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3月9日をピークに「安全資産」であるはずの金が売られている。3月16日にはピークから10%近い下落となった。なぜ金は下落しているのか、そして、金はいつ反転するのか。リーマンショックの頃、今回と同様に、米国株式と金が共に大幅下落したケースを分析すると、金は株より先に動き出し、8割のケースで大幅同時安の13週目に、金はプラスのリターンに転じた。

なぜ金は下落したのか

3月9日をピークに「安全資産」であるはずの金も売られ、3月16日にはピークから10%近い下落となった。本来なら、金利低下や将来的なマネーの拡大への期待は金価格にはプラス要因のはず。

 

この下落の背景にあるのは、金の流動性の高さだ。株式などリスク資産の大幅な下落により、資金の手当が必要となり、特に年初来上昇してきた金は「換金売り」のターゲットにされやすかったと考えられる(図表1参照)。

 

 日次、期間:2020年1月1日~2020年3月16日 ※ 2020年1月1日を100として指数化 ※ ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国株式、金価格、原油価格、FFレートの推移
日次、期間:2020年1月1日~2020年3月16日
※ 2020年1月1日を100として指数化
※ ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成

 

同様の動きは、リーマンショック前後のときにも見られた(図表2参照)。景気後退局面に入る前に利下げが開始され、当初金は上昇するも(A)、米国株式が下落を続ける中で下落に転じた(B)。ただ、いち早く底をつけ、株よりも先に上昇に転じ、大きなリターンを提供した(C)。

 

ドルベース、日次、期間:2006年9月18日~2010年9月17日 2007年9月18日を100として指数化 ※ ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国株式、金価格、FFレートの推移 ドルベース、日次、期間:2006年9月18日~2010年9月17日
2007年9月18日を100として指数化
※ ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成

リーマンショック時、金は先に底をつけた

リーマンショック時、金と米国株式が同時に大幅に下落したケースが5回あった。それぞれにつき、その13週後、26週後、そして52週後の金のリターンを検証してみた(図表3参照)。

 

 4週間のリターンが、米国株式と金と共に1σ以上下落した場合 週次、期間:2007年1月1日~2009年12月末 ※米国株式はダウ・ジョーンズ工業株価平均(価格指数)、金価格はNY金 先物価格、灰色の影は米景気後退局面:全米経済研究所(NBER)のデー タに基づく。ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国株式と金が同時に大幅下落した後の金の値動き4週間のリターンが、米国株式と金と共に1σ以上下落した場合
週次、期間:2007年1月1日~2009年12月末
※米国株式はダウ・ジョーンズ工業株価平均(価格指数)、金価格はNY金先物価格、灰色の影は米景気後退局面:全米経済研究所(NBER)のデータに基づく。
※ブルームバークのデータ基づきピクテ投信投資顧問作成

 

①のケースでは、金と株が大幅下落した13週後に株はさらに下落、金のリターンは横ばいだったが26週後にプラスに転じた。それ以外の4つのケース(②~④)では、13週後に株はマイナスに留まる中、金はプラスのリターン(図の左上)となり、52週後は金・株式共にプラスとなった(図の右上)。

 

このように、あくまで今回同様VIX指数が高まったリーマンショック前後の分析ではあるが、金と株が共に大幅に下落したあと、13週間後に8割のケースで金のリターンはプラスに転じた事が確認できた。今回も換金売りが原因とするのであれば、「安全資産」としての魅力、金利低下や景気対策としてのマネー拡大期待に支えられ、今後は、金本来の動きに回帰する可能性は十分あるのではと考える。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金が「換金売り」のターゲットに…いつ反転するのか?』を参照)。

 

(2020年3月18日)

 

塚本 卓治

ピクテ投信投資顧問株式会社

投資戦略部長

 

 

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