どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 今回取り上げるのは、京王井の頭線。

都内でも人気の2つの街を結ぶ「井の頭線」

「渋谷」駅と「吉祥寺」駅を結ぶ京王井の頭線。東京でも人気の高い2つの街をつなぐ人気路線だ。他路線と相互乗り入れを行い、長距離を走ることの多い首都圏の私鉄路線のなかでは珍しく、全17駅、路線距離12キロ強と短い。駅間の距離も一番長い「浜田山」~「高井戸」間で1.2キロほどで、平均すると1キロ未満。隣駅のホームが見えるほどだ。

 

その歴史は首都圏の私鉄路線のなかでは新しく、小田急電鉄と同じルーツをもつ帝都電鉄により、1934年に全線開通。1940年、小田急電鉄(当時、小田原急行鉄道)との合併に伴い、同社の帝都線となったが、1942年にはいわゆる大東急に組み込まれ、現在の井の頭線という名称になった。戦後、大東急の解体により、1948年に京王電鉄(当時は京王帝都電鉄)の所有となる。このとき小田急線は井の頭線の代わりに箱根登山鉄道を系列会社としている。また、以前の「下北沢」駅では小田急小田原線と井の頭線は改札を介さずに乗り換えができたが、これは、同線が小田急電鉄をルーツとすることの名残であった。

 

そんな「下北沢」駅とその周辺は、小田急線駅の地下化に伴い再開発が進む。また「明大前」駅は現在京王線の高架事業が進行中で、近い将来、駅周辺の回遊性が劇的に高まる予定だ(リリースによると、事業期間は2022年までとなっている)。

 

利便性向上が進むなか、残念なのが「渋谷」駅。東京メトロ銀座線「渋谷」駅の新ホームの完成により、それまでスムーズだった井の頭線と銀座線の乗り換えが、面倒になった。途中、JR線からの乗り換え客と動線が一緒になってしまい、乗り換えに伴う混雑具合はニュースになるほどだった。今後の改善に期待がかかる。

 

 

そんな井の頭沿線の住み心地はどうだろうか。20~30代の一人暮らしの会社員が賃貸マンションに住むことを想定し、沿線の街を見ていこう。

 

まず平日通勤時間帯の「渋谷」と「吉祥寺」間の所要時間を見てみよう(図表1)。平日8時に駅を出発とした際、二つの駅の所要時間は30分程度となる。井の頭線では各駅停車のほか、急行電車の運転があり、途中「久我山」「永福町」「明大前」「下北沢」に停車する。日中であれば「渋谷」~「吉祥寺」は16分程度だが、平日7時過ぎ~8時半過ぎのラッシュ時には、各駅停車のみの運行となり、所要時間は長くなってしまうことは覚えておきたい。

 

また井の頭線の混雑率は、150%ほど。これは吊革につかまったり、楽にスマートフォンを操作できるレベルである。しかし「渋谷」寄りの車両が混みやすいのが井の頭線の特徴で、車両によってはかなりの圧迫感がある。混雑を避けたいなら、「吉祥寺」寄りの車両に乗ることをおすすめする。

 

次に各駅の平均家賃(駅から徒歩10分圏内/1K~1DK)を見ていこう(図表1)。「渋谷」のほか、「神泉」「駒場東大前」は10万円前後、小田急小田原線との接続駅「そも北沢」、その隣駅「新代田」は8万円台、住みたい街ランキングでも上位の「吉祥寺」は7.54万円と、平均家賃は高め。また閑静な高級住宅地が点在するエリアだけあり、家賃が高めの駅が点在するが、そのなかでも京王線との接続駅である「明大前」は6.95万円と、学生の街ということもありリーズナブル。また杉並区と三鷹市の境となる「久我山」と「三鷹台」は5万円台と、沿線では最も家賃の安いエリアのひとつとなっている。

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均給与/月は、20~24歳で23.01万円、25~29歳で26.01万円、30~34歳で29.34万円、35~39歳で32.22万円となっている。企業規模によって平均給与は異なるが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額は、20代であれば18~20万円、30代で22~24万円程度と考えられる。また、手取り月収の1/3以内を適正家賃と考えると、20代会社員の適正家賃は6万~6.7万円、30代会社員の適正家賃は7.4万~8.1万円となる。

 

これをもとに各駅の平均家賃を見ていくと、20代会社員であれば「池ノ上」「浜田山」「高井戸」「久我山」「三鷹台」の5駅が候補駅になり、30代であればそこに「渋谷」「神泉」「駒場東大前」「新代田」以外の駅が候補になる。井の頭線は「渋谷」と「吉祥寺」と、都内でも有数の人気の街を行き来できる人気路線だが、20代会社員でも住むことができる駅(街)がある。「渋谷」で東京メトロ銀座線や半蔵門線に乗り換えれば都心方面にアクセスでき、新宿方面には「吉祥寺」「明大前」「下北沢」「渋谷」と都合のいい駅で乗り換えて向かうことができる。渋谷のみならず、新宿、都心方面の勤務であれば、有力な居住候補路線になるのではないだろうか。

 

出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月13日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする 所要時間の目安:各駅を8時に出発すると仮定し、最短の時間を表示
[図表1]京王井の頭線各駅の「渋谷」「吉祥寺」までの所要時間と、駅周辺の平均家賃 出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月13日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする
所要時間の目安:各駅を8時に出発すると仮定し、最短の時間を表示

都内でも「抜群の住環境」の駅が並ぶ

平日通勤時間帯の所要時間と各駅の平均家賃を見てきたが、 実際の暮らしはどうなるのであろうか。それぞれ見ていこう。

 

■渋谷~ 新代田

「渋谷」を起点とすると平日通勤時間帯で10分圏内となるエリア。繁華街の「渋谷」に近いエリアであり、自転車でも10~20分ほどでアクセスできるエリアだけあり、家賃は高めである。その中でも「池ノ上」はエリアでは家賃の安い穴場スポットだ。駅前には小さな商店街あるほか、小規模のスーパーマーケット、コンビニエンスストアがあり、ひとり暮らしをするのにも便利な環境。さらに「下北沢」駅には徒歩10分と十分に生活圏内となる。日常は落ち着いた環境で、休日はにぎやかにな下北沢へと、オンオフの使い分けが可能だ。

 

■東松原~浜田山

「渋谷」を起点とすると平日通勤時間帯で20分圏内となるエリア。「明大前」は明治大学へ続く商店街にはリーズナブルな飲食店などが並んでいるが、そのほかは閑静な住宅街。何といっても、「新宿」「渋谷」双方にアクセスできる交通利便性が魅力的な駅だ。

 

「永福町」の北口には商店街充実しているほか、駅直結のスーパーも。「浜田山」の北口にも充実した商店街が広がるほか、24時間営業だったり外国製品を多く扱っていたりと、個性の異なるスーパーが3店舗点在。「永福町」から「浜田山」はいずれも徒歩圏内で、周辺で最寄品のすべてを揃えることができる。

 

■高井戸〜吉祥寺

「渋谷」を起点とすると平日通勤時間帯で30分圏内となるエリア。「高井戸」は近くを環状8号が南北に走り、その通り沿いにはファミストフードやファミリーレストランが立地し、一人暮らしには便利なエリアだ。

 

「久我山」の北口エリアには、小売店や飲食店などが充実した久我山商店会が広がるほか、スーパーも充実。路地を一歩入れば、閑静な住宅街が広がる。

 

「渋谷」と「吉祥寺」という、人気の街を結ぶ井の頭線だが、その沿線のほとんどは閑静な住宅地。「下北沢」を除き、際立った商業の集積は見られないが、ほとんどの駅の周辺には小〜中規模の商店街やスーパーが点在し、一人暮らしにも便利な住環境が広がる。他路線との乗り入れがない、「渋谷」寄りの車両が異常に混む、銀座線との接続が悪くなった……と細かな不満をあげていってはキリがないが、都内でも指折りの住み心地のいい路線だということは確かだろう。

 

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