金融機関を選択する際の「3つのポイント」
iDeCoをはじめようと思い立ってから実現するまで、悩むポイントがいくつかあります。
その1つ目のお悩みポイントが「どこの金融機関で口座開設すべきか」です。
iDeCoは多くの銀行や証券会社などの金融機関ではじめることができ、一見どこも同じように思えるかもしれません。しかし、実際には違います。iDeCoは老後資金のための特別口座ですから、口座開設した金融機関とは、長いお付き合いをしていくことになります。もちろん、途中で変更することも可能ですが、条件や特徴など、最初から自分にあったところを選ぶに越したことはありません。
では、金融機関を選ぶ時の3つのポイントを見ていきましょう。
ポイント① 口座管理にかかる手数料はいくらか?
下記の図表1は、iDeCoの口座管理にかかる手数料を比較したものです。ご覧いただくと、iDeCoは複数の組織が関わっていることがおわかりいただけると思います。したがって、手数料も複雑で、ややわかりにくいかもしれません。
必要となる手数料は、加入時の「初期費用」、運用時の「口座管理手数料」、受取時の「給付事務手数料」です。
初期費用はどこの金融機関を選んでも横並びで2,829円です。受取時の手数料も同じく、どの金融機関も440円です。
金融機関によって差が出るのは、運用時の「口座管理手数料」です。
毎月の口座管理手数料は、最も安い金融機関で171円、最も高い金融機関だと629円かかります。実に、1ヵ月458円の差額です。大したことのない差だと思いますか? 1年5,496円、10年54,960円、20年間109,920円…と、運用期間が長くなるほど負担感は増していきます。
2019年12月現在、この最安値171円の口座管理手数料の金融機関はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、大和証券、auカブコム証券、auアセットマネジメント、イオン銀行、三井住友銀行(みらいプロジェクト)の9社です。
手数料を最低限に抑えることは、iDeCoで賢く資産運用するポイントのひとつとなります。
ポイント② 優れた商品がラインアップされているか?
次に検討していただきたいことは、商品のラインアップです。
iDeCoでは、定期預金や保険(元本確保型)と投資信託(元本変動型)の金融商品を買うことができます。どの金融機関でも同じ商品を扱っているわけではありません。
先程の口座管理手数料最安値の9社を比較してみましょう。
定期預金は三井住友銀行(みらいプロジェクト)以外の金融機関で1本とほぼ横並びで、投資信託の本数にバラツキがあることがおわかりいただけると思います。もちろん、商品も金融機関によって違いがあります。のちほど、各社の特徴を比較してみます。
ポイント③ サービス内容やサポート体制は充実しているか?
下記の図表3は、サービスやサポート体制について比較したものです。
ネット証券に抵抗がある人や対面で説明してもらいたい人には、イオン銀行、大和証券、三井住友銀行(未来プロジェクト)の窓口サービスが魅力だと思います。
auのスマホをお使いなら、auカブコム証券、auアセットマネジメントは「au WALLETポイント」が貯まるので嬉しいですね。
自分で商品を組み合わせるよりロボアドに任せたいという人には、SBI証券、マネックス証券のロボアドバイザーからの提案は魅力的だと思います。
このように、各社が備えるサービスやサポートを比較して、自分に合った金融機関を選ぶときの参考にしてください。
各金融機関の特徴を比較!
ここからは各金融機関の特徴を紹介していきます。
①SBI証券(オリジナルプラン・セレクトプラン)
ネット証券大手のSBI証券のiDeCoは10年を超える運用実績があります。口座管理手数料も最安値ですし、商品ラインアップも優秀と、そつがありません。SBI証券のiDeCoはオリジナルプランとセレクトプランから好きな方を選びます。2018年11月にはじまったセレクトプランは低コスト&多様性にこだわったラインアップです。こだわりが無ければ、セレクトプランがおすすめです。理由はオリジナルプランより抵コストでいい商品が揃っているからです。
コールセンターの利用時間も平日および土曜日、日曜日(土曜日、日曜日は新規のお問い合せのみ)8:00~18:00と年末年始と祝日以外対応があることは便利ですね。
②楽天証券
同じくネット証券大手の楽天証券は口座管理手数料最安値、商品ラインアップも申し分ありません。楽天証券のIDだけで証券口座と年金口座をまとめて管理できるサービスはiDeCoだけでなく証券口座も利用している人にとっては便利ですね。
コールセンターの利用時間は平日10:00~19:00、土曜日9:00~17:00で、日曜日・祝日・年末年始以外は対応あります。
③マネックス証券
同じくネット証券大手のマネックス証券も口座管理手数料最安値、商品ラインアップも申し分ありません。「iDeCo専用ロボアドバイザー」による無料のポートフォリオ診断があります。「投資の経験がない」「投資信託などの金融商品に関する知識がない」という投資初心者の方も年齢や投資経験、万が一の元本割れに対するリスク許容度など、簡単な質問に答えるだけでどの商品をどんな配分で組み合わせればいいかアドバイスしてくれます。もちろん決めるのはあなたです。アドバイスがあるだけでも投資初心者にはありがたいサービスではないでしょうか。
コールセンターの利用時間は平日9:00~20:00、土曜日9:00~17:00で、日曜日・祝日・年末年始以外は対応あります。
④松井証券
松井証券も口座管理手数料最安値、商品ラインアップも悪くありません。松井証券の商品ラインアップの特徴は各資産クラスの中で信託報酬が安い投資信託を中心に12種類に厳選されています。各資産クラスで商品選びを迷うことがないため、商品が組み合わせやすいかもしれません。
コールセンターの利用時間は平日8:30〜17:00です。土・日曜日・祝日・年末年始以外は対応がありますが、他社と比べて、対応時間が短いです。平日働く会社員の人には厳しいかもしれません。
⑤大和証券
大和証券は口座管理手数料最安値と全国にある支店で相談できる安心感は魅力的です。商品ラインアップの面ではネット証券と比べるとやや見劣りする感があります。ですが、投資初心者には嬉しいサービスがあります。あなたに合った「iDeCo投資スタイル」を6つの質問に答えるだけで商品の組み合わせのポートフォリオのアドバイスがあります。参考になりますね。
コールセンターの利用時間は平日9:00~20:00、土・日曜日9:00~17:00で祝日・年末年始以外は対応あります。
⑥イオン銀行
イオン銀行は口座管理手数料最安値と窓口相談プラスコールセンター対応の長さに安心感があり、魅力的です。全国にあるイオン店舗内にある窓口で365日相談できます。また、コールセンターの利用時間も平日9:00~21:00、土・日曜日、祝日、振替休日 9:00~17:00と年末年始・GW・メンテナンスの日以外は対応してくれるという対応時間の長さです。フォロー重視の人におすすめです。
ただ、商品ラインアップの面ではネット証券と比べるとやや見劣りする感があります。ですが、「SMART FOLIO」という専用のサポートツールがあり、自分にあった資産の組み合わせを簡単に診断してくれます。運用後も運用状況に応じてお知らせメールが届きます。投資初心者には嬉しいサービスですね。
⑦三井住友銀行(未来プロジェクト)
2019年9月スタートしたプランが三井住友銀行の未来プロジェクトです。口座管理手数料は三井住友銀行の既存の標準コースと違って、運営管理機関の手数料を0円として、最安値です。社会貢献を意識した商品がラインアップされています。しかも、加入者×100円が国内の子供の貧困対策に寄付されます。このプランの要は「iDeCo×社会貢献」のようです。
商品ラインアップは他社とは違い、個性的です。まず国内ではじめて定期預金を外しました。低コストのインデックスファンドもありません。信託報酬をみても平均的に高く、手数料ではないところに付加価値を求める人向けのプランです。
全国の支店の窓口での対応はもちろん、コールセンターの利用時間も平日9:00~21:00、土・日曜日9:00~17:00で祝日・年末年始・メンテナンスの日以外は対応あります。
⑧auカブコム証券
auカブコム証券は2019年4月からiDeCoの取り扱いをスタートしました。口座管理手数料は最安値ですが、商品ラインアップの面ではネット証券と比べてやや見劣りします。
やはり、魅力はauアセットマネジメントの投資信託の保有残高によって、「au WALLET ポイント」が貯まることです。今後ポイントの対象になる投資信託が増えるといいですね。
コールセンターの利用時間は平日9:00~20:00、土・日曜日9:00~17:00で祝日・年末年始以外は対応あります。
⑨auアセットマネジメント
auアセットマネジメントは運用会社です。銀行でも証券会社でもありません。自社で運用する商品が4本だけラインアップされていますが、商品面では正直大きく見劣りします。ちなみに、口座管理手数料は最安値です。
auのスマホをお使いの人にとっては、投資信託の保有残高によって、「au WALLET ポイント」がもらえることは嬉しいですね。
コールセンターの利用時間は平日9:00~20:00、土・日曜日9:00~17:00で祝日・年末年始・メンテナンス日以外は対応あります。
金融機関の途中変更は、手間もお金もかかってしまう
最初にお伝えしたようにiDeCoの口座開設する金融機関を選ぶポイントは3つです。
①口座管理手数料は最安値の金融機関
②商品ラインアップの優れた金融機関
③サービスやサポート体制などが自分にあっている金融機関
iDeCoの金融機関は途中で変更することはできます。ですが、金融機関を変更するときは、いったん現金化して次の金融機関に現金を移し、商品を買い付け、また一から投資をはじめることになります。手間とお金がかかります。
できれば、この記事を読んで、最初から自分に合った金融機関でご自分のiDeCoをスタートさせてください。
黒木 留美
ファイナンシャルプランナー(FP)