一さんは自分が限界に近いことを認めざるを得ませんでした。
