あなたの生命保険は本当に大丈夫ですか? 加入の仕方により将来かかる税金の種類や税額が異なるという事実は、意外と知られていません。自分の身になにが起きても家族が困らないように…と備えたつもりでも、想定外の課税や相続税の申告漏れという事態を招くかもしれません。本記事は、『[改訂二版]相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

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被相続人が支払っていた場合、保険金は被相続人の財産

保険については、死亡保険金そのものが、相続税の申告から漏れるということはあまりありません。なぜなら、被相続人にかけられていた生命保険の存在を相続人が知れば、死亡保険金の支払いの請求手続きを行うでしょうし、実際に保険金を受け取っていれば、それを忘れるとか漏らすということは少ないと思われるからです。また、保険会社からも保険金の支払いに関する通知書が必ず発行されますので、注意をしていれば気がつくはずです。

 

ただ、生命保険について税務調査でよく問題視されるのは、被相続人が家族にかけていた保険です。

 

ここで、生命保険に関する考え方を整理しておきましょう。相続税法では、生命保険に関して、契約者と保険料負担者が存在することを前提としており、その保険料負担者を保険契約上の実質的な財産の保有者と考えています。

 

そのうえで、保険料の負担時に課税するのではなく、保険事故が発生した場合や保険料負担者が死亡した場合に、課税することとしています。

 

たとえ、生命保険の契約者が妻や子どもであっても、保険料の支払いを被相続人が行っていれば、それは被相続人がこの保険契約の実質的保有者ととらえ、被相続人の財産と認識しなければなりません。

 

つまり、生命保険に関しても名義だけで判断するのではなく、保険料負担者がだれだったかが重要だということです。ですから、納税対策などで、生命保険を活用している場合は、契約者や保険料負担者などをここでもう一度確認しておくようにしましょう。

 

相続の相談に来られるお客さまに「あなたの生命保険は大丈夫ですか?」と尋ねると、多くの人が「長くかけているから大丈夫。いざというときの備えは万全です」という答えが返ってきます。

 

そこで「どんな種類の保険に入っているのですか? それぞれの保険の保険料の負担者、被保険者、保険金の受取人は? この組み合わせによって、税金の種類が違ったり、同じ保険金でも税額が違ったりすることをご存じですか?」とさらなる質問を重ねると、ほとんどの人が「いや、それは…」と口ごもります。

 

先にも述べたように、生命保険は入り方や、保険料の支払い方によって、保険金や保険契約に対する税の種類が異なり税務調査で指摘されるポイントとなります。同時に税金の面で有利になったり不利になったりもしますので、必ず確認しておいてください。その確認するポイントは次の3つです。

 

①保険料はだれが負担しているのか

②被保険者はだれなのか

③保険金の受取人はだれなのか

 

生命保険を上手に活用しているつもりでも、実は…
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加入条件・支払い方により、税金の種類や課税額が変化

生命保険は、「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせ次第で、保険金にかかる税金が異なります。ではここで、Aさんという60代の男性と、妻、子ども2人、合計4人で構成される家族が加入していた保険を例に見ながら、ご説明していきましょう。

 

1. 10年満期の一時払い養老保険

 

Aさんは70歳になったときに満期金が受け取れる、10年満期の一時払い養老保険に入っています。保険金額は500万円。保険料は自分で払い、満期金の受取人も自分です。

 

この場合「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「Aさん・Aさん・Aさん」です。

 

保険金の受取人自身が保険料を負担していますので、この場合は、満期保険金は一時所得となり、所得税・住民税の課税対象になります。総合課税となる一時所得の課税対象額は、

 

(保険金―払込保険料総額―特別控除額50万円)×1/2=課税対象額

 

という計算式で計算されます。つまり、実質的な利益から50万円の特別控除があり、さらに2分の1の金額が税金対象ということです。非常に優遇されています。

 

2. 定期保険特約付き終身保険(終身保険500万円、定期保険特約2,500万円)

 

●Aさんが保険料負担者・被保険者、保険金受取人が妻だった場合

 

Aさんは初めての子どもが誕生した30歳のとき、Aさんにもしものことがあっても家族が経済的に苦しい思いをしないですむよう、65歳までの定期保険特約付き終身保険に加入しました。保険料負担者と被保険者はAさん、保険金受取人は妻なので、「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「Aさん・Aさん・妻」になります。

 

もし65歳までの間にAさんに万一のことがあれば終身保険と定期保険特約を合わせて3,000万円、65歳過ぎに亡くなった場合は終身保険500万円の保険金が妻に支払われます。

 

このように、被保険者自身が、保険料を負担していて、その保険料負担者が死亡し、死亡保険金が支払われる場合には、相続税が課税されます。

 

保険金の受取人が相続人である場合には、「500万円×法定相続人数」で計算した金額が相続税法上非課税となり、相続税の計算に当たって受取保険金の総額から引くことができます。

 

Aさんの法定相続人は妻と子ども2人の合計3人なので、非課税金額は、「500万円×3人=1,500万円」となります。この非課税枠は有効に活用したいものです。

 

●保険料負担者がAさん、被保険者が妻、保険金受取人がAさんの場合

 

先ほどと同じ種類の保険で、今度はAさんが妻にかけていた場合を考えてみましょう。「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「Aさん・妻・Aさん」です。

 

妻が65歳までに万一のことがあると3,000万円の保険金が、65歳を過ぎても500万円の保険金がAさんに支払われます。これは、あくまでも妻にかけられた保険ですから、妻に保険事故が起きたときに保険金が支払われます。そのケースでは、受取人自身が保険料を負担しているので、Aさんが受け取る保険金は、一時所得となって所得税・住民税の対象となります。

 

では、妻に保険事故が起きる前に、Aさんの相続が発生したら、この保険はどのようになるでしょうか。繰り返しますが、妻にかけた保険ですから、Aさんが死亡しても保険事故は発生していないので、この保険金は支払われません。

 

しかし、前述のとおり、保険料負担者を保険契約上の実質的保有者ととらえるため、今までAさんがかけていた妻の保険契約(「生命保険契約に関する権利」)がAさんの財産となります。この場合の相続財産としての評価額は、「Aさんの死亡当日にこの生命保険を解約したらいくら戻ってくるか」、つまり、相続発生日におけるこの生命保険契約の解約返戻金相当額が相続財産としての価額になります。

 

この「生命保険契約に関する権利」は意外と申告漏れになりやすい財産ですので、申告の際は注意が必要です。家族を被保険者とした生命保険の保険料が、被相続人の預金通帳から毎月振り替えになっていないか、あるいは、家族を被保険者とした生命保険の保険料を、被相続人が過去に一時払いしていないか、保険証券と突き合わせながら一つひとつ確認することが申告漏れを防ぐ方法になります。

 

●保険料負担者がAさん、被保険者が妻、保険金受取人が子ども2人の場合

 

では同じくAさんが妻にかけていた保険の保険金を子どもが受け取る場合にはどうなるかを考えてみましょう。つまり、保険料負担者がAさん、被保険者が妻、受取人が子ども2人となりますので、「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「Aさん・妻・子ども」です。このように保険料負担者・被保険者・保険金受取人がそれぞれ異なっている場合のその保険金には、贈与税がかかります。

 

仮に妻に保険事故が発生して保険金が子ども2人に1,500万円ずつ合計3,000万円支払われた場合には、受け取る子どもには1人あたり450万5,000円(子どもが20歳以上の場合は366万円)の贈与税がかかってきます。

 

高額な生命保険に入り「なにかあっても保険金がたくさん下りるから大丈夫」と思っていても、入り方を間違えると、多額の税金がかかってしまいますので注意が必要です。

 

では、妻に保険事故が起きる前に、Aさんに相続が発生したら、この保険はどうなるか、これは先ほど述べた通りです。Aさんが妻にかけていた「生命保険契約に関する権利」がAさんの相続財産となりますので、申告漏れとならないよう、注意が必要です。

 

 

服部 誠
税理士法人レガート 代表社員/税理士

 

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服部 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

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