不動産という「相続時限爆弾」面識ゼロの親族と揉めることも…

本記事は、『[改訂二版]相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

「先代名義」のまま残っている土地や建物がマズい

バブル崩壊後、土地の価額が下がったとはいえ、不動産の相続財産に占める割合は4割近くになります。相続税の申告後、土地や建物などの不動産が税務調査において申告漏れと指摘されるケースはそれほどありません。これら不動産は、通常登記をしており、毎年固定資産税も納めていますので、ほとんどの方が財産として認識しています。

 

しかし、先代名義や先々代名義のまま残っている土地や建物、あるいは未登記の建物などは、うっかりすると申告漏れとなる危険性があります。

 

相続人が一度も会ったことのない親族との共有名義の土地があった、などという話も実務ではあります。このような不動産があることを事前に聞かされていないと、相続人としてはどうしようもありません。故意ではないにしても、結果的に申告漏れとなり修正申告という流れになってしまいます。

 

そのような面倒な事態に陥らないためにも、所有している不動産の棚卸しも、生前にしておきたいことの一つといえるでしょう。

 

自分自身が購入したり、親から相続した土地や建物については、きちんと認識できているので問題ありませんが、厄介なのが前述した共有名義の土地や未登記の建物がある場合です。

 

 

共有名義や未登記の物件であったとしても、毎年固定資産税の通知が届いていれば忘れることはないと思います。困るケースは、固定資産税の通知も届かない物件です。

 

よくあるケースは、複数の人の共有名義で、しかも遠方にある不動産です。共有名義の場合には、通常、登記簿の所有者欄の一番最初に記載された人か、持ち分の一番多い人に、「A様 その他●名」という形で、その代表者に固定資産税の通知書が送られてきます。つまり、共有者全員に通知が届くわけではないのです。

 

はたして、固定資産税の通知書も送られてこない土地の存在を、人は認識し続けていられるものでしょうか。まして相続税が発生するくらいの財産のある人だったらどうでしょうか。そう考えると、所有権があることを知らずに、うっかり申告漏れとなってしまうのも無理からぬ話なのかもしれません。

 

なお、最近では自治体(市区町村)によって、納税通知書は従来どおり代表者に送付することとし、すべての共有者にも税額、納期限、土地家屋の評価額などを確認してもらうための「共有物件課税通知書」を送付するところもあるようです。すべての自治体にこれを実行してもらえると、申告漏れが防げるかもしれません。

 

いずれにしても、自分がいま現在どんな不動産を所有しているか、先代から引き継いだものを含めて棚卸ししておくことをおすすめします。

 

共有名義の土地や未登記の建物…所有権を認識しにくい厄介な不動産
共有名義の土地や未登記の建物…所有権を把握しにくく、厄介な不動産

申告漏れにつながりやすい「借地権」付の建物

共有名義の土地以外にも、相続時や相続税の申告における不動産絡みの問題はいくつもあります。なかでも、申告漏れにつながりやすいのが、借地権の問題です。

 

共有名義の土地と同様、先代が亡くなったあと、きちんと手続きをしていなかったために、相続税の申告時に問題として浮上することがしばしばあります。

 

特に東京23区内には借地に家を建てている人が多いので、相続税の改正によって、課税対象となる人がたくさん生じています。

 

借地に家を建てて住んでいる人は、その土地の所有者はだれなのか、どれだけの土地をどういう条件で借りているのかをいま一度明確にしておきましょう。

 

可能であれば土地の登記簿謄本を取り寄せたり、賃貸借契約書を確認しておいたりすることもおすすめします。

 

古くから借りている土地だと、口約束だけで契約書がない場合もあります。そんなときは先方に借地の面積はどれだけあるのか確認し、地代の支払い証明書を発行してもらうのもよいでしょう。

 

相続税の申告時には、借地権も通常の土地と同様、財産として申告が必要です。適正な地積を適正な価額で申告しなければなりませんので、そのためにも正確な借地契約内容を知っておくことが不可欠です。

 

なお、親族から無償で借りている場合は、「賃貸借」ではなく「使用貸借」となります。このような場合は借地権としての価値はありませんので、相続税の課税対象とはなりません。

不動産の売買契約中に売り主や買い主が亡くなったら?

相続のことを考え、事前に不動産を換金(売却)し、わけやすい金融資産としておくことも、よくある話です。ただ、不動産の売買契約中に売り主や買い主が亡くなるということも、起こらないことではありません。いったいこのようなときは、不動産の権利関係はどうなるのでしょうか。

 

まず、売り主と買い主で考え方が異なります。売り主については、売買契約はすんだものの、まだ引き渡しが完了していない段階で売り主が亡くなった場合、売却の対象となった土地は、相続税法上は「土地」ではなく「売買代金請求権」として相続財産となります。

 

たとえば1億円で売買契約をすませた土地の、手付金をいくらかもらった段階で相続が発生すると、「売却代金1億円−手付金額」で算定した額が相続財産になります。手付金も現金でそのまま残っている場合には、結局は売買代金総額の1億円が相続財産となります。

 

また、土地ではなく「売買代金請求権」という債権になるので、土地としての評価上の特例を使うことができず、相続税上は不利になります。

 

一方、亡くなった人が買い主の場合、死亡時に不動産の引き渡しがすんでいなければ、相続税の算定に組み込まれる財産としては「土地の引き渡し請求権」となります。これは売買代金の金額です。

 

ただし、買い主については、売り主と異なり、土地として申告すればそれを認めるという特例があります。この場合の財産の評価額は財産評価基本通達により評価(路線価等)することになります。

 

つまり、「土地の引き渡し請求権」ではなく、土地・建物としての申告を認めるとしていますので、「土地の引渡請求権(売買代金)」よりも評価額が低くなる可能性があり、相続税の計算上は大きなメリットになるかもしれません。

 

なお、買い主にとって引き渡されるべき不動産が財産となりますが、支払いが残っていればその部分は債務となり、相続財産から引くことができます。

賃貸借契約が成立していれば、貸家建付地として評価減

では次に、賃貸アパートや賃貸マンションなどを建て替えている最中に、相続が発生した場合はどうなるかを考えてみましょう。

 

賃貸用のアパートやマンションが建っている土地は「貸家建付地」と呼ばれます。貸家建付地とは、所有する土地に建築した家屋を、第三者に貸し付けている場合の、その敷地のことをいい、更地よりも低い評価になるため、賃貸物件の建築は土地所有者にとっての相続税の節税対策としていまでも活用されています。

 

ところが、建て替え中に相続が起こったとき、基本的にはその土地には貸家は建っていないわけですから、貸家建付地ではなく更地となり評価減の対象にはなりません。

 

しかし、条件によっては貸家建付地として認められる場合もあります。たとえば通常だと、建て替えに際して、これまでの契約が切れて賃借人全部が外に出るため貸家建付地にはなりませんが、これまでの賃貸人との契約を維持したまま、その人たちが新築された貸家に入居することが約されている場合には対象になります。その場合、

 

①旧建物の賃借人が引き続き新建物に入居することになっている

②立ち退き料の支払いがない

③新築物件の新たな権利金等の授受がある

 

以上の条件を満たしているときに「賃貸借契約が成立している」とする通達が、国税庁から出ています。

 

このようなときは、相続が発生した時点では貸家として機能していなくても、貸家として評価することを認めているのです。

 

できれば賃借人との間で「建物が新築されたら入居します。そのときの家賃は●万円、部屋番号は●番、敷金は●万円」といった契約書を交わしておくといいでしょう。

 

ただし建て替えなどで建物が新しくなる場合は、賃料が上がるなど、条件が変わることがほとんどです。そこで以前の賃借人が納得してくれるかどうかは微妙なところです。

 

こんなときに役に立つのが、同族会社を活用して、貸家を一括賃貸(サブリース)させるという方法です。貸家を一括して貸すことで契約が維持できるため、個別に賃借人と交渉しなくてすみます。

 

ちなみに、貸家建付地が評価減になるのは、「建物があってだれかに貸している場合は、その土地は自分のものであっても自由に使えるものではないので、その分評価を下げてあげましょう」という考え方に基づくものです。

 

評価減になるのは、借地権割合と借家権割合をかけた割合で、たとえば、住宅地で借地権割合を70%、借家権割合を30%と仮定して考えると、この二つをかけた割合、すなわち、

 

70%×30%=21%

 

となり、更地に比べて約2割も評価が下がります(借地権割合等については、国税庁のホームページの「路線価」というページで確認できます)。

 

また、賃貸マンションやアパートの場合、評価減になるのは貸家建付地の面積に対して実際に賃貸している割合についてだけです。

 

たとえば戸数10戸のアパートがあったとしましょう。各部屋の面積が全部同じで、5戸だけ入居者がいたとすると、原則として5戸分だけが評価減の対象となるのです。

 

ただし、国税庁のホームページにも掲載されているように、空室になっている部分についても、「次の人がいつでも入居できるよう維持管理されていて、不動産会社やチラシなどを通じて募集活動を続けていれば貸家とみなす。ただし、その期間については1ヵ月程度など、一時的な期間であること」と、短期間の一時的な空室であれば一定条件のもとに貸家建付地であると認めることとなっています。

 

一時的な期間を国税庁の見解では非常に短い期間を想定していますが、実務的にはもっと長くても貸家建付地とみなすという裁決事例も出ています。なんと最大2年6ヵ月空いていた部屋についても、国税不服審判所が「一時的な空室」と判断し貸家建付地と認めた例もあります。

 

万一、空室が生じた場合には、貸家としての建物の維持管理と募集活動の継続がポイントとなります。後日の税務調査でその点を証明できるよう、管理実態の説明資料や募集広告のチラシなどは保存しておいたほうがよいでしょう。

 

なお、一戸建てについてはこのような例外はなく、相続発生時に入居者がいなければ、更地として評価されますので注意が必要です。

 

 

 

服部 誠
税理士法人レガート 代表社員/税理士

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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税理士法人レガート 代表社員・税理士

昭和34年1月生まれ。中央大学商学部卒。昭和58年6月税理士登録。
人と人とのつながりを大切にした「誠実な対応」「迅速な対応」「正確な対応」をモットーに、税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続申告業務において多数の実績を持つ。相続申告・贈与申告・譲渡申告等の関与件数は1,200件を超え、その経験を基に全国での講演活動や書籍などの執筆活動も行っている。

著者紹介

連載資産税専門税理士が教える「税務調査対策」の要諦

相続税の税務調査を 完璧に切り抜ける方法[改訂二版]

相続税の税務調査を 完璧に切り抜ける方法[改訂二版]

服部 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

ある日突然訪れる「税務調査」にどう対処したらよいのか。 資産税に強いベテラン税理士に学ぶ、相続税と税務調査対策。 資産の多寡にかかわらず税務調査は訪れる。そんなとき、何を準備しどう対処したらよいのか? 相続税対…

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