新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

リスク管理が甘かった中堅サラリーマン

いっぽうの投資家側だ。

 

こうしたケースをメディアでは、投資家の人たちを「騙された、いたいけな人たち」といった視点で報道するが、どんなものだろうか。なんのリテラシーもない高齢者や判断能力のない人たちが被害に遭うことはともかくとして、今回の被害者の多くが中堅以上のサラリーマンだという。これだけネットをはじめさまざまな情報を得る手段がある現代で、「利回り8%、30年保証」といった宣伝文句を鵜吞みにして、さして考えもせずに投資金額の全額を銀行で借りてしまうなどという行動を起こしてしまうことは、あまりに人生におけるリスク管理ができていないのではないだろうか。

 

賃料の保証がどこまでの保証であるのか、スマートデイズが本当に30年も保証できるほどの体力のある会社なのか、サブリース事業でこれまでどんな問題や争い事があったのか、少しの時間を使えば調べる方法はいくらでもあったはずである。それどころか、自分の給与収入を「何も苦労せずに」増やそうという「甘ったれた」考えゆえに、立ち直れないほどの大火傷を負ってしまったと思えなくもない。

 

少なくとも投資する物件がある周辺のアパートやマンションの相場、周辺土地の値段については、公示地価や基準地価格をネットで誰でも自由に検索できる。建築費だってオフィスやマンション、アパート等の建築相場を調べる手法などいくらでもある。

 

どちらにも言えるのが、事業に対するリスクの考えが、あまりにいい加減であることだ。バブル崩壊後の1994年にリリースされたウルフルズのヒットソングに「借金大王」という曲がある。その中の歌詞「貸した金返せよ!貸した金返せよ!」のリフレインが今、両者の耳にこだましていることだろう。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

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