本記事では、収益物件の売買や仲介事業を展開する株式会社BRAVEの代表取締役・山部和孝氏が、同業だからこそ見えてくる不動産投資の実態について、投資家から寄せられた意見を取り上げながら解説していく。 ※本連載は、『投資会社トップが激白!業者が「投資家を騙す」30のワード 不動産業者のハナシは信用するな』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋・編集したものです。

「億単位の売買したけど記憶喪失」そんなはずある?

【Case:何百と物件を扱うと、億単位の買い物でも記憶を失う?】

某不動産業者に過去の実績を聞いたら、「何百もの物件を扱って(売買や仲介して)きたから記憶が定かでない」と前置きをしてから、「銀座の方にあるビルが」「ナンバ近くのマンションが」と話しはじめた。素人の感覚からすると、何億円もの買い物をした記憶を喪失することはあり得ないと思うのだが、業者ともなるとそうなるものなのか?

 

 

実績を聞いて明確に答えられない業者は、

①実際は自分が加わって売買していないもしくは「アンコ」

②何百、何千とやっていて本当に記憶できない

のどちらかだ。

 

※アンコとは売主側、買主側の仲介でない情報伝達だけで手数料をもらう業者のこと。またの名を「ハシリ」という。語源は不明だが、たぶん情報元を駆けずり回る姿からハシリと言われたとも。基本的にハシリは情報の中身を正確に把握しておらず、値段・利回りなどの表面的な情報しか知らない。

 

②はよほど記憶力がないと思うのだが、そもそもそんな人間に不動産業ができるわけもないので、ほぼあり得ない話。だが、①はたくさんいる。噓をついてまで自慢したいと思う神経は、俺にはまったくわからないが。

 

もちろん、細かな数字を度忘れすることはあるだろうが、過去の資料をひもとけばすぐにわかることだろう。ちなみに俺は、今から10年前の仕事をしっかり記憶している。大まかな日付も、売主も買主も物件名も、利回りも、融資額も、調達金利や融資条件も、そして当時の担当者も。質問者が指摘する通り、いくら数が多いといっても何億円という高い買い物だから、そう易々と忘れるようなものではない。どうしようもなく記憶力がなくても、直近の2、3年なら絶対覚えているはずだ。それが言えないなら、噓をついているか、誰か別の人間がやったとしか思えない。

 

本当に信用できる業者かどうかは、こうした過去の実績を根拠をもって明示できるかどうかもポイントだ。

 

もしも売買や仲介をやっていて、隠しごとをするようなことがあれば、それは「やましい」ことがあるからだ。知られたら不都合が生じるからだろう。そんな相手を信用できるのか、と逆に聞きたいものだ。

 

だから顧客である投資家の側も、遠慮せず、業者にツッコんだ質問をすればいい。業者の機嫌などとらなくていい。納得(根拠があり)するまで答えてくれる業者を見つけ出し、つき合いをしていけば、おのずと不動産投資は成功する。

 

もう少し付言すると、情報と同じで、関係者を惜しげなく紹介できるかどうかもポイントだ。当たり前の話だが、真正直に紹介して、自分の仕事や利益が減ることもあり得る。それでも教えるということは、よほど自分との関係性に自信があるということの裏返しだ。もう少し詳しく言うと、その自信とは、相手に競り勝つというよりは、相手とは別の儲け方を知っている、独自の手法や情報源を持っているということだろう。そんな業者ともし出会うことができたなら、絶対についていった方がいい。

突然のメールに唖然「郊外マンションご希望ですよね」

【Case:「お客様ならこれくらい」と物件を提示?】

何度か問い合わせをした某不動産業者から突然メールがあった。「お客様のご希望条件にマッチする物件」と複数の物件情報が送られてきたのだ。ちなみに内容は中古の区分マンションや郊外マンションの1棟など様々で、売価は1,000万〜5,000万円台。だが、そもそも希望条件を話した記憶はない。業者は「たくさんのお客様と関わってきたから、感覚的にわかる」と言うが、これは親切なのか。

 

急に来た
急に来た

 

 

お客側が希望条件すら出していないのに、何を持って最適な情報なのかまったく理解できない。買わせたいのは、中古の区分マンションなのか、はたまた郊外のマンション1棟なのか。どうせ、そんな業者は「何を買う客かよくわからないから、とりあえず送ったら興味を持つかも」と無差別に情報を送っていて、当たればラッキーくらいの感覚なのだと思う。

 

よほどの資産家や現預金を持っている投資家でない限り、不動産投資は融資を受ける前提で買うことになる。その物件は、1,000円の洋菓子と100円の駄菓子10個を比べるという話ではなく、融資はほぼ1回勝負。それでうまくいってから追加また新規の融資となる。

 

それなのに業者が勝手に判断して情報を流すことは、親切どころか、大きなお世話、お節介でしかない。メールを読む時間を割かなければならないだけ迷惑だ。

 

そもそも、お客の好みや資産背景、家族の意向を知らずしてどうして物件紹介をするのか理解に苦しむ。まぁ大手仲介はじめ中小零細もただひたすら情報を送り続けお客が引っかかるのを待っている(投資物件に限る)のだろう。

「いまのうちにビル買っとけ」一理ある気もするけど…

【Case:買うならビル1棟まるごと?】

地方で会社を起業して、ようやく利益が出はじめたので大阪市内にオフィスを借りようと考えている。全国展開している某不動産業者に相談すると「大阪を拠点とするなら、いまのうちにビル1棟をまるごと購入した方がいい」と物件を紹介されたが、正直キャッシュフローが心配なところ。それでも会社として投資をするべきか。

 

 

会社の規模や成長度合いを判別する場合、一般的には売上や利益を見る。だが、投資をするかどうかを考えるなら、キャッシュフローについても見ておくべきだろう。なぜなら、会社の事業は水ものだからだ。

 

経営というものは、時代や流行、景気によって事業を拡大あるいは縮小、新規事業や新商品開発をしながら舵取りをしていくもの。場合によっては、事業所の移転や統合だってあり得る。また、会社の核となる事業が不振に陥った場合には、事業継続のための融資を受けることも想定しておかなければならない。そうした変化を吸収できるだけの資金があるならばビルを丸ごと1棟まるごと買っても問題ないのだが、そうでないとすれば無理は禁物だ。

 

とはいえ、ビルを所有するということはメリットも大きい。一つは資産があるという信用だ。また、実質的にも賃貸より自由度が増す。活用すればいい。

 

あくまで個人的な見解だが、購入の目安としては「毎年1,000万円以上の利益が出ている」というところだろう。それくらいあると、1億円のビルを買っても10年で返済できる。

 

自社ビルとなれば、毎月の賃料もかからないし、事業規模の拡大にあわせて自由にスペースを設定できる。逆に事業縮小となれば、社内のスペースを縮小してテナント貸しをすることもできるだろう。また、借入が減っているので売却して現金化して事業の再投資に回すことも可能だ。

 

まぁ他人に家賃を払って儲けさせるのか、自分でローンを組んで万一のときの資産にするのかは経営者の判断になる。ナンボ儲けても納税は避けられない。だったら自社のために節税し資産形成するのは、経営者として当たり前だ。

 

ただ、ビル1棟買いというのも、土地建物の完全な所有権が望ましい。土地があれば、建て替えも用途変更も自由だが、建物だけの所有(区分所有)であればそうはいかない。そうなると、なかなか自分が希望する物件に出会うことは少ないかもしれない。だが、ゼロではない。いつかその情報を回してもらえるように、法人・個人にかかわらず優良な業者とつながっておくといいだろう。すべては日々の交流と情報収集、買いたいという意思を常に発信することが大切だ。

 

 

株式会社BRAVE 代表取締役

山部 和孝

 

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