子どもは本来、学ぶことが大好きです。好奇心旺盛な幼児期に、適切な教育を受けさせることが重要となります。本連載では、25年前から幼児教育に取り組んでいる株式会社コペル・代表取締役の大坪信之氏が、子どもに「学ぶことの楽しさ」を教える方法を解説します。本記事では、「ダメ意識」を抱かせない子育て術を解説します。

「ダメ意識」があると、無限の可能性の扉は開かない

日本の犬は概してキャンキャン、ワンワンと鳴くのが通例ですが、ヨーロッパの犬はほとんど鳴かないそうです。ところが、ヨーロッパの犬でも日本で生まれ育つと、キャンキャン、ワンワン鳴くそうです。これはなぜでしょうか?

 

日本のペットショップで売られている犬は生後すぐに親犬から離して育てられるので、親のしつけを受けていません。対してヨーロッパのペットショップでは、最低2ヵ月は親犬と一緒に育てます。そしてその間、親犬は子犬をしつけるそうです。

 

これは犬の話ですが、家庭教育の大事さを再認識しました。人間の場合は、14、15歳で自我が完成しますから、それまでの子育てはとても大切です。

 

動物には「すり込み」期間という特別な時期があります。オーストリアのローレンツ教授は、この現象をハイイロガンのひなを使って発見し、ノーベル賞を受賞しました。

 

教授は、生まれたばかりのガンのひなに呼びかけ、誘導するという実験を行いました。すると、ひなは人間を親と思ってあとを追うようになります。この行動が定着すると、親のガンのあとにはもうついていかなくなってしまいます。

 

この事実は、他の動物たちにも当てはまります。ある一定期間に脳にすり込まれた行動や考え方、習慣を変えることはとても難しいという事実を表しています。これは、子育てにおいても決して忘れてはならない重要な現象です。

 

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高校生を対象に行われた、国立青少年教育振興機構の調査によると、「自分はダメな人間だと思うことがある」の問いに対して「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答したのは全体の70%を超えました。長い人生がスタートしたばかりなのに、半分以上の子どもたちが「ダメ意識」を潜在意識のなかに持ってしまっていることになります。

 

「ダメ意識」が心にあると、自信がなくなっていき、無限の可能性の扉は開きません。子どもの頃のデリケートな心に悪いイメージをすり込まないことはとても重要です。認めてほめて愛して、心から子どもを信じていくような良いすり込みが行われると、子どもにとっても、もっとも大切なものである自己評価が高くなり、自信・やる気・積極性・行動力・忍耐力が育ってきます。

 

デリケートな心に悪いイメージをすり込まないことが重要
デリケートな心に悪いイメージをすり込まないことが重要

子どもの生きる意欲を引き出す「ストローク」

子どもの生きる意欲を引き出す方法の1つに「ストローク」というものがあります。エリック・バーン氏によって提唱された、交流分析心理学のなかのコミュニケーション理論です。

 

ストロークは、撫でる、抱きしめる、ほめるなど、人との触れ合いや愛情によって得られる様々な刺激のことを指し、その人の存在や価値を認める、もしくは否定するための言動や働きかけのことをいいます。わたしたちが心身共に健やかに生きて行く上で必要不可欠なもので、「心の栄養物」ともいえるものなのです。

 

ストロークは相手に幸福感と喜びを与え、自らの存在に意味を感じさせる「肯定的ストローク(プラスストローク)」と、不愉快で、ゆううつな気分にさせ、自信を失わせる「否定的ストローク(マイナスストローク)」という、大きく2つに分類されます。

 

相手の行為・行動に対して与えられるストロークを「条件付きストローク」といい、相手の人格や存在に対して与えられる「無条件のストローク」と分けて考えます。「条件付きストローク」というのは、「部屋の片づけをできたからほめる」「言いつけを守ったから抱きしめる」などと、何らかの条件を満たしたら与えるものです。

 

条件付きの肯定的ストロークは、親が子どもをコントロールしようとするときなどにも、よく使われるものです。しかし、この条件付きストロークばかり与えられて育った子どもは、自分の存在価値に自信がもてなくなり、自分を好きになることができない子になりがちです。また、条件付きストロークばかりを与えられて育つと、最後には反抗的になる可能性もあります。これは親のものさし(価値尺度)に対する反発です。

 

無条件ストロークは、「あなたが大好きよ」「あなたがいるだけで、私は幸せよ」という言葉をかけたり、いつもやさしく微笑みかける、いつも挨拶の言葉をかける、相手の話をさえぎらずに聴くなど、無条件で愛情を示す行為であり、相手の人格と存在そのものに与えられるものです。この無条件の肯定的ストロークこそ、子どもの自己重要感を育て、子どもの成長を促し、子どもの生きる意欲を引き出すのです。

 

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親が子どもに対して行うストロークは、子どもの成長に大きく影響を与えます。プラスのストロークを多く受けて可愛がられた子どもは、能力的に高く、性格的にも良い子になり、逆にマイナスのストロークを多く受けた子どもは、能力・性格面で劣ってしまうといいます。

 

子どもたちは肯定的なストロークを得るために生きているといっても過言ではないでしょう。子どもは、親から充分な肯定的ストロークがもらえないと、あえて叱られるような問題を起こして、否定的ストロークでもよいから、もらおうとします。否定的なストロークはなるべく控え、肯定的なストロークを与えるようにしましょう。

 

そして、プラスのストロークを欲するのは、大人になっても同じです。あなたの周りの人々にも、無条件のプラスストロークをたくさんあげましょう。

 

 

大坪 信之

株式会社コペル 代表取締役

 

本連載は、株式会社コペルが運営するウェブサイト「コペル」の記事を転載・再編集したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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