国内事業用不動産投資額が前年比30%減、その理由は?

今回は、2019年第1四半期(2019年1~3月)の投資市場動向をまとめたレポートから抜粋し、国内の事業用不動産マーケットの最新動向を見ていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

事業用不動産への投資は2013年以降最低に

*1 投資額は 10 億円以上が対象 、 土地取引 および J -REIT の IPO 時の取得物件は除く *2 期待利回りは投資家に対するアンケートに基づく。 NOI ベース 、 上限と下限の平均値 。 調査開始年は 、 2003 年 7 月オフィス ・ 賃貸マンション 、2009年 1 月商業施設 ・ ホテル ・ 物流施設 * 3 CBRE 短観 DI=Diffusion Index は改善すると答えた回答者の割合 から 、 悪化すると答えた回答者の割合 を引いた指数 。 カッコ内の数値は対前期比 。 単位はポイント (出所:CBRE、Q1 2019)
[図表1]最新動向
*1 投資額は 10 億円以上が対象 、 土地取引 および J -REIT の IPO 時の取得物件は除く
*2 期待利回りは投資家に対するアンケートに基づく。 NOI ベース 、 上限と下限の平均値 。 調査開始年は 、 2003 年 7 月オフィス ・ 賃貸マンション 、2009年 1 月商業施設 ・ ホテル ・ 物流施設
*3 CBRE 短観 DI=Diffusion Index は改善すると答えた回答者の割合 から 、 悪化すると答えた回答者の割合 を引いた指数 。 カッコ内の数値は対前期比 。 単位はポイント
(出所:CBRE、Q1 2019)

 

■2019年Q1投資額は対前年同期比30%減の7,610億円、全投資主体で投資額が減少

今期(Q1)の事業用不動産の投資額(10億円以上が対象、土地取引およびJ-REITのIPO時の取得物件は除く)は対前年同期比30%減の7,610億円、Q1の投資額としては2013年以降で最低だった。投資主体別投資額においてもすべての投資家が前年同期より減少。J-REITの減少額がもっとも大きかった。市場での売り物件が少ないなか、J-REITはスポンサーのパイプラインを活用した取引が引き続き主体となっている。また、今期はポートフォリオの質の改善を目的とした買い替えが多く、公募増資による取得が大幅に減少したことが投資額減少の背景にあると考えられる。

 

[図表2]主要不動産取引(投資主体別取引額) ※10億円 以上の取引を対象 J REIT による IPO 時の取得物件を除く(出所:CBRE、Q1 2019)
[図表2]主要不動産取引(投資主体別取引額)
※10億円 以上の取引を対象 J REIT による IPO 時の取得物件を除く(出所:CBRE、Q1 2019)

 

10 億円以上の取引を対象 J REIT による IPO 時の取得物件を除く 出所 : RCA, CBRE, Q1 2019
[図表3]地域別不動産取得比率※10億円以上の取引を対象 J REIT による IPO 時の取得物件を除く(出所:RCA、CBRE、Q1 2019)

 

■東京の期待利回りはオフィスを含む4アセットタイプで最低値を更新

CBREが四半期ごとに実施している「不動産投資に関するアンケート‐期待利回り(2019年4月時点)」によれば、東京の期待利回り(NOIベース)の平均値は、前期から横ばいとなった商業施設とマンション(ワンルーム)を除く、オフィスなどの4アセットタイプで低下し、最低値を更新。また、地方都市のオフィス期待利回りも4都市(大阪、名古屋、仙台、福岡)で最低値を更新した。

 

[図表4]期待利回り※期待利回りは投資家に対するアンケートに基づく。NOIベース、上限と下限の平均値。調査開始年は2003年7月オフィス・賃貸マンション、2009 年1月商業施設・ホテル・物流施設(出所:CBRE, Q1 2019)
[図表4]期待利回り※期待利回りは投資家に対するアンケートに基づく。NOIベース、上限と下限の平均値。調査開始年は2003年7月オフィス・賃貸マンション、2009 年1月商業施設・ホテル・物流施設(出所:CBRE, Q1 2019)

 

投資家の「物件の選別眼」はさらに厳しく

■資金調達環境の悪化や投資意欲の減退は見られない

2019年4月時点の東京Aクラスビルを対象としたCBRE短観(DI)は、すべての項目で悪化。悪化幅がもっとも大きかったのは「金融機関の貸出態度」DI(対前期比8ポイント減)で、「さほど厳しくない」の回答率増加が要因。他の項目については「変わらない」の回答率増加が要因だった。一方、物流施設(首都圏、マルチテナント型)においては、「賃料」「空室率」「期待利回り」の3項目のDIが前期から改善、残り4項目が悪化した。悪化幅がもっとも大きかったのは「投融資取り組みスタンス」DI(同12ポイント減)で、「現状を維持」の回答率が8ポイント増加したことが要因。

 

[図表5]CBRE短観( DI=Diffusion Index )※改善すると答えた回答者の割合(%)から、悪化すると答えた回答者の割合 (%)を引いた指数。期待利回り DI は、低下すると答えた回答者の割合(%)から、上昇すると答えた回答者の割合 (%)を引いた指数(出所:CBRE、Q1 2019)
[図表5]CBRE短観( DI=Diffusion Index )※改善すると答えた回答者の割合(%)から、悪化すると答えた回答者の割合 (%)を引いた指数。期待利回り
DI は、低下すると答えた回答者の割合(%)から、上昇すると答えた回答者の割合 (%)を引いた指数(出所:CBRE、Q1 2019)

■投資姿勢はより選別的に

CBREが2019年1月に実施した投資家意識調査によれば、投資意欲は2018年と比べて衰えていないことがわかった。また、今期の期待利回りやCBRE短観を見ても、Q1に投資意欲が衰えたとは考えにくい。しかし、物件が少なく、不動産価格が高止まりしていることに加えて、世界経済に対する懸念が高まっていることから、投資家はより選別的になっている。同調査結果によると2019年の売却意欲は前年よりやや減退した。タイトな需給バランスが続くことにより投資額は伸び悩む可能性がある。

 

■投資額減少は前年同期からの反動減も一因

今期(Q1)の投資額が減少した一因は、投資額が伸長した前年同期からの反動減もある。前年同期はJ-REITが2005年の調査開始以来最大を記録し、他の国内投資家による1,000億円を超える大型案件があるなど投資額は大きく伸長した。一方、今期は100億円を下回る中小型案件の減少が目立ち、大型案件の取引も少数にとどまった。

 

■商業施設とホテルで投資額が増加

アセットタイプ別投資額は、商業施設が1,190億円で対前年同期比93%増加、次いで多かったホテルは1,170億円で同70%増加した。いずれのアセットタイプもJ-REITを含む国内投資家がけん引した。一方、地域別では全地域分類で投資額は減少。減少幅がもっとも大きかったのは首都圏(同42%減)、次いで地方都市(同40%減)だった。どちらの地域もJ-REITによる物流施設の投資額減少が主因だった。

 

 

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CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。今回の取り上げたレポートはこちら
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