2019年、日本の投資家が好む不動産投資のカタチとは?

前回に続き、不動産投資家の投資戦略の動向を調査する「投資家意識調査」の最新版から一部抜粋し、日本の投資家が不動産投資に対してどのような志向性を持っているか、見ていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

「価格」と「案件数」が取得の障壁に

■不動産を取得する際の最大の障害

日本の投資家にとって取得の際の障害は「資産価格」(44%)と「投資案件の少なさ」(42%)だった。投資家は現状の不動産価格に割高感を感じているようだ。しかし同時に、不動産価格は今後も上昇する可能性があるとも考えている。東京の大型オフィス不動産価格について、投資家の57%が、現状の価格は上昇局面である「好況期」にあると回答しており、既に「ピーク」にあるとした投資家の割合(42%)を上回った。

 

[図表1]不動産取得する際の最大の障害(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2018, 2019)
[図表1]不動産取得する際の最大の障害(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2018, 2019)

 

■今後も豊富な資金が不動産投資に流入

CBREの推計によると、アジア太平洋地域でクローズドエンドファンドが今後5年間に投資する予定の資金(いわゆる「ドライパウダー」)は600億ドル(約7兆円)以上に上る。そのうちおよそ60億ドル(約7,000億円)は今後2年間で投資されると推定される。資金はアジアの先進国を中心に投資される見込みで、日本にも一定規模の資金が流入すると考えられる。厳しい取得競争は今後も続くだろう。

 

[図表2]マーケットポジション東京の大型オフィス不動産価格/2018年10月時点(出所:CBRE Cap Rate Survey2018年10月)
[図表2]マーケットポジション東京の大型オフィス不動産価格/2018年10月時点(出所:CBRE Cap Rate Survey2018年10月)

 

安定志向が強まっている日本の投資家

■日本の投資家は「安定した収益」を重視

日本の投資家が不動産に投資する理由としてもっとも多かったのは「安定した収益」(43%)。一方で、「より高いキャピタルゲインを期待できる」と回答した投資家は8%にとどまった。マーケットサイクルが終盤に近いとみられる中、現在の価格水準に対して投資家が慎重になっていることを示唆している。

 

[図表3]不動産投資を行なう理由(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)
[図表3]不動産投資を行なう理由(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)
 

高い利回りを追求する投資家が増加傾向

■魅力的な投資戦略は「プライムまたはコア」

日本の投資家が選んだ投資戦略としてもっとも多かったのは「プライムまたはコア」(35%)で、次いで多かったのは「コアプラス/優良なセカンダリー」(29%)だった。ただし、「プライムまたはコア」は前回調査から10ポイント低下、他の投資戦略はいずれも回答率が増加し、投資家の好みは分散した。

 

■取得意欲旺盛な投資家は「コアプラス/優良なセカンダリー」に注目

「2019年の取得額が昨年より増加する」と回答した投資家が選んだ投資戦略でもっとも多かったのは、「コアプラス/優良なセカンダリー」(35%)で、次いで「オポチュニスティック(開発リスクを含む)」(27%)が多かった。

 

機関投資家の資金が不動産市場に流入し、長期運用を目的とした投資家が増加する傾向は2019年も変わらないだろう。しかし、投資家が選んだ投資戦略は分散する結果となった。より高い利回りを追求する投資家の姿勢がうかがえる。

 

[図表4]もっとも魅力的な投資戦略(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2017, 2018, 2019)
[図表4]もっとも魅力的な投資戦略(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2017, 2018, 2019)

 

投資家が魅力を感じているアセットタイプは?

■オフィスがもっとも魅力的なアセットタイプ

日本の投資家が選んだアセットタイプは、オフィスがもっとも多く(50%)、回答率は前回調査に比べて増加した。投資家はマーケットが変調しても出口戦略を描きやすい伝統的なアセットタイプに注目しているようだ。世界経済の見通しに対する不透明感が増していることの表れと考えられる。

 

■住宅・ホテルに対する投資家の見方は変化

住宅が魅力的だと回答した投資家は10%で、前回の17%から7ポイント低下した。収益の安定性が評価されているとはいえ、1件単位の価格規模は小さく、利回りは低下傾向にある。高い利回りを求める投資家にとって投資妙味がやや低下したことが要因と考えられる。

 

また、ホテルが魅力的だと回答した投資家は21%で、前回より4ポイント低下した。さらに、「2019年の取得額が昨年より増加する」と回答した投資家でホテルを選んだ割合は12%と、全体の結果(21%)より9ポイント低かった。堅調なインバウンド需要には変化はみられないが、大量供給による需給緩和への懸念が背景と考えられる。

 

[図表5]もっとも魅力的なアセットタイプ(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2017, 2018, 2019)
[図表5]もっとも魅力的なアセットタイプ(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2017, 2018, 2019)

 

アウトバウンド投資への意欲も引き続き旺盛

■アウトバウンド投資はデベロッパーがけん引

アウトバウンド投資を「行っている」、もしくは「検討中」と回答した投資家の属性別割合は、デベロッパーがもっとも高く、全体の40%を占めた。資産運用会社は24%と2番目に多く、次いで機関投資家が12%を占めた。

 

[図表6]アウトバウンド投資家の属性(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)
[図表6]アウトバウンド投資家の属性(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)

 

■投資意欲は旺盛も、選別姿勢

アウトバウンド投資に対する意欲は引き続き旺盛だ。アウトバウンド投資を「行なっている」と回答した投資家の中で、投資額を昨年より増やすと回答した投資家は全体の52%。投資額を「減らす」と回答した投資家はいなかった。とはいえ、昨年より選別的に投資すると回答した投資家は48%に上った。世界経済の見通し対する不透明感が増しているため、国内投資と同様にアウトバウンド投資においても投資家はより慎重になってきているようだ。

 

[図表7]2019年アウトバウンド投資取得姿勢(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)
[図表7]2019年アウトバウンド投資取得姿勢(出所:CBRE Investor Intentions Survey 2019)

 

CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

企業にとって必要不可欠な「ビジネスインフラ」として認められる不動産アドバイザリー&サービス企業を目指して、国内約1,100名を超えるプロフェッショナルが、最適かつ的確な不動産ソリューションを中立的な立場で提供いたします。
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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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