不動産投資とは違う「大家さん」=家主業
一般的によく目にするのは、投資用ワンルームマンションの広告だろう。そこには、「私的年金」などという表記を目にすることがある。毎月の家賃収入が、年金のように入ってくるからだ。マンション投資の場合、仮に1戸を購入すると、家賃収入は100%か0%しかないが、アパートやマンション1棟など集合住宅を所有すると、複数戸あるため、どの程度の入居率であれば採算がとれるのかが重要になってくる。10戸のアパートの場合、8戸入居者がいれば、入居率は8割、10戸入居者がいれば満室となる。
家主業としての収入(手取り)は、入居率に応じた家賃収入から借り入れの返済や管理費などの諸経費、税金を差し引いた金額だ。入居率が低いと収入を得られるどころかマイナスになる。時々勘違いする人がいるが、「家賃収入=手取り収入」ではない。
家主業では、どれだけの期間「満室」状態を維持できるかが重要になってくる。入居期間は一般的な契約では2年。2年経たないうちに退去するケースもあるが、1年未満で退去するケースは稀。満室になると、設備のトラブルなどがない限り、それほどやることはない。そのため、サラリーマンでも管理会社に委託していれば両立しやすい。
ただし、退去が決まり、新規で次の入居者を募集し、契約するまでの期間は最も忙しい。どれだけ忙しいかの詳細は後述するが、ざっと挙げると1カ月前に退去通知が届いたら、原状回復といわれる内装の張り替えやハウスクリーニングの見積もりを確認し、同時に管理会社と入居募集の諸条件の確認を行う。募集が始まると、管理会社から条件交渉の連絡が入って対応に追われる。近年は申し込みがあっても、キャンセルもあり、契約するまでは気が抜けないのだ。
入居者がなかなか決まらず、空室期間が長期化すると、家賃の見直しやリフォームを検討する必要が出てくる。家賃を値下げするか、リフォームをするか、他の募集条件も緩和するかなどを検討しなくてはいけない。どの手法をとるかは経営判断となる。
無事入居者が決まり、満室になっても家賃の滞納が発生すると厄介だ。滞納督促を管理会社または家賃債務保証会社に行ってもらい、それでも家賃が支払われない場合は、明け渡し訴訟の手続きを行う必要がある。手続きは管理会社や家賃債務保証会社に依頼できるが、滞納されている期間は家賃が入ってこないばかりか、入居者募集もかけられない。
かねて「不労所得」といわれてきた「家主業」だが、こうしたリスクも当然ある。それでも、一度満室になるとしばらくは海外旅行に1カ月行っても支障がない経営スタイルも確立可能。動く部分はすべてアウトソーシングでき、家主の仕事は判断することと決め込んでいる人もいる。
つまり、家主業は投資ではないが、事業としての意識を持って経営すれば、時間に縛られること もなく自由な時間を有効に使うことができるのだ。しかも、住宅はいつの時代も必要とされる。持ち家率が高くなってはいるが、マイホームを持てない人やあえて賃貸暮らしを選択する人は必ずいる。衣食住の生活基盤である住宅を担う事業だけに、他の事業と比べてもやりやすさはあるだろう。
私がこれまで取材してきた家主たちの中には、サラリーマン時代からコツコツとお金を貯めて不動産を取得し、地道な経営により所有戸数を増やして、見事定年前にサラリーマンを卒業した人たちがかなりいる。定年前に退職して、老後も困らない資産をつかんだ人たちだ。こうした人たちを見ていると、やはり「家主業」は老後不安を解消できるほどの資産を増やせる方法だと思う。しかも、信頼できる管理会社とタッグを組めば、アウトソーシングできる部分が多い事業だけに、「生涯現役」で続けられ、収入も得られるというわけだ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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