本記事では、収益物件の売買や仲介事業を展開する株式会社BRAVEの代表取締役・山部和孝氏が、同業だからこそ見えてくる不動産投資の実態について、投資家から寄せられた意見を取り上げながら解説していく。 ※本連載は、『投資会社トップが激白!業者が「投資家を騙す」30のワード 不動産業者のハナシは信用するな』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋・編集したものです。

焦った挙句騙されて、キャッシュアウトの地獄絵図

【Case】不動産業者から「築20年で少し古いが、RC造で空室率も低く、利回りも10%以上の物件がある。積算価格も高いので銀行融資もクリアできると思うが、買わないか」と話を持ちかけられた。確かに銀行は融資審査で積算価格を参考にすると聞いたことがあるのだが、古くても買うべきか。

 

 

少し前の実用書には、こんなことがよく書かれてきた。「大家さんになれる」と言っては、ボロボロのアパートを紹介する、借り手を見つけるのに苦労しそうな地方の物件を紹介する業者が宣伝をしていた。よく平然とお客さんを騙せるものだな、とある意味感心して見ていたが、まあ信用できない業者と、それに騙されるお客の多さには驚く。

 

騙される原因の多くは、「焦り」だ。物件の詳細情報を見ても、それが儲かる物件だという判断をする自信もない。そこにつけこんで、業者は物件を買わせようとひたすら提案を出す。そのうちに感覚がマヒして、「この前と比べたら好条件な気がする」という、よくわからない納得感を持って買ってしまう。この場合も、「融資を受けられるんだったら、買おう」となってしまうのだろう。

 

また当たり前の話だが、投資は少ない金を投じて儲ける「ゲーム」のことだ。不動産投資の場合、うまくいけばレバレッジが効いて儲けが大きくなる。加えて、家賃というインカムゲインを手にすることができるという点も、安心材料になるのかもしれない。

 

さて、そもそも銀行は、積算価格で融資を判断するものなのか。たまに実用書やWeb記事で「不動産融資は積算価格で判断する」と書いてあるが、それがすべてではない。建物が劣化することも、積算価格で物件が売れるということはないということも、銀行はよくわかっている。

 

また地方(人口20万人以下くらい)では土地が路線価よりも高く売れるということは少ない。だから銀行評価は積算金額の6~7割で見ることになる。そうなれば、自己資金を投じなければ物件は買えないし、その分を取り戻しながら儲けるとなると、初心者ではおよそできない領域だといえるだろう。

 

また、インカムゲインである家賃については、借主がいる手前、勝手に家賃を上げるということは難しい。そうなると、いかに経費を抑えるかが利益を出すポイントになる。その点で、築年数が古ければ、その分だけ修繕費がかさむと考えるのが自然だ。その上で、法定耐用年数が融資期間の上限(金融庁の目安)になってくるから、その中でどれだけキャッシュが回るかが肝だ。都市部、また近郊で利回りが15%を超えてくる物件なら合うだろうが、そうでなければ買うという選択肢はない。

 

だってよく考えてほしい、築20年=残法定耐用年数27年だ。築20年で大規模修繕が未実施なら即NG。購入後たちまち大規模修繕が到来する。キャッシュを貯めるはずが支出超過でキャッシュアウトする。何とか乗り切っても次は設備の劣化から大量交換が待っている……儲かるはずが、キャッシュアウトの地獄絵図だ。

 

躯体は丈夫でも設備は年々高機能になり技術は進んでいく、20年前はインターネットは「オタクの遊び場」だったが今はどうだ? 立派な社会インフラになった。時代は変わるものだ。変わらないのは物理的な「モノ」は劣化する事だ。

 

そして、結論。まず人がいなければ投資は成り立たない。少しばかり人口の流入で人が増えている、観光地として訪日外国人が増えているといっても、日本は高齢化社会に突入しているから、自分が生まれ育った熟知した地域でない限り、不便で病院にも通えないようなところには住まない。だから素人は買わないのが正解。そして、先の通り融資を受けて転売しようが、インカムゲインを得ようが、儲けるのは基本的に至難の業だ。そうしたことも、業者は当たり前のように知っている。だから自ら聞き、学んでおきたいものだ。

 

騙される原因の多くは、「焦り」
騙される原因の多くは、「焦り」

「社歴の長さ、自慢です」何を根拠にそんなこと…

【Case】物件情報を求めて立ち寄った某不動産会社で、担当者が免許番号を指差しながら「社歴の長さが信頼の証」と自慢げに語ってきた。一般論として、どんな業界でも老舗と呼ばれることは信用の材料となっているが、不動産業界はどうか。

 

 

不動産業者の社歴を調べるには、ホームページなどで会社概要をチェックする以外に、「免許番号を確認する」という方法がある。

 

そもそも不動産業は許認可制で、営業エリアが1つの都道府県内なら知事、2つ以上なら国土交通大臣の名で番号入りの許可証が交付される。それを見える位置に掲示しているから、訪れた客は誰でも確認することが可能だ。

 

番号の中央には( )があり、その中の番号が5年ごとに増えていく(1996年以前は3年に一度更新)。例えば1なら5年以下、2なら6年以上10年以下といった具合だ。分社化して新規にできた会社も1にリセットされる。

 

次に不動産投資の歴史を見ていく。本当に古い時代まで遡れば戦前、明治、江戸となってしまうが、基本的には戦後に起きた経済成長と宅地化によってマンション物件が増えたことで、それを取り扱う不動産業者の数が増えた。また、それまではわずかな富裕層や大手企業だけが行っていた不動産投資も、少しずつ個人投資家が現れ、増えていく。80年代後半にはバブル景気が後押しして、投資用にワンルームマンションを購入するということも増えていった。

 

その後は国内景気の悪化もあって、不動産投資はしばらく沈静化。2000年代に入ってようやく、わずかながら景気の高揚感が出てくるようになると、投資家も業者の数も再び増えていった。また、法改正によって中間省略登記ができるようになり、業者は利幅を増やすことができた。

 

これは一時、法律を元に戻す動きもあったが、実際の運用で問題が生じていたこともあって、再び認めるようになった経緯もある。いずれにしても、利幅が増えれば、それをビジネスの好機と捉えて参入する業者も増える。

 

話を元に戻せば、たとえ社歴が長くても、売買をせず、仲介や管理をメインにやってきた業者もいるだろう。内容はどうかわからないにしても、社歴が短くても大きく売上また利益を獲得している業者もいる。信用を判断するポイントはいくつかあるだろうが社歴、業績とも参考程度にしか信用の材料にはならない。

 

言えることは、先の社歴や業績、また会社の規模がどうであっても、継続的に物件を売買、仲介している業者はある程度信用できるといえる。売買や仲介を続けられるということは、毎年のように一定の利益を出せているからだ。また、おそらく独自の情報収集ルート、人脈があるから、儲けを確保できると想像もできる。そうした業者ほど、インターネットなどで派手な広告宣伝はしていない。得体の知れないセミナーや説明会も開かない。ただ淡々と業務を遂行しているのみだ。

 

もし投資家で、そんな業者と出会うことができたなら話を聞いてみるべきだろう。そして先の質問を投げかけて真偽を確かめるといい。

 

もう一点付言しておきたい。バブル景気が最高潮期を迎え、株価が3万8,000円に達した1990年に、路線価も「二度とここまで上がることはない」と言われ続けてきた。それが28年を経た2018年に、その価格を超えてきたのだ。そう考えると、昔から物件を所有しているプレーヤーの資産力は強い。そして現時点で不動産を所有している投資家も、下手を打たなければ自然に儲けが出る。

 

 

株式会社BRAVE 代表取締役

山部 和孝

 

不動産業者のハナシは信用するな

不動産業者のハナシは信用するな

山部 和孝

クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

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