東証REIT指数…好調な値動きの裏で投資額23%減の理由

今回は、2019年第1四半期(2019年1~3月)の投資市場動向をまとめたレポートから抜粋し、J-RITEの最新動向を見ていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

J-REITの投資スタンスは質の向上に軸足

■投資額は減少、スポンサーのパイプライン取引は7割に

今期(Q1)の既存J-REITによる公募増資(払込ベース)は、件数が前年同期の半分の7件、調達額は前年同期比23%減の176億円となった。

 

東証REIT指数は年初から8%上昇と上昇基調を維持している。しかし、不動産投資市場においてはJ-REITの投資基準を満たす物件が少なく、取引価格も高止まりしており、物件取得が難しい環境にある。スポンサーのパイプラインを活用した取引が投資額の70%と高い水準を維持していることも、市場での物件取得の困難さを物語っていると言えよう。そのため、公募増資を伴う物件取得による資産規模の拡大よりも、ポートフォリオの質の向上に注力するJ-REITが増えていると考えられる。実際、今期は物件取得を行う際に、将来の競争力低下が懸念される物件の売却を行う事例が見られた。その結果、J-REITによる今期の売却額は822億円と、前年同期比で73%増加した。

 

このように、J-REITの投資スタンスが資産規模の拡大よりもポートフォリオの質を高めることにウエイトを置いたとみられる結果、今期J-REITが発表した不動産投資(IPOによる取得を除く全取引)については、件数は前年同期の152件から36%減の98件、投資額は同32%減の4,522億円となった。

 

J-REITの取得をアセットタイプ別に見ると、前年同期に比べて最も投資額が減少したのが物流施設で、1,759億円減(59.8%減)の1,181億円。次いで減少額が大きかったのは住宅で、587億円減(62%減)の360億円だった。両アセットタイプについては、前年同期に公募増資を行ってポートフォリオを取得する事例が相次ぎ、調査開始以来最大の投資額となったが、今期はその反動で減少した。一方で、投資額が増加したアセットタイプはホテルで、前年同期比69.4%増の994億円。ジャパン・ホテル・リート(JHR)が「ヒルトン東京お台場」(東京都港区)を624億円で取得したことが、ホテル投資額を押し上げた。

 

地域別に見ても、上記のJHRによる大型ホテル取引があった東京主要5区と、スポンサーのパイプライン取引の多かった東京18区の投資額が前年に比べて増加した。一方、その他の首都圏、大阪、名古屋、地方都市はすべて対前年同期比で減少した。取得額が対前年同期比29.9%増加した主要5区については、売却額も同108.7%増加の3,317億円に達しており、取得と同時に築年数が経過したビルを売却する動きが複数みられた。

 

[図表1]: J REIT アセットタイプ別取得比率※IPO 時の取得物件を除く(出所:CBRE、Q1 2019)
[図表1]: J REIT アセットタイプ別取得比率※IPO
時の取得物件を除く(出所:CBRE、Q1 2019)

 

[図表2]主要不動産売買事例(取引金額順、 Q1 2019)※1 契約月、発表・報道月を含む ※2 取引金額は概算、推定、鑑定、資産総額を含む(出所:RCA、CBRE、Q1 2019)
[図表2]主要不動産売買事例(取引金額順、 Q1 2019)※1 契約月、発表・報道月を含む ※2 取引金額は概算、推定、鑑定、資産総額を含む(出所:RCA、CBRE、Q1 2019)

 

■東京の期待利回りはオフィスを含む4アセットタイプで最低値を更新

CBREが四半期ごとに実施している「不動産投資に関するアンケート‐期待利回り(2019年4月時点)」によれば、東京の期待利回り(NOIベース)の平均値は、前期から横ばいとなった商業施設とマンション(ワンルーム)を除く、オフィスなどの4アセットタイプで低下し、最低値を更新。また、地方都市のオフィス期待利回りも4都市(大阪、名古屋、仙台、福岡)で最低値を更新した。今期は利回りが前期より低下したと考えられる事例は見られなかったものの、期待利回りの低下は、投資家の買い意欲が以前として高いことを物語っている。

 

[図表3]期待利回り(NOIベース) の推移※下限値(中央値)と上限値(中央値)の平均(出所:CBRE、Q1 2019)
[図表3]期待利回り(NOIベース) の推移※下限値(中央値)と上限値(中央値)の平均(出所:CBRE、Q1 2019)

融資は厳しくも投資意欲は衰えず

■資金調達環境の悪化や投資意欲の減退は見られない

2019年4月時点の東京Aクラスビルを対象としたCBRE短観(DI)は、すべての項目で悪化。悪化幅がもっとも大きかったのは「金融機関の貸出態度」DI(対前期比8ポイント減)で、「さほど厳しくない」の回答率増加が要因。他の項目については「変わらない」の回答率増加が要因だった。一方、物流施設(首都圏、マルチテナント型)においては、「賃料」「空室率」「期待利回り」の3項目のDIが前期から改善、残り4項目が悪化した。悪化幅がもっとも大きかったのは「投融資取り組みスタンス」DI(同12ポイント減)で、「現状を維持」の回答率が8ポイント増加したことが要因。オフィスでDIが悪化した「金融機関の貸出態度」については同6ポイント減少。「さほど厳しくない」の回答率増加が要因。両アセット共に「厳しい」の回答はなく、資金調達環境が変調する兆候は見られない。総じて今期も投資意欲の大きな減退は見られなかった。

 

[図表4]CBRE短観調査※東京Aクラスビル(出所:CBRE、Q1 2019)
[図表4]CBRE短観調査※東京Aクラスビル(出所:CBRE、Q1 2019)

 

[図表5]CBRE短観調査※首都圏マルチテナント型物流施設(出所:CBRE、Q1 2019)

[図表5]CBRE短観調査※首都圏マルチテナント型物流施設(出所:CBRE、Q1 2019)

 

 

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写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。今回の取り上げたレポートはこちら
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