税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
妻への愛情「保険金1,000万円」が贈与税の対象に…
生命保険は、「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」をどう組み合わせたかにより、相続の際、保険金にかかる税金が異なります(前回の記事『60代男性・妻・子ども2人「生命保険で税務調査」の落とし穴』にて詳述)。
筆者の元にも、「自分たちの保険の入り方は大丈夫でしょうか?」というご相談にみえるお客さまがいます。先日来られた方は、お付き合いのある銀行の人から「もしかしたら、この保険は贈与税がかかるのでは? 一度、見直したほうがいいですよ」といわれたというご夫婦でした。
保険契約者・被保険者・保険金受取人がすべて奥さまになっている10年確定年金(年金総額1,000万円)に加入しており、来年から年金支給が始まるというものでしたが、奥さまは専業主婦で収入がないため、保険料は全額ご主人が負担しているとのことでした。
このままですと、「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「夫・妻・妻」となります。保険料負担者がご主人なわけですから、この保険契約の実質的な保有者はご主人になります。この状態で年金支給が始まると、ご主人の保有財産を奥さまが受け取ることになり、ご主人から奥さまへ贈与があったものとみなされて贈与税が課税されてしまいます。仮に1,000万円が贈与対象となりますと、231万円の贈与税となります(実際には「定期金に関する評価」となり、受取年金総額よりは小さい金額になります)。
そこで、受取人をご主人に変更することを提案しました。そうすることで「保険料負担者・被保険者・保険金受取人」の組み合わせは「夫・妻・夫」となります。この場合、保険金の受取人自身が保険料を負担していますので、贈与税の問題は発生せず、受け取った年金にかかる税金はご主人に対する所得税・住民税となります。この場合には年金収入になるため雑所得となります。
なお、年金収入にかかわる雑所得の計算は、その年に受け取る年金額(1年分)から必要経費である保険料(総払込保険料の10分の1)を差し引いた金額となります。
ここで重要な点は、「だれが保険料を負担」し、「だれが受け取る」のかという点です。保険料の負担者と年金の受取人が同一であれば、所得税が課税され、異なれば、贈与税が課税されます。税制面を考えると、保険料の負担者と年金の受取人は、同一としておいたほうがいいでしょう。
契約権を引き継がせ、「二次相続時の納税資金」を確保
生命保険は二次相続の対策として活用することもできます。一家の主が亡くなり妻や子が財産を承継することを一次相続といい、次に妻が亡くなったときに子が承継することを二次相続といいます。
一次相続のときは、妻に関しては法定相続分と1億6,000万円のいずれか大きい金額まで税金はかかりません。これを配偶者の税額軽減の特例といいます。かなり大きな金額まで軽減(控除)が認められるため、この特例を活用する前提で考えると一次相続の税金は比較的少なくすることができますので、それほど心配する必要はないかもしれません。
問題は二次相続です。今度は遺産をもらえるのは子(すでに子が亡くなっている場合には孫)なので、配偶者の税額軽減の特例を使うことはできません。そのため相続税額が高額になり、納税するのに苦労することがしばしばあります。
そこでおすすめしたいのが、生命保険を利用して、納税資金を確保するというやり方です。では、その方法についてご説明しましょう。夫の生前であれば、夫が保険料負担者および受取人になり、妻に生命保険をかけておきます。夫が亡くなって相続が発生したときには、妻にかけた生命保険契約(生命保険契約に関する権利)が相続財産になり、その権利を子どもが相続します。
子どもがその権利を相続した時点で保険契約者と受取人を子どもに変更し、引き続き子どもが保険料を払い続けます。万一、保険料の支払いがむずかしいときには保険料の支払いをストップ(「払い済み」といいます)して、いままで払い込んだ保険料に見合う保険金を維持するようにします。
夫が健在なうちから、二次相続の納税資金を準備しておくことは、とても大切なことです。そして、二次相続の対策としても、生命保険は欠かせません。ですので、正しく有効に活用しましょう。
遺産に不動産が多い場合、「代償分割」で相続税を軽減
亡くなった人の妻にはごっそり保険金が下りたけれど、預貯金があまりなくて子どもたちが納税資金に苦労するということがたまにあります。そんなときに活用したいのが「代償分割」という方法です。
代償分割とは、現物分割が困難な場合に行われる方法で、分けにくい財産を特定の相続人がもらい、ほかの相続人には代わりにお金などを渡して精算するという遺産分割の方法です。
たとえば亡くなった人が都市近郊の便利な場所に複数の土地を持っていて、相続税の評価額が高額だったとしましょう。相続税は相続財産全体にかかってきますから、仮に妻が半分、子どもたちが半分という相続をした場合には、子どもたちは相当の相続税額を納付しなければなりません。しかも、相続税は現金で納めるのが原則となっていますので、遺産が不動産ばかりで預貯金が少ないと、子どもたちの納税資金が足りなくなるという事態が発生します。
こんなとき、妻に多額の保険金が支払われたら、不動産を妻が多めに相続して、その分を代償金として子どもたちに現金(保険金)を渡すようにします。母親から子どもに納税資金として現金(保険金)をそのまま渡してしまうと、子どもたちには贈与税がかかってしまいます。たとえば、母親から子どもに渡す金額が1人あたり1,000万円だと、贈与税の額は231万円(子どもが20歳以上だと177万円)、2,000万円の場合だと、695万円(同、585万5,000円)にも及びます。
一方、代償分割として、母親から現金をもらう場合には、子どもは代償金として相続財産に加算され、母親は代償金の額を相続財産から控除する形で、相続税が計算されます。したがって、代償金としての相続税の負担額と、母親から贈与された場合の贈与税の負担額を比較検討し、代償金のほうが有利であれば、二次相続の納税資金能です。この代償分割もぜひ、有効に活用してほしい方法の一つです。
いかがでしょうか? これらのことを踏まえて生命保険を見直し、正しい形で生命保険に加入しておけば、税務調査時におびえることもありませんし、何より、万一のときの心強い味方となることでしょう。ぜひご参考にしていただければと思います。
意外と知らない相続税対策「お墓や仏壇は生前に購入」
相続人の方が意外とご存じないのが、お墓のことです。相続税を計算する際に、被相続人の葬儀費用は、相続財産から引くことができますが、相続発生後のお墓の購入費用はそれができません。もちろん相続税は、税のプロである税理士が申告しますので、お墓の購入費用を葬式費用として、相続財産から差し引くということは間違ってもしません。つまり、相続財産から引くことができないということは、その分、税金を多く払わなければならないということです。
しかし、お墓の購入費用を相続財産から差し引く方法もあるのです。それは、生前にお墓を購入しておくという方法です。お墓の権利金や墓石などは意外に高額なものです。ちょっとしたお墓なら200万~300万円くらいはかかるでしょう。であるならば、被相続人が生前にお墓を購入して、相続財産を減らしておく(代金を支払って、現金を減らしておく)ほうが、賢い選択というものです。この考え方は仏壇にも当てはまります。お墓や仏壇そのものは形として残されても相続税は非課税となっています。
先祖代々のお墓が遠いところにあるなどの理由で、子どもたちがお参りしやすいもっと近くの場所で眠りたいという人は、生前に自分で用意しておくのもいいでしょうし、残された子どもたちに「お父さんのお墓、どうしよう!?」と困惑されるのを避ける意味でも、自分の死後をどうするか、生前から考えておきたいものです。
服部 誠
税理士法人レガート 代表社員/税理士
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