米雇用統計の上振れでテーパリング加速が視野に入る (※画像はイメージです/PIXTA)

11月米雇用統計では家計調査において雇用者数が前月比113.6万人も増加したことが材料視され、マーケットではFRBによるテーパリングの加速観測が高まった。今後はFRBの流動性供給が絞られ、株価バリュエーションが低下しやすい相場環境になることが想定されるため、来年は企業のファンダメンタルズを重視した株式の選別がより一層重要になるだろう。

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11月米雇用統計を受けてテーパリング加速観測がさらに高まる

12月3日に発表された11月米雇用統計は、事業所調査である非農業部門雇用者数が前月比21.0万人増と市場予想の同55.0万人増を大きく下回ったが、家計調査である失業率は4.2%と市場予想の4.5%を下回り、前月の4.6%から大きく低下した(図表1)。

 

前月比、単位:万人 出所:BLS(米国労働統計局)、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]2021年11月米雇用統計の雇用者数 前月比、単位:万人
出所:BLS(米国労働統計局)、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

事業所調査と家計調査との間でここまで大きな乖離が見られることは不可解だが、家計調査では労働参加率が前月の61.6%から61.8%へ上昇する中で雇用者数が前月から113.6万人も増加したこともあり、マーケットでは家計調査による雇用統計の上振れが材料視され、テーパリングの加速観測がさらに高まる展開となった。実際、セントルイス連銀のブラード総裁も今回の雇用統計を受けて、「おそらく非農業部門雇用者数に(上方)修正が入るだろう」との見解を示している。

 

そもそも11月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、FRB(米国連邦準備制度理事会)による米国国債の買付けが毎月100億ドルずつ、米国MBS(住宅ローン担保証券)の買付けでは毎月50億ドルずつ減額される方針が示されていた(来年6月時点で買付け額がゼロになる計算)。しかし、11月30日に開催された上院銀行委員会でのパウエルFRB議長の議会証言では、インフレが「一過性」との表現を削除するのが妥当な時期が来たとし、テーパリングの終了を数ヵ月早めることを検討することが適切だと発言、テーパリングが加速するとの見方が広がるきっかけになっていた。そのような中、今回の家計調査における雇用統計の上振れが、テーパリング加速の可能性をさらに高める決定打になったと言える。

来年は企業のファンダメンタルズが株価材料としてより重要になる年

先進国株式市場では一連のテーパリング加速観測によって、直近5日間におけるMSCI先進国成長株指数の下落率がMSCI先進国割安株指数の下落率を上回る展開となった(図表2)。

 

配当込み、米ドル建て、単位:%、期間:2021年11月26日~12月3日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]MSCI先進国株指数、MSCI先進国成長株指数、MSCI先進国割安株指数の5日間騰落率 配当込み、米ドル建て、単位:%、期間:2021年11月26日~12月3日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

成長株は特にFRBによる積極的な量的緩和政策による恩恵を受けてきただけに、テーパリングによる反動で成長株に対して警戒感が広がったとしても不思議ではないだろう。

 

テーパリングはあくまで量的緩和の縮小であり、金融緩和状態であることに変わりはない。しかし、流動性供給自体が絞られている点は見逃すべきではなく、潜在的には株価バリュエーションの低下圧力につながるリスクがある。

 

ここで特に注意すべきは、期待先行型で株価が急騰したリスク値の高い赤字体質の成長株だろう。このような株式は利益の裏づけが乏しい分、FRBによる流動性供給が絞られる局面ではバリュエーションが大幅に低下してしまう可能性がある。来年は先進国株式市場全体で増益率が大幅に鈍化することがコンセンサス(市場予想)となっているだけに、ファンダメンタルズを重視した株式の選別がより一層重要になるだろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米雇用統計の上振れでテーパリング加速が視野に入る』を参照)。

 

(2021年12月7日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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