「自分は役に立つ存在なんだ」と自信を持たせる
子どもをほめるとき、 子どもの役に立つほめ方とそうでないほめ方の2通りがあります。
①「○○ちゃん、お手伝いできてえらいね」
②「○○くん、この絵上手に描けてるね」
③「100点とったの? よくやったね」
どれも日常よく使うほめ言葉ですね。ほめられているので、子どもも悪い気はしません。でも、これらのほめ方をもう少し工夫してみると、子どもがほめられることを目的に行動するのではなく、自発的に行動できるようになるのです。
心理学では、上記のような言葉はすべて「You(あなた)メッセージ」と呼んでいます。 つまり「あなた」が主語の表現であり、「あなたは○○だ」ということを親が決めつけているメッセージだというのです。
しかも、①②の「えらいね」「上手だね」という言葉のなかには、上の者が下の者を評価している意味が含まれ、そこに暗黙の上下関係ができあがります。子どもを一人の人間として、対等な立場に立った対応をすることが、子どもにとって本当は嬉しい対応なのです。
③についていえば、ほめる内容が過程ではなく、結果であることも問題となります。つまり、「100点をとれるまで努力した」ことをほめるのではなくて、「100点をとった」という結果に焦点があたってしまっているのです。そうすると子どもは、「次に100点とれなかったら、どうなるのだろう」と考えてしまいます。
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さて、ではこれらの表現をどのように変えたら、子どもの自発性を促すような、役に立つほめ言葉になるのでしょうか?
その「役に立つほめ方」が、心理学で「I(わたし)メッセージ」と呼ばれているものです。つまり「私」が主語の表現で、「お母さんはこう感じたよ」という気持ちをそのまま飾らずにストレートに伝える表現方法です。
例えば、上記の表現は次のようなほめ言葉に置き換えられるでしょう。
①「○○ちゃんがお手伝いしてくれたから、お母さんとっても助かったわ。ありがとう!」
②「○○くんが描いたこの絵は、木の幹や枝のところがとても細かく描けてるね! お母さんは、この絵がとっても好きだな」
③「毎日ちゃんと練習していたから100点がとれたんだね! お母さんは○○ちゃんが、それだけ努力したことが嬉しいな」
子どもは、いつでも親に喜んでほしい、助けてあげたい、役に立ちたいと思っています。 その気持ちに応える「Iメッセージ」を伝えることで、子どもは「自分は役に立つ存在なんだ」という自信を持つことができ、心からやりたいと思える自発的、自律的な行動に変わっていくことでしょう。
子どもの行動を変える「効果的な叱り方」とは?
ほめることや感謝の気持ちを表すことは、日頃意識して口にすることでできそうですが、注意したり叱ったりするとなると、親としても感情が高ぶってしまうこともあり、つい「ダメ!」とか「〜しなさい!」という言葉が咄嗟に出てしまいがちです。
一体どう叱ったらいいのか分からない、叱っているのに全くその行動が改善されず、いつも同じことを繰り返してしまう、というケースもあるでしょう。
普段、子どもに注意をするときや叱るとき、どのような言葉を使っているでしょうか?
例えば、2〜3歳の幼児が調理中の台所に入ってきて調理器具などを触ろうとしたとき、
①「危ないから、お母さんがお料理している時は台所に入らないで! 向こうに行っててちょうだい!」
子どもが友達を叩いているところを目撃したとき、
②「お友達を叩いちゃいけないでしょ! 謝りなさい!」
子どもが遊び終わった玩具を出しっぱなしにして片付けようとしないとき、
③「片付けなさい! どうしてあなたはそうだらしないの!」
こんな叱り方をしてはいないでしょうか?
どれも日常使ってしまいそうな言葉ですね。ほめ方のなかでも紹介しましたが、上記のような言葉はすべて「あなた」を主語とする表現の「You(あなた)メッセージ」です。
「あなたはあっちへ行ってなさい」
「あなたが叩いたことはよくない」
「あなたはだらしない」
これらはすべて相手のことや行動を審判している言葉ですから、いくら相手が子どもであっても、相手は不快な気持ちになるのです。
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それでは、どのような表現にして子どもに伝えるのがいいのでしょうか?
ほめ方でも使った「Iメッセージ」、つまり「私」が主語の表現で「お母さんはこう感じたよ」という表現方法に変えて心情を伝えるのです。なお、このときの感情では「怒り」を出してはいけません。
感情を素直に出すというのは、あくまでも第一感情のことであり、
「心配だ」 「大変だ」 「悲しい」 「困る」
というような出来事に対して、真っ先に出た感情のことを指します。
「怒り」の感情というのは、その第一感情のあとに現れる第二感情であり、出来事やその影響に対する受け取り方によって発生するものです。子どもは、親が困っているときには助けてあげたいと思っているものです。
素直に感じたままの第一感情を「Iメッセージ」で伝えることで、その場限りではなく、子ども自らが自発的に行動を変えようとするようになるでしょう。
大坪 信之
株式会社コペル 代表取締役