父の「死亡退職金」を受け取れる…息子ぬか喜びも、相続税発生

多くの勤め先で採用されている「退職金制度」。なかには、在職中に死亡した場合、「死亡退職金」や「弔慰金」が支給されるケースもあります。これらの金品には、誰に、どのような税金がかかるのでしょうか? 税理士法人レガート代表社員・服部誠税理士が、事例をもとに解説します。

亡くなった父の退職金が出た!

とある広告代理店に勤めていた澤井和文さん(仮名・60歳)。20代で入社して以降、会社で寝泊まりする日が続くこともあったが、何とか乗り越えてきた。しかし、突然の不幸が起きる。不規則な生活が祟ったのか、「心臓突然死」によって亡くなってしまったのだ。

 

妻の由紀さん(仮名・59歳)は、悲しむ暇もなく、葬儀や遺産の処理に追われる日々が続いた。どうにか喪主として葬儀を取りまとめ、ほっとしたのもつかの間、「死亡退職金」が発生することが判明した。その額なんと3,000万円。

 

思わぬ知らせに、息子の隆さん(仮名・27歳)は、喜びの声を抑えきれない。

 

「だって3,000万円ですよ! ラッキーすぎやしませんか? 母と山分けにしたって、十分すぎる金ですよそんなの」

 

不謹慎とも思える発言だ。しかし隆さんにとって、父は遠い存在であり、突然の死を悲しむことができなかった。いわく、和文さんは家に帰らない日も多かったそうだ。休みの日はひっきりなしに電話をし、パソコンと向かいあっていた。

 

「父が家庭を顧みたことなんて1度もありません。学校の行事に参加したことはなかったし、大学だって就職だって、文句の1つも言ってくれなかった。ずっと母だけが頼りでした。突然のことで驚きはしましたが、悲しみがいまいち湧いてこないというか…」

 

父の死を嘆くどころか、目の前の退職金に大喜びする息子に対し、由紀さんは複雑な気持ちを抱いている。

 

「息子が喜んでいることぐらいわかっています。でもね、夫は家庭のために頑張っていたし、ここまでお金に困らず生きてこれたのは全部夫のおかげです。20歳を超えて、そんなこともわからないのかしら」

 

どう嘆いたって和文さんは戻ってこない。今あるのは、家に残された数々の持ち物、金融資産、そして退職金だ。心持ちがどうのと息子に説教するよりは、資産をきちんと分けることが優先された。しかしここで、退職金に多大な相続税が発生すると税理士から伝えられる。

 

退職金に相続税がかかるの?と2人とも驚きを隠せなかった。説明を受け、由紀さんは納得したが、隆さんはありありと落胆の表情を見せていた。本来考えれば、プラスになる額が減っただけで、損はしていないのだが…。

 

ラッキーすぎやしませんか?
ラッキーすぎやしませんか?

退職金を「遺族」が受け取る場合の税務

1:死亡退職金には「相続税」がかかる

 

在職中に死亡したことによって、死亡した人(被相続人)に支給されるべきであった退職手当金や功労金、その他これらに準ずる給与を、勤務先から遺族(相続人)が受け取るケースがあります。この場合、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、“被相続人の相続財産”とみなされます。そのため、退職手当金等を受け取った相続人に対する「相続税」の課税対象になります。

 

この場合の退職手当金等は、受け取るものの名目に関わらず、実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品をいいます。したがって、金銭以外の現物で支給された場合も含まれます。また、「死亡後3年以内に支給が確定したもの」とは、次のとおりです。

 

① 死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

② 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

 

2:相続税が非課税となる退職手当金等について

 

勤務先から相続人に対して支給される退職手当金等は、そのすべてが相続税の課税対象となるわけではありません。死亡保険金と同様、「死亡退職金の非課税制度」があるため、その限度額までは相続税が課税されません。

 

一方、相続を放棄した人や相続権を失った人、および相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税制度の適用がありませんので注意してください。なお、非課税限度額は、次の算式で計算した金額となります。

 

「非課税限度額=500万円×法定相続人の数」

 

(注1)法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

(注2)法定相続人のなかに養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

退職金の「非課税限度額」はどうやって算出する?

3:相続税が課税される退職手当金等の計算方法

 

では、相続人の受け取った退職手当金等の合計金額が、非課税限度額を超えたらどうなるのでしょうか。この場合は、超過部分の金額と、相続人以外の人が受け取る退職手当金等の金額が、相続税の課税対象となります。

 

なお、非課税限度額は、相続人が受け取った退職手当金等の金額の割合で按分し、退職手当金等を受け取った相続額から控除します。たとえば、退職手当金等を由紀さんが2,000万円、隆さんが1,000万円受け取った場合、次のように計算されます。

 

① 非課税限度額の計算

500万円×3人=1,500万円

 

② 各人の非課税金額の計算

由紀さん:1,500万円×2,000万円/(2,000万円+1,000万円)=1,000万円

隆さん:1,500万円×1,000万円/(2,000万円+1,000万円)=500万円

 

③ 各人の課税対象となる金額

由紀さん:2,000万円ー1,000万円=1,000万円

隆さん:1,000万円ー500万円=500万円

 

4:弔慰金を受け取った場合

 

被相続人の死亡によって受け取る弔慰金や葬祭料等については、通常、相続税の課税対象にはなりません。しかし、弔慰金などの名目であっても、実質的に退職手当金等に該当すると認められるものは、相続税の課税対象となるので注意が必要です。

 

相続税が非課税となる弔慰金は、次のとおりです。

 

① 被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき

被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する金額

 

② 被相続人の死亡が業務上以外の死亡であるとき

被相続人の死亡当時の普通給与の6ヵ月分に相当する金額

 

これらを超える部分の金額については、退職手当金等に該当するものとして取り扱われます。このように、弔慰金の支払いがあった場合には、業務上の死亡か業務上以外の死亡かによって非課税となる金額が異なるため、注意しましょう。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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税理士法人レガート 代表社員・税理士

昭和34年1月生まれ。中央大学商学部卒。昭和58年6月税理士登録。
人と人とのつながりを大切にした「誠実な対応」「迅速な対応」「正確な対応」をモットーに、税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続申告業務において多数の実績を持つ。相続申告・贈与申告・譲渡申告等の関与件数は1,200件を超え、その経験を基に全国での講演活動や書籍などの執筆活動も行っている。

著者紹介

連載家族が集まる年末年始だから本気で考えたい!「相続」特集 ~2020

本記事は、『税理士法人レガート』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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