アメリカ不動産取引における仲介業者
日本では、不動産取引の際に、一つの不動産会社が売主と買主の間に入って、両者から手数料をもらいながら、売買をまとめあげることが普通です。
しかし、考えてみるとこれはおかしな話で、売主は「なるべく高く売りたい」と思っていますし、買主は「なるべく安く買いたい」と思っています。では「間に立つ業者は、どちらの立場に立つのか」という疑問がわいてきます。
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アメリカではこのような方法は一般的ではなく、売主は売主のエージェント(業者)、買主は買主のエージェントをそれぞれ別に雇い、エージェント同士が互いの依頼主の利益を最大化するために交渉します。
ここが、アメリカの不動産市場の透明性が高いと言われる理由の一つでしょう。他の理由としては、一般の人でも不動産情報にアクセスできる「Zillow」などのWebサイトが充実していることが挙げられます。(関連記事:アメリカで「掘り出し物の不動産」を見つける方法とは?)
そして、エージェント費用は、売主エージェントの分はもちろん、買主エージェントの分も、売主が負担するのが一般的です。金額は合計6%程度です。
買主にメリットがありますが、その代わり買主は、後に述べるインスペクションやタイトル調査といった部分の費用を負担しなければなりません。
オンマーケットでの不動産購入の一般的なプロセス
アメリカでの不動産取引の大多数を占める、オンマーケット(市場に公開されている物件)での不動産購入の一般的なプロセスは、次のようになります。
【不動産購入の一般的なプロセス】
①情報収集、物件選定
②オファー(購入申し込み)・条件交渉
③売買合意
④エスクローのオープン
⑤インスペクション、タイトル調査
⑥価格再交渉
⑦決済、物件引渡し⑧修繕、リノベーション(必要に応じて)
まず、情報収集は、MLS(Multiple Listing Servise:登録不動産業者しか情報登録・閲覧できない不動産情報データベースがあり、地域ごとの不動産売買情報は、基本的にここで公開されている)が基本です。
毎朝、MLSにアクセスし、その日の新着情報をすべてチェックします。新着情報だけでなく、掲載期間の長い物件や、現在交渉中でまだまとまっていない物件もチェックします。場合によってはこれらの物件にオファーを入れることもあります。
また、MLS以外に、他の不動産業者などからの持ち込まれる案件もありますので、それもチェックします。
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アメリカの不動産取引では「交渉力」が重要に
最初の段階で、ある程度機械的にスクリーニングをしていき、全エリアで1日に60~120件程度の候補が残ります。次に候補に残った物件を細かく精査していくと、30~40%くらいがオファーを入れられる可能性のある物件になります。
ここからさらに、実際にオファーを入れる物件を絞り込みます。
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オンマーケットでの売り出し物件には、通常数日~1週間程度のオファー期間を設けるケースが多くありますが、それらの期間を待たずして、独占交渉する交渉力も仕入れにおいては重要です。
オファーとは、オークションへの入札のようなもので、買主が希望の購入価格や条件を売主に伝えます。売主は、複数のオファーがあった場合、もっとも条件がよいオファーを出した買主と交渉を進めることができます。
このあたりの仕組みも、つねに1対1の相対で交渉をする日本の不動産取引とは異なります。
出口が描きやすい物件を探すには?
多くの候補物件の中から、オファーを入れる物件を絞るポイントは「自分なら買うか」という点です。
自分が投資家だったとして、投資物件としてこの物件を買いたいだろうか、という感覚を大切にしています。さらに、自分が投資家だった場合に買うか、買わないかを判断する最重要要素は、「出口」の可能性です。
つまり、購入してから6~7年後、あるいはもっと長期間保有するかもしれませんが、とにかく「一定期間後に、現地のアメリカ人に売れるのか」という視点です。
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保有期間中にどれくらい減価償却メリットがあるか、どれくらいインカムゲインが得られるか、これらももちろん重要です。しかし、出口で売れなければ、それらのメリットも水泡に帰すと言っても過言ではないでしょう。
投資家の立場で考えれば、投資用物件の販売の際も「売っておしまい」だとはとうてい考えられません。ある意味で、売ってからがスタートです。数年後の出口を経て、最大の利益を得た後で、完結すると思っています。自分が投資家であれば、当然でしょう。そのため、出口をことさら重視します。
では、出口が描きやすい物件を探すにはどうしたら良いのでしょうか。
それは「アメリカ人の目で見ること」に尽きます。日本人の投資家が自分でアメリカの投資用物件を探そうとする場合に、おそらくもっとも困難となる部分であり、だからこそ、私たちの存在価値があるのだと考えています。
「日本人目線」では豪華な印象の邸宅でも…
たとえば「4LDK、建物面積180m²、リビング25畳、バスルーム1つ」の物件があったとします。これだけで見れば、日本人目線では、まったく問題なさそうです。むしろ、豪華な邸宅の印象ではないでしょうか。
しかし、アメリカでこの物件を喜んで購入する人は、まずいないと思われます。
その理由は、「バスルームが1つ」ということです。アメリカのファミリー向け住宅では、マスターベッドルームという大きな部屋に直通の夫婦専用バスルームがあり、その他に、家族用として少なくとも、もう1つのバスルームがあるのが当たり前です。
アメリカ人にとっては「マスターバスルームがない物件」は、日本人にとって「お風呂がない戸建住宅」と同じくらい扱いづらい物件なのです。当然、出口はかなり厳しくなるでしょう。
あるいは、日本では当たり前に取引されているマンションやアパートのひと部屋単位の販売も、アメリカでは相当立地が良くない限り(ハワイのワイキキ、ロサンゼルスの中心部など、例外的なエリア)流通性は非常に低くなります。
日本人の感覚で、アメリカでコンドミニアムを購入したものの、いざ売却しようにも売るに売れないというのは、珍しい話ではないのです。
日本にはない、現地の常識が存在する
極端な例を出しましたが、他にも日本にはない現地の常識が存在します。異なる文化、異なる生活習慣の国なのですから、好まれる住宅、売れやすい住宅が違うのは当たり前です。したがって、アメリカで出口を描きやすい、つまりアメリカ人が欲しくなるような物件を仕入れるためには、アメリカ人の目を持つこと、これが物件の仕入れにおいてもっとも大切なことだと私は考えています。
それをより具体的な選定プロセスに落とし込むと、物件の間取り、外観の雰囲気、コンディション、エリアの特性、価格など、多くの要因に分解できます。オファーを入れる段階で、それらを一つひとつチェックしていきます。
また、物件の状態や修繕箇所・コストに関しても見積り取得を行います。オフマーケットの物件等の場合は、必要に応じて、近所の人への聞き込み調査を行うケースもあります。
こうして、データ上で分かる情報に加えて、実際の物件の状態、立地エリアを目で見て確認した情報を総合して、オファーを入れるかどうかを判断します。
豊岡 昴平
株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部