暴落は第2ステージ、恐慌への入り口か…求められる大胆な政策

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新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大する中、各国の政策当局のリーダーシップのなさや株価暴落に対する認識の甘さからマーケットの変動が大きくなっている。直近では、比較的リスク時に強い国債や金も売られており、暴落が第2ステージに突入した可能性がある。各国が一体となった大胆な政策が求められる。

必要とされる恐怖への危機感

歴史的な暴落と平和ボケ

 

2020年2月21日から始まった株価の下落はリーマンショックなど過去の市場崩壊と同程度のスピードかつ大幅なものとなってきている。米国株式の代表的な指数の一つであるS&P500のボラティリティ(VIX指数)は、2020年3月12日に75.47を記録し、リーマンショク時の最大値80.86(2008年11月20日)に迫った。この水準より高いボラティリティーを経験したのはここ近年ではブラックマンデー直後(1987年10月)までに遡らねばならない。

 

ここで気になるのが政策当局のリーダーシップのなさと下落に対する認識の甘さ、それに加えて市場の動きが早すぎることである。このためグローバルベースでの大胆な政策合意を築けるほどの時間的な余裕が与えられていないようだ。ブラックマンデーの時もリーマンショックの時も株価の急落が恐慌につながるのではとの危機感が高まり、強力なリーダーシップのもと大胆な政策が導入され、市場の安定化に対処してきた。しかし、今回は依然としてその動きは見られない。それよりもトランプ大統領は欧州との緊張を高め、連携を阻害するような入国禁止策を発表し、株価下落を加速させてしまっている。米国連邦準備制度理事会(FRB)にしても慌てて金利を引き下げ過ぎてしまい市場に見透かされてしまっているようだ。2009年以降長年に渡る景気拡大と株価の上昇がリーダーを不在にさせてしまったかもしれない。今回の暴落に対する認識の甘さはある種の平和ボケのつけともいえる。

 

暴落は第2ステージに突入

 

また、この急落局面は3月9日以降から、第2ステージに入ってきているようだ。株式のみならず様々なアセットクラスの相関が下落という方向に高まり、分散したポートフォリオでもボラティリティを抑えきれない状態になってきている。それまでは、国債や金といった比較的リスク時に強く、株式に対して相関が低いあるいは通常マイナスの価格形成をするアセットクラスは上昇してきていた。しかし9日以降は一転下落に転じてきているのだ。つまり、株価が急落する中で国債や金の価格でさえも下落に転じ、ほぼ全てのアセットクラスが下落するという投資環境となってきている。

 

このような現象はリーマンブラザーズが倒産して緊張が一気に高まった2008年秋にも発生していた。価格水準と関係なく売らざるを得ない投資家が多数存在する時に発生する極度のベアマーケットで見られる現象で、1987年のブラックマンデーの時も、1998年のロシアショックの時も2002年のITバブル崩壊の時にも見られなかった。

 

  ※騰落率の期間①ブラックマンデー:1987年10月2日~同10月26日、 ②ITバブル崩壊:2001年8月23日~同9月21日、 ③リーマンショック:2008年9月18日~同10月10日、 ④欧州債務危機:2011年7月19日~同8月10日、 ⑤新型コロナウイルス:2020年2月19日~同3月12日  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]S&P500の過去の急落時の騰落率※騰落率の期間①ブラックマンデー:1987年10月2日~同10月26日、
       ②ITバブル崩壊:2001年8月23日~同9月21日、
       ③リーマンショック:2008年9月18日~同10月10日、
       ④欧州債務危機:2011年7月19日~同8月10日、
       ⑤新型コロナウイルス:2020年2月19日~同3月12日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成


 

日次、期間:1990年1月2日~2020年3月13日  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]VIX指数(S&P500)の推移 日次、期間:1990年1月2日~2020年3月13日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

円安へ転じたことへの不安

一方、このような環境下において9日以降ゆっくりであるが円がドルに対して下落に転じたことが非常に気になる。過去それほど経験したことがない価格形成パターンであるからだ。株価の下落に対して円はそれほど上昇していないように思える。2020年2月21日の111.66円から現在の107.66円(3月13日)は3.6%程度の円高に過ぎない。同期間、日経平均は25.5%下落している。リーマンショック時の2008年10月3日から同年10月27日まで日経平均が34.5%急落する過程で我々は11.5%の円高を経験している。しかも、その当時は円高と日経平均の下落がほぼ完璧と言っていいほど連動していたのだ。

 

しかし今回は、一時的かもしれないが株式の急落局面で円安に転じている。その要因の一つとして考えられるのが、日銀によるリスク資産の保有ではないかと考えている。日銀は量的金融緩和政策の一環として日本株式ETFとJ-REITを購入してきたが、3月10日の参院財政金融委員会で日銀の黒田総裁は日銀が保有するETFの損益分岐点が日経平均で19,500円程度との見解を明らかにした。本日(3月13日)も日経平均は下落し17,431円で終わっている。日銀は30兆円近くの日本株式ETFを保有しており、約3兆円の含み損を有することになる。この金額は日銀の自己資本4.17兆円(2019年9月末)と比較しても決して少なくはない。また別途J-REITで5,610億円、社債で3.22兆円保有しており、日銀は資本市場の変動によるバランスシートの毀損リスクにさらされ始めている。また494兆円を保有する国債の利回りも株価が下落する中で上昇し始めてきている。今回の円安や国債利回りの反転はソブリンリスクを嗅ぎとった結果でなければ良いのであるが。

 

米国の株式市場はピークからすでに30%前後下落しており、リズム的にはいつリバウンドしてもおかしくない。しかし市場はすでに縮小スパイラルに陥っており、本格反転には各国が一体となった大胆な政策が必要となるであろう。そのためには、このまま下落を放置すると恐慌になってしまうという危機感が必要なのかもしれない。

 

日次、期間:2020年2月3日~2020年3月13日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]日経平均株価とドル円相場の推移 日次、期間:2020年2月3日~2020年3月13日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

日次、期間:2020年2月3日~2020年3月13日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表4]日本の10年国債の利回りの推移 日次、期間:2020年2月3日~2020年3月13日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『暴落は第2ステージ、恐慌への入り口か…求められる大胆な政策』)。

 

(2020年3月16日)

 

 

萩野 琢英

ピクテ投信投資顧問株式会社
代表取締役社長

 

ピクテ投信投資顧問株式会社 代表取締役社長

1964年、東京都に生まれる。
学習院大学法学部を卒業後、山一證券、山之内製薬(現・アステラス製薬)での勤務を経て、 2000年にピクテ投信投資顧問株式会社に入社し、2011年に代表取締役社長に就任。
いかなる経済危機に直面しても長期的な資産保全を可能にする「負けない運用」を信念とし、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド、ピクテ・インカム・コレクション・ファンド、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド、ユーロ・セレクト・インカムなどを開発。積極的にセミナーも開催。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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