アメリカ不動産購入において、有利に取引を進めるためには、習慣や法律、商慣習を学ぶ必要があります。日本とは異なる不動産購入の仕組みと流れを知り、よりよい「出口」を描いてゆきましょう。今回は、株式会社オープンハウスのウェルス・マネジメント事業部・高山吏司氏、ブロドスキ・ザクリ氏、豊岡昴平氏の共書『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』より一部を抜粋し、オンマーケット(市場に公開されている物件)での不動産購入プロセスについて解説します。※アメリカ不動産投資 詳しくはコチラ

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売主と買主の中間に立つ、「メルカリ」と同様の機関

アメリカでの不動産取引の大多数を占める、オンマーケット(市場に公開されている物件)での不動産購入の一般的なプロセスは、次のようになります。

 

【不動産購入の一般的なプロセス】

 

① 情報収集、物件選定

② オファー(購入申し込み)・条件交渉

③ 売買合意

④ エスクローのオープン

⑤ インスペクション、タイトル調査

⑥ 価格再交渉

⑦ 決済、物件引渡し

⑧ 修繕、リノベーション(必要に応じて)

 

物件を選定し、買主が提示したオファーの条件に売り主が同意したら、次はエスクローを開設します。エスクローとは、不動産取引に限らず売買の間に立って取引の安全を確保する専門の第三者機関で、アメリカでは広く用いられます。

 

日本で身近な例では「メルカリ」があります。

 

メルカリでは、なにか買ったとき、購入者はすぐにメルカリに対してお金を支払い、お金はメルカリがいったん預かります。そして、品物が購入者の手に届いて、問題ないと分かった段階で購入者がそれをメルカリに報告します。その後にメルカリから売主にお金が支払われます。

 

もし、品物に問題があった場合は、売主にお金は支払われず、返品となり、購入者にスムーズにお金が戻ります。この仕組みがあることで、売る方も買う方も、安心してメルカリで取引ができるのです。

 

このように売主と買主の中間に立って取引の安全性を担保するサービス、または機関のことを、エスクローと言います。アメリカの不動産取引におけるエスクローは、・手付金や売買代金などの預かり、保管、支払い・タイトルレポート(後で説明します)の入手、チェック・抵当権等の解除・登記申請、その他法的手続といったことを行います。

 

このように、エスクローが金銭管理や、法的手続、証書の管理などをしてくれることによって、売主買主双方が安心して取引できるのです。

 

「エスクロー」のおかげで、安全に取引ができる
「エスクロー」のおかげで、安心して取引ができる

買主が専門機関に依頼して「物件に関する調査」を行う

エスクローが開かれた段階で、買主は手付金をエスクロー口座に入金します。手付金の額は、物件によりますが、おおむね5000ドル程度です(これは、もし、この後契約をキャンセルすれば戻ってきます)。

 

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そして、買主は専門の第三者機関に依頼して、インスペクション(物件調査)を行います。

 

インスペクションとは、専門の調査機関が、物件に問題がないかを調査することで、基礎はもちろん、屋根、配管、エアコン、外壁、電気系統などを中心に建物全体が徹底的に調査されます。その結果は、インスペクションレポートという書類にまとめられます。

 

インスペクションレポートでは、ここに問題点があると指摘されることもあれば、より専門性の高い調査が必要と指摘がなされる場合もあります。その場合は、再度、たとえば屋根なら屋根の専門家に再調査を依頼する場合もあります。

 

また、インスペクションと並行して、タイトルカンパニー(タイトル保険会社)または弁護士(州によって異なる)に、「タイトル調査」を依頼します。タイトルとは、その物件に関連する所有権、抵当権、借地権など、権利関係の情報のことです。

 

タイトルカンパニーは過去にわたるタイトル情報を保管しており、それを調査してタイトルレポートとしてまとめて報告してくれます。もし、そのレポートに掲載されていない権利関係があり、それによって買主に不利益が生じた場合は、タイトル保険に加入しておけば、タイトルカンパニーがそれを補償してくれます。ここでも、安心して購入できる制度が確立されているのです。

 

これらのインスペクションレポート、タイトルレポートに関する費用はだいたい購入価格の1%程度で、買主の負担になります。

売り主も「物件の報告書」提出し、最終的な売買契約へ

一方、売主の方では、この間に「セラーズ・ディスクロージャー・ノーティス」と呼ばれる報告書を作成、提出します(該当しないケースもあります)。これは、例えば、過去にどんな修繕をしたとか、住んでいてこういう問題があるとか、売主から見た建物状態を自己申告してもらうものです。

 

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これも契約書の一部になるので、もし、ウソを書いたら契約違反になります。

 

こういった、買主、売主の双方の調査や書類作成が済んでから、最終的な売買契約を結ぶわけですが、その前に再度価格交渉を行うことが普通です。インスペクション、またはタイトル調査で問題が見つかることもあります。その内容を踏まえ、解決できない場合であれば、当然そこで契約をキャンセルして、白紙に戻すケースもあります。

 

逆に、解決可能な問題の場合は、それらの材料を武器にさらなる価格交渉へと進むのです。

 

たとえばエアコンの修理の必要性が指摘されるといった程度のことはよくあります。その場合は、インスペクションでの指摘があり、修繕の必要があるから、価格を下げて欲しいと交渉します。

 

最終交渉がまとまれば、代金を決済して物件の引渡しを受け、エスクローを閉じます。

アメリカ不動産取引では、売主の瑕疵担保責任がない

ここまで読まれて、「インスペクションに、タイトル調査、ずいぶん買主はやることが多いな」と感じられた方がいらっしゃるかもしれません。実は日本と比べて、アメリカでは契約における買主の責任が、かなり重くなっています。

 

契約至上主義であるアメリカでは、契約書という、形に残るものを介してのやりとりが非常に重視されています。そして、その契約の関係においては、売主も買主も立場が対等で、それぞれの自己責任が問われます。そのために、買主も自分の責任で物件を精査しなければならないのです。

 

その一つの表れが、アメリカの不動産取引では、原則として売主に瑕疵担保責任が問われないということです。

 

現時点の日本では、購入した不動産に重大な瑕疵があった場合、売主は故意、過失にかかわらず瑕疵担保責任が問われ、買主は原則として、売主に損害賠償、または契約の解除を請求できます。

 

しかし、アメリカの不動産取引においては、原則として瑕疵担保責任の考え方がなく、瑕疵の有無は買主がすべてチェックしておくべきだという考え方です。そのために、買主が自分の費用でインスペクションやタイトル調査を実施するのです。

 

売買契約後は、必要なリノベーションを行います。

 

 

 

豊岡 昴平
株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部

本連載は、2019年3月13日刊行の書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

高山 吏司
ブロドスキ・ザクリ
豊岡 昂平

幻冬舎メディアコンサルティング

2年間で約700棟の物件を仲介する今もっとも注目の最強集団が 本邦初公開の知識を惜しげもなく明かす! アメリカ不動産投資の知名度は、以前と比べれば上がっているとは言え、やはり「投資目的で、海外の不動産を購入する」…

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