本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

学生起業のノリで考えた「コインパーキング事業」

大学3年生のとき、学生起業のノリでコインパーキング事業を考えたことがあります。キャンパスは都心にあり、時代は平成バブル。クルマで学校に乗り付けたい学生が多いだろうと思い、学校近くの月極駐車場を借りたうえで、それを授業の時間割ベースでコマ割りして、学生向けに転貸しようと目論んだのです。

 

今から考えると無断転貸はいけないことですし、計画自体も杜撰だったので軌道にのるには至りませんでしたが、駐車場利用という価値を、時間で細分化(タイムシェアリング)することでそこに価値が生まれるんだ、という「気づき」はとても新鮮だったのです。タイムズやリパークのようなコインパーキングはもちろん存在していなかった30年前に、不動産の細分化、流動化事業は面白いと感じ、私が不動産業界に足を踏み入れるきっかけとなりました。

 

そのコインパーキングですが、バブル崩壊後に消去法的な土地活用として普及したという側面があります。地上げが頓挫したことで出来た虫食いの土地の活用策だったのです。そのため、景気回復とともにそれらの土地は本来の最有効利用価値(ビル建設など)に転用されると考えられ、コインパーキング事業はいずれ頭打ちになるだろうと言われていました。

 

私がいた会社でも、新規事業としてコインパーキングを始める際、この事業の将来性を疑問視されていたものですが、今や、街なかにはコインパーキングがあふれ、その会社でも事業の柱になるまでに成長しています。さらには、自宅の空き駐車スペースを貸すサービスや、コインパーキングの空中部分を飲食店に活用するビジネスも出てくるなど、駐車場は次の展開さえも期待されている状況です。

事業用定期借地権の登場で「コンビニ」が広くなった!?

学生時代から変わった景色というとコンビニエンスストアもあげられるでしょう。すっかり我々の生活の一部となったコンビニですが、昔はいろいろなブランドチェーンがありました。店舗も酒屋や小売店からの業態変更が中心だったためか、店内は狭く、どちらかというと暗い印象さえありました。また、従前の免許制に引きずられ、店舗によってタバコを買えなかったり、お酒が買えなかったりということがあったため、セブンイレブンがいいとかファミリーマートがいいという以前に、買い物に行くコンビニは限定されてしまっていたのです。

 

今はというと、ATM設置は言うまでもなく、トイレは男女別になり、イートインスペースが併設されるなど、とても快適になっています。郊外ではガソリンスタンドやコーヒーショップとの複合施設になっていたりもして、全体的に店舗面積は広くなっています。ローソンのホームページでは出店ガイドラインとして、土地面積120坪以上店舗面積60坪以上(路面店舗)となっており、昨今のさまざまなメニュー、サービスを網羅するためには、やはり一定の広さは必要とされる時代なのでしょう。

 

コンビニが広くなったのは、事業用定期借地権の創設が大きな役割をなしていると考えています。遊休地のオーナーがその活用として、コンビニに土地を賃貸するという選択肢をとりやすくなったからです。住宅地でも割と広めのコンビニが増えてきたのもそのためかと考えています。

 

コインパーキングの賃貸借契約は、借地借家法が適用されないために、オーナーは土地を自己使用したくなったときに解約しやすいというメリットがあります。一方、建物所有を目的とする賃貸借契約では借地借家法の適用を受けるために、コンビニやファミリーレストランなどの事業用に土地を供出すると、結果、将来にわたって借主が過度に保護されてしまい、オーナーの自己使用に制限がでてくることになります。ここで事業用定期借地権の登場は、一定期間で土地賃貸借が終了することを約束し、最短10年と短くはないものの、将来の自己使用や次世代への資産承継を考える土地所有者にとって好都合なのです。

 

さて、コンビニエンスストアは、そのドミナント戦略もあってか、さすがに飽和状態のように思います。ドラッグストアとの垣根もなくなってきました。コインパーキングも立地や地型(間口や駐車スペースの配置)によっては土地賃料が伸びず、経済性が低くなるケースも出てきます。

 

おりしも2022年の生産緑地終了問題がフォーカスされ、市中に遊休地が増えてくると予想されています。今後、街の景色はどう変わっていくのでしょうか、そして土地所有者にとって一番有効な選択とは何でしょうか。

「リースホールド住宅」(定期借地権付戸建分譲)とは

期限の定めがある土地賃貸借の形として、定期借地権が誕生し、すでに25年が経過していますが、一宅地のロットが商業地や工業地に比べ小さくなる一般住宅地においては、定期借地権として活用される例は多くないのが現状です。その要因として、土地所有者が受領する地代収入の低さ、借地権設定時の対価である権利金を受領した際の過度な課税負担があったことがあげられます。

 

ただ後者の課税負担が解消された今、低未利用地の有効利用を考える土地所有者と、都心でリーズナブルに戸建取得をしたいと願う潜在的な買手を、定期借地権の制度でつなげるべく、定期借地権付分譲戸建事業であるリースホールド住宅事業を設計していきます。

 

日本の借地権と類似した権利形態を英語で表現すると「リースホールド」となり、所有権は「フリーホールド」となるそうです。国によっては、土地利用において所有権、つまり未来永劫所有できるという「フリーホールド」自体認められておらず、「リースホールド」のみしか存在できないケースも多くなっています。

 

ただ、「リースホールド」といっても、期間99年とほぼ所有権に近くなっていたり、その期間が終了したら「フリーホールド」に転換できるものもあって、、日本でイメージされる借地権よりも、「リースホールド」は所有権に近いイメージであるようです。それぞれの国の歴史や文化が反映して成り立っているのでしょう。

 

本記事では定期借地権を活用した戸建分譲事業を提案するものであることから「リースホールド住宅」と命名することにしました。

 

いわゆる定借マンション(定期借地権付分譲マンション)の供給実績が増えるにしたがい、定期借地権という考え方はだいぶ浸透してきました。事業用定期借地の活用によるコンビニエンスストア出店増なども一因としてあるでしょう。一定のスケールがある土地、たとえばマンション分譲用地やロードサイド店舗事業用地であれば、10年、20年といった比較的短いタームで定期借地権を設定できますし、土地の利用価値から算定される地代も比較的高額になり、土地所有者にとって経済性があるものになるからです。

 

一方、一般住宅地における戸建用地として、定期借地が活用されているとは言い難い状況にあります。事業用定期借地と異なり、期間が50年以上であるため、自身の世代での当該土地利用はほぼ見込めず、また超長期にわたり、土地を利用できないことの対価としては、受け取る地代が低く、経済的なバランスが悪いことが原因と考えられます。土地所有者はさしあたってコインパーキング事業者に賃貸しておけば、自己都合による中途解約もでき、都合がいい運用ができるのです。

 

また、閑静な住宅街など、コインパーキングにも適さない立地に土地を所有していると、2015年から課税対象範囲が拡大した相続税対策に頭を悩ますことになります。おおよそ都心部に土地を保有していると相続税がかかるようになったと言われているくらいで、さらにはその土地が居住用として使われていない状態であれば、さらに税負担が重くなる構造です。

 

ここで相続税の回避を意識するあまり、賃貸需要の裏付けがないまま、アパート建設をテコにした節税策を採用してしまうと、多額のローン借入と難しいアパート経営に長年縛られてしまうことになります。特に郊外ではアパート供給過剰によって空室物件が増えてしまう結果となり、社会問題にまで発展しています。

土地所有者の税負担を大幅に軽減することができる

現在、低未利用地の土地所有者にとって、「自己使用の予定はないが、先祖代々の土地は売却できない」「土地資産を次世代へ引き継いでいきたい」という人は相当に多いと思われます。その土地所有者に対し、借地利用を希望する人が魅力的な対価を提示できれば、定期借地としての運用は選択肢にはいってくるでしょう。

 

しかし、これまではなかなかそれが叶わなかったのです。たとえば、借地権設定時に権利金としてまとまった金額を授受してしまうと、権利金に対して多額の所得税が課税されることとなり、土地所有者は手取り額を大きく削られることとなってしまい不合理だったのです。

 

ちなみに、保証金として支払うことであれば、所得税の負担はありませんが、保証金は返さなくてはいけない長期の債務のため、土地所有者が自由に使えるものでもありません。

 

ここで2005年に国税庁が国土交通省の照会に回答する形で次の整理がなされました。定期借地権設定における、まとまった金額の授受は、契約様式など一定の要件のもとであれば、「権利金」ではなく、「地代の50年一括前払い」とみなして税務処理してよいことになりました。つまり、権利金を受け取る土地所有者の税負担を大幅に軽減することができるようになったのです。同時に借地人も「権利金」ではなく、「地代の50年一括前払い」であれば、支払地代を毎年の費用として計上することが可能になり、収支を組み立てやすくなったのです。

 

この税制の変更(正確には通達)は、住宅地の定期借地としての活用において、大きなインパクトをあたえることになるはずです。事業モデルをわかりやすく組み立てることによって、「リースホールド住宅」(定期借地権付戸建分譲)の供給を推進していきます(厳密には、転・定期借地権付戸建となりますが、本記事では定期借地権付戸建として表現します)。

 

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本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

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