どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえる。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 今回取り上げるのは、『住みたい街ランキング』で、埼玉県で第1位の「大宮」。

埼玉県最大の繁華街「大宮」再開発で大きく変わる

毎年恒例の『住みたい街ランキング』(関東版)で、全体で4位、埼玉県で最高位だったのが「大宮」(駅)です。20代を中心に100点以上得点を伸ばしたそうです。人気急上昇の街の住み心地はどうなのでしょうか。20代・30代、独身の男性会社員の視点でみていきましょう。

 

「大宮」駅は、新幹線(東北新幹線、山形新幹線、秋田新幹線、北海道新幹線、上越新幹線、北陸新幹線)、JR在来線(京浜東北線、宇都宮線、高崎線、埼京線、川越線)、東武野田線(東武アーバンパークライン)、埼玉新都市交通ニューシャトルが乗り入れる全国的にみても、有数の巨大ターミナル駅です。1日平均乗降人員は約69万人で、埼玉県の駅では第1位。実績をみても、県下最大の中心駅といってもいいでしょう。

 

駅には、駅ビルの「ルミネ大宮店」のほか、エキナカの商業施設「エキュート大宮」「Dila大宮」があり、街に出ることなく買い物がすんでしまうほどの充実ぶりです。

 

駅の東口と西口では、様相がまったく異なります。東口は、旧中山道の宿場、大宮宿を期限とする市街地で、以前は、長崎屋、十字屋、西武百貨店など、多くの大型商業施設が点在する、大宮の賑わいの中心でした。しかし現在、存在感を発揮するのは「高島屋大宮店」くらいで、空地も目立つエリアになっています。それでも「一番街商店街」「大宮銀座通り商店街」「栄町商栄会」など、商店街が縦横に走り、路地めぐりが楽しい一画が多数残っています。

 

また以前「大宮中央デパート」があった跡地には、公共施設(市民会館)や商業施設、オフィスなどが入った18階建ての複合ビルがつくられる計画など、いくつもの再開発が進行中。老朽化した公共施設を移築しながら再構築するプロジェクトが進行中で、今後の展開が期待されています。

 

一方、再開発によりきれいに整備された西口エリアには、「そごう大宮店」や「大宮マルイ」、「東急ハンズ大宮店」、複合商業ビル「大宮アルシェ」など、大型の商業施設が整然と並びます。

 

整然とした街並みが広がっていますが、さらに再開発は進行中。ソニックシティの裏手では、14階建てと28階建ての商業施設と住宅からなる複合施設が2022年に完成予定。さらにその隣のエリアでも、タワーマンションの計画が浮上しています。またそごうの裏手にあたる一帯でも再開発の計画が進行中で、住環境のバランスの取れた街になると期待されています。

 

「大宮」」駅西口
「大宮」」駅西口

 

このような「大宮」駅周辺の居住性をみていきましょう。まずは駅周辺の家賃相場です。駅から徒歩10分圏内の1Kの平均家賃は7.03万円、11分を超えると、4.92万円という水準です(図表1)

 

出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(4月12日時点)
[図表1]「大宮」駅周辺の平均家賃 出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(4月12日時点)

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均月給は、25~29歳で27.5万円、30~34歳で34.1万円、埼玉県勤務で25~29歳で24.8万円、30~34歳で28.6万円となっています(図表2)。企業規模によって平均給与は異なりますが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額の1/3以内を適正家賃と考えると、都内勤務20代後半は6.9万円、埼玉県勤務は6.2万円、都内勤務30代前半は8.5万円、埼玉県勤務は7.1万円となります。

 

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」 ※10名以上の企業対象 ※数値は所定内給与額
[図表2]20代後半、30代前半の平均月給 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」
※10名以上の企業対象
※数値は所定内給与額

 

「大宮」駅周辺は、30代であれば駅から10分圏内、20代であれば11分を超えたエリアで居住が可能な家賃水準です。繁華街が広がるエリアでも単身者向けのマンションが豊富ですが、治安に少々不安を覚えるかもしれません。

 

犯罪の発生件数からみてみると、西口の桜木町エリアや、その西隣にあたる上子町エリアが候補になるでしょう。

交通利便性は高いが、ラッシュはかなりつらい

次に交通の利便性をみてみましょう。前出のとおり「大宮」駅は、日本有数の巨大ターミナルです。JRで「池袋」には28分、「新宿」には34分、「渋谷」には40分、「東京」には25分、「品川」には46分と、山手線の主要駅にはダイレクトにアクセスできる利便性が魅力です(所要時間は平日8時に出発する場合の目安)。また平日の通勤時間帯には5分間隔程度に電車があり、東京都心へのアクセスに不便を感じることはないでしょう。ひとつ欠点といえば、ラッシュ時の混雑。埼京線では「板橋」~「池袋」、京浜東北線では「南浦和」~「赤羽」が最も混雑するといわれ、混雑率は180%超えるほど。かなりの圧迫感を覚えます。

 

生活の利便性をみてみましょう。駅周辺には大型商業施設が林立し、また東口エリアは商店街が充実しているので、食材や総菜をリーズナブルに購入することができます。しかし駅周辺にはいわゆるお手頃なスーパーは少なく、普段使いの店は駅から離れた住宅街にあります。居住地選びの際は、駅と普段使いの店に挟まれたエリアがおすすめです。またコンビニエンストア、ドラッグストアも豊富なので、買い物に困ることはないでしょう。

 

さらに「大宮」駅周辺は、飲食店も充実。単身者でも気兼ねなく入れるチェーン店はもちろん、おしゃれをして行くような飲食店も多く、お気に入りの一軒を見つける楽しみがある街です。しかし駅周辺は繁華街が広がり、東口の「大宮銀座通り商店街」を中心に歓楽街を形成。夜の一人歩きは避けたくなるような雰囲気です。

 

「大宮」駅は日本でも有数の巨大ターミナルでありながら、駅周辺でも家賃相場はリーズナブル。一般的な会社員でも駅近の利便性を享受できる街です。都心へのアクセスも良い一方で、ラッシュ時の混雑率はかなり高め。通勤にはかなりの覚悟が必要です。また駅周辺は繁華街が広がっているため、買い物も飲食も選択肢が豊富です。高い生活利便性を誇る一方で、歓楽街を形成するエリアもあるので、居住地選びの際には治安の確認も怠ってはいけません。

 

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