父の急死…「相続発生後」でも納税額を減らす方法はあるか?

本来なら被相続人の生前に行われるべき相続対策ですが、本人が健在の間に実行されることは少ないのが実情です。いざ相続が発生した場合、残された家族はまずどのような行動をとるのが正解なのでしょうか。今回は、相続が発生した後の相続税申告の手続き等について解説します。※本記事は税理士法人チェスター代表社員・荒巻善宏氏の書き下ろしによるものです。

「俺も1/4の権利があるから手続きよろしく」

父親(72歳)と母親(68歳)と同居していた長女の姫子さん(43歳)は、これまで元気だった父親の突然の死に、深く気を落としていました。悲しみに暮れるのも束の間、葬儀が終わった後、遠く離れて暮らす弟の浩二さん(38歳)から辛辣な言葉を投げかけられました。

 

弟「姉貴、親父の遺産相続、俺も1/4の権利があるから手続きよろしく。あと親父はそれなりに資産あるはずだし、相続税の申告の期限も、10ヵ月しかないみたいだから税理士さんに相談しておいてよ。まあ放蕩息子でも、もらえるものはもらっておかないとね」

 

POINT①相続税申告の要否の判断は、「基礎控除」が基準

相続税は遺産を相続するすべての人が払うものではなく、相続税法に定める基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)以上の遺産がある場合にのみ相続税申告が必要となる。

 

POINT②相続税申告は相続開始から10ヵ月以内が期限

相続税申告には期限があり、相続開始を知った日から10ヵ月以内に、税務署に申告書を提出し、納税まで済ませなければなりません。相続発生後は身辺が忙しくなり、10ヵ月はあっという間に過ぎてしまいます。早めに準備にとりかかりましょう。

 

弟の浩二さんは、もう10年以上も実家には顔を出しておらず、姉の姫子さんが両親と同居をしながら暮らしてきました。姫子さんとしては、同居して面倒を看ていながらも、実家にいることで経済的恩恵を受けてきた側面もあり、相続手続きは自分で行おうと思っていました。ただ、弟の協力もなく、いざはじめようとなると何から手をつければいいか分かりません。

 

手探りで相続についての情報をインターネットで調べていたところ、税理士も医者と同じく専門分野が分かれていることに気づきました。そして、相続税の分野を得意にする税理士が少ないということも。そこで姫子さんは実績豊富な相続税専門の税理士法人に、相続税申告の依頼をすることに決めました。

最も専門性が高い作業が各種財産の「相続税評価」

相続税申告は、以下大きく4つのステップで進められます。

 

<STEP1 必要資料の収集>

相続税申告にはたくさんの必要資料がありますが、その説明は税理士が丁寧にしてくれます。加算料金を支払えば、戸籍収集や銀行残高証明書の取得等も行ってくれますので、仕事等があり忙しい方は、有料対応をお願いすると事務手続きが楽になります。

 

<STEP2 財産の相続税評価>

各種財産の相続税評価は、相続税申告書作成の中で最も専門性が高い作業のひとつになります。特に不動産を保有している人は、土地の形状や権利関係等により、相続税評価額が大きく変わりますので、専門家の力が必要となります。この財産評価は税理士の専門領域ですので、すべてを任せましょう。

 

<STEP3 遺産分割案の決定>

遺産の相続税評価が終わると、財産の全体像や相続税の額が分かります。相続人が複数いる場合には、遺産をどのように分けるのか、相続人同士で話し合って決める必要があります。

 

この遺産分割案が決まらないと、相続税申告の特例適用の可否等にも関係してきます。ですので、相続税申告と同様に10ヵ月以内に分け方も決める必要があります。なお、遺言があり、その中に書かれた案を採用する場合は、遺産分割の話し合いの必要はありません。遺言通りの相続が行われます。

 

<STEP4 相続税申告書の作成と納付>

遺産の相続税評価が終わり、遺産分割案も決定すれば、後はその内容を相続税申告書に反映するだけです。相続税申告書は通常、税理士がソフトを使って作成します。また税務署への提出も税理士が行うことが通常です。

 

相続人は税理士が作成した相続税の納付書に従って、金融機関で納税します。相続税申告は、申告書の税務署への提出と相続税の納税が10ヵ月以内に行われてはじめて「期限内申告」として扱われますので、納税の期限にも注意しましょう。

 

できる限り相続税を「小さくする方法」を考える

相続税は故人が亡くなった日時の遺産について課税されます。原則的に相続が発生してから新しく行える節税対策はほとんどありません。しかし、できるだけ相続税の納税額を減らす方法として、次のようなものがあります。

 

<相続発生後からでも行える「納税額を減らす」方法>

・土地の減額要因を探す

・小規模宅地等の特例を上手く活用する

・葬儀関連の費用をノート等につけておく

・障害者控除、未成年者控除等をチェック

・1次2次相続のシミュレーションを実施する

・農地の納税猶予特例を検討する

・相続税専門の税理士に申告書の作成を依頼する

 

これらは、主体的に行動して相続税を減額させるのではなく、すでにある特例や控除等のルールをできるだけ活用して、相続税を小さくする方法といえます。

 

姫子さんは父親の相続税申告の依頼を、相続税専門の税理士にしたことで、すべての手続きを円滑に進めることができました。また、相続税の特例や控除も、現行法の中で漏れなく活用できたので、節税の面でも安心感です。

 

さらに不動産の名義変更(相続登記)についても提携の司法書士を紹介してもらい、申告と同時に手続きも円滑に進めることができたのです。もっとも遺産分割案を決める際に、弟の浩二さんと少し喧嘩をしてしまったので、遺言の作成を父親にお願いしておけばよかったと後悔しました。

 

POINT③不動産や金融機関の名義変更手続きは司法書士が対応

税理士は相続税申告を行いますが、相続した不動産の名義変更(相続登記)や金融機関の口座名義変更手続き等については、司法書士に相談するといいでしょう。遺産が相続税の基礎控除以下の場合には、相続税申告の手続きは発生せずに、司法書士への相談のみで済むケースが大半です。

 

【相続発生前からの準備が大切】

この記事では、主に相続が発生してからの相続税の話を中心にしてきました。本当に大切なのは、相続が起きる前に事前対策や準備をしっかり行うことです。相続が発生してしまうと、やはりできることは限られてしまいます。

 

例えば相続税対策として、「生前贈与」は有名でしょう。年間110万円以内の贈与であれば、税金を払わずに資産を移転することが可能となります。

 

お子さんが3人いれば、年間110万円×3人で合計330万円の資産を次の世代に無税で移転することができます。これが10年であれば3,300万円、30年であれば9,900万円となり、約1億円もの資産を無税で移転できるのです。やはり、早くからの対策が重要であるということが分かります。

 

もちろん相続税対策は大切ですが、「遺言」「家族信託」といった「揉めないための対策」もしっかり行っておきましょう。

 

税理士法人チェスター

代表社員 荒巻善宏

税理士法人チェスター・代表 税理士
公認会計士
行政書士
ファイナンシャルプランナー
証券外務員

2004年に公認会計士二次試験に合格。2008年に資産税・相続税専門の税理士法人チェスターを設立。現在は職員総数190名、全国に6拠点展開(三越前、新宿、横浜、大宮、名古屋、大阪)。年間1,000件(累計3,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、専門性の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案、事業承継コンサルティング等を行っている。

税理士法人チェスター(http://chester-tax.com)

著者紹介

連載家族が集まる年末年始だから本気で考えたい!「相続」特集 ~2020

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