5年に一度の国勢調査。結果を紐解いていくと、地域性や住民の意識なども垣間みえてきます。今回は転出・転入の状況から、23区の地域性をみていきましょう。

「隣の人、どんな人だった?」という会話が多い区は?

2020年は、5年に一度行われる国勢調査の年。インターネットによる回答期間は9月14日~10月7日で、紙の調査票による回答が10月1~7日となっています。新型コロナ感染拡大の影響で調査員が集まらないとニュースでも話題になり、総務省はインターネット回答を促しています。

 

自宅に届く調査書類には8桁のログインIDと4桁のアクセスキーがあるので、パソコンやスマートフォンなどから「国勢調査2020」の専用サイトにアクセスします。「インターネット回答」を選択すれば「回答サイト」へ移動し、回答後、パスワードを設定し送付すれば完了と、実に簡単。もし10月1日までに内容の変更があれば、再ログインして修正することもできます。

 

ちなみに新型コロナ感染の影響で、集計の発表も通常よりも数ヵ月程度遅れる見込み。人口速報集計は、来年の6月になる予定です。

 

国勢調査では、「日本に居住している全ての人及び世帯」を対象に、国内の人口、世帯、産業構造等などについて調査が行われます。第1回国勢調査は1920年なので、今回でちょうど100周年というわけです。

 

結果からはさまざまなことがわかりますが、そのひとつ「5年前の常住地(都内区市町村、他道府県)別人口」についてみていくと、人がどのように転居・転出をしているのか、その実態がみえてきます。

 

東京23区では、前々回2010年と2015年とも現住所が同じだった人の割合、つまり5年間の定着率は、23区すべてで減少しました。その5年間というと、残念ながらコロナ禍の影響で2021年に延期になりましたが、2013年に東京五輪が決定し、またアベノミクスの効果で経済も何となく上向いていた時期。東京をはじめ不動産マーケットも好調で、新築物件も多く建てられました。ちょうど「よりよい住環境を求めて」という引越し欲が高まった時期でした。

 

そのなかでも元々定着率が低い、つまり住民の移動が活発だったのが「港区」で、2010年40%強から、2015年には35%弱に。全世帯の3分2はこの5年間で引越しをしたという計算になります。「前に隣に住んでいたのは、どんな人だったか……」という会話が最もされている区、それが港区なのです。

 

一方で住民の移動が少ないのが葛飾区59%、江戸川区57%。2世帯に1世帯以上は転居せずに同じところに住み続けています。古くからのご近所付き合いがある区、それが葛飾区や江戸川区です。

 

ご近所さんとの距離が近い(※画像はイメージです/PIXTA)
ご近所さんとの距離が近い(※画像はイメージです/PIXTA)

 

移動が活発な区は、「単身者率が高い」「賃貸率が多い」、つまり「自由に動くことのできる身軽な立場」の人が多い傾向にあります。一方で移動が少ない区は、「単身者率が低い」「持ち家率が高い」、つまり「家族がいて、引越しへのハードルが高い」人が多い傾向にあります。

 

また定着率の低い区は、居住自治体への愛着が薄いのだろうかと考えがちですが、定着率ワースト1の「港区」が、2015年は同自治体への移動が多い区の5位に位置していることから、一概に愛着が薄いと結論づけるのは早いかもしれません。

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