「価格」と「案件数」が取得の障壁に
■不動産を取得する際の最大の障害
日本の投資家にとって取得の際の障害は「資産価格」(44%)と「投資案件の少なさ」(42%)だった。投資家は現状の不動産価格に割高感を感じているようだ。しかし同時に、不動産価格は今後も上昇する可能性があるとも考えている。東京の大型オフィス不動産価格について、投資家の57%が、現状の価格は上昇局面である「好況期」にあると回答しており、既に「ピーク」にあるとした投資家の割合(42%)を上回った。
■今後も豊富な資金が不動産投資に流入
CBREの推計によると、アジア太平洋地域でクローズドエンドファンドが今後5年間に投資する予定の資金(いわゆる「ドライパウダー」)は600億ドル(約7兆円)以上に上る。そのうちおよそ60億ドル(約7,000億円)は今後2年間で投資されると推定される。資金はアジアの先進国を中心に投資される見込みで、日本にも一定規模の資金が流入すると考えられる。厳しい取得競争は今後も続くだろう。
安定志向が強まっている日本の投資家
■日本の投資家は「安定した収益」を重視
日本の投資家が不動産に投資する理由としてもっとも多かったのは「安定した収益」(43%)。一方で、「より高いキャピタルゲインを期待できる」と回答した投資家は8%にとどまった。マーケットサイクルが終盤に近いとみられる中、現在の価格水準に対して投資家が慎重になっていることを示唆している。
高い利回りを追求する投資家が増加傾向
■魅力的な投資戦略は「プライムまたはコア」
日本の投資家が選んだ投資戦略としてもっとも多かったのは「プライムまたはコア」(35%)で、次いで多かったのは「コアプラス/優良なセカンダリー」(29%)だった。ただし、「プライムまたはコア」は前回調査から10ポイント低下、他の投資戦略はいずれも回答率が増加し、投資家の好みは分散した。
■取得意欲旺盛な投資家は「コアプラス/優良なセカンダリー」に注目
「2019年の取得額が昨年より増加する」と回答した投資家が選んだ投資戦略でもっとも多かったのは、「コアプラス/優良なセカンダリー」(35%)で、次いで「オポチュニスティック(開発リスクを含む)」(27%)が多かった。
機関投資家の資金が不動産市場に流入し、長期運用を目的とした投資家が増加する傾向は2019年も変わらないだろう。しかし、投資家が選んだ投資戦略は分散する結果となった。より高い利回りを追求する投資家の姿勢がうかがえる。
投資家が魅力を感じているアセットタイプは?
■オフィスがもっとも魅力的なアセットタイプ
日本の投資家が選んだアセットタイプは、オフィスがもっとも多く(50%)、回答率は前回調査に比べて増加した。投資家はマーケットが変調しても出口戦略を描きやすい伝統的なアセットタイプに注目しているようだ。世界経済の見通しに対する不透明感が増していることの表れと考えられる。
■住宅・ホテルに対する投資家の見方は変化
住宅が魅力的だと回答した投資家は10%で、前回の17%から7ポイント低下した。収益の安定性が評価されているとはいえ、1件単位の価格規模は小さく、利回りは低下傾向にある。高い利回りを求める投資家にとって投資妙味がやや低下したことが要因と考えられる。
また、ホテルが魅力的だと回答した投資家は21%で、前回より4ポイント低下した。さらに、「2019年の取得額が昨年より増加する」と回答した投資家でホテルを選んだ割合は12%と、全体の結果(21%)より9ポイント低かった。堅調なインバウンド需要には変化はみられないが、大量供給による需給緩和への懸念が背景と考えられる。
アウトバウンド投資への意欲も引き続き旺盛
■アウトバウンド投資はデベロッパーがけん引
アウトバウンド投資を「行っている」、もしくは「検討中」と回答した投資家の属性別割合は、デベロッパーがもっとも高く、全体の40%を占めた。資産運用会社は24%と2番目に多く、次いで機関投資家が12%を占めた。
■投資意欲は旺盛も、選別姿勢
アウトバウンド投資に対する意欲は引き続き旺盛だ。アウトバウンド投資を「行なっている」と回答した投資家の中で、投資額を昨年より増やすと回答した投資家は全体の52%。投資額を「減らす」と回答した投資家はいなかった。とはいえ、昨年より選別的に投資すると回答した投資家は48%に上った。世界経済の見通し対する不透明感が増しているため、国内投資と同様にアウトバウンド投資においても投資家はより慎重になってきているようだ。