「会社のイメージアップにつながる」と社長は喜ぶが…
ラインペイやペイペイなど、銀行とは異なる業態による、金融業界への参入がどんどん増えてきました。そんななか、銀行業界での生き残りをかけて、各銀行も巻き返しを図る行動を起こしています。それらの行動には、銀行の危機感を感じるのです。
前回の続きです(関連記事『パチンコと同じ状況?生き残りをかけた「ATM最後の戦い」』)。
最近、新聞広告で見かける機会が増えてきたのが、「私たちはCSR私募債で社会貢献しています!」というものです。
いいように言っていますが、要は、銀行引受の社債です。あれやこれやと手数料のバカ高い、だまし商品です。で、CSR私募債は、社債の発行額に応じて、銀行が学校や公共機関に、物品を寄贈する、というものです。
発行額の0.2%相当、というのが多いです。1億円の社債なら、20万円相当の物品です。その程度なら、カバーするに十分な手数料を受け取っています。20万円の販促費で1億円の社債引受をゲットし、数百万円の手数料を得られるのです。それくらいなら安いものだ、という感覚です。
それに、0.2%相当、というのもくせ者です。20万円相当の物品を、それよりもうんと安く仕入れて寄付している、という臭いが漂うのです。そこでも利ザヤを稼いでいるのです。
で、ある程度の数を引き受けた時点で、「私たちはCSR私募債で社会貢献しています!」と新聞広告を打ちます。発行元の会社名がズラリと記載されたりします。「会社のイメージアップにつながる!」と社長は喜びます。しかし私にすれば、まんまと銀行にしてやれた会社のリストです。銀行がその広告を出しても十分に利益を取れるくらいの手数料を、それらの会社でまかなっているのです。
これまでの私募債では、引受獲得数が少なくなってきたのです。獲得できるのは、財務内容がさほどよくない会社ばかりです。やはりそれでは銀行もリスクが大きいのです。何か目新しさを、ということで増えてきたのがCSR私募債です。
「発行額の0.2%相当を当行から寄付いたします。社会貢献の内容を、対外的にもアピールします。もちろん、御社のお名前も掲載いたします。御社のイメージアップにもつながります。いかがでしょうか」といった誘い文句に、引っかかってしまうのです。
銀行は、稼ぎの最後の砦となっている手数料を死守すべく、あの手この手を考えてくるのです。
銀行がクラウド会計との提携を進める本当の理由
フリーやマネーフォワードなど、クラウド上での自動会計が存在感を高めています。それらのクラウド自動会計の会社と銀行が連携する、という発表が2018年はやたらと多かったのです。
クラウド会計では、銀行口座やクレジットカードを登録します。で、その口座の入出金やカード支払いの明細を、自動で経理処理をしてゆきます。自動仕分けで不明なところは、人が補い、精度を高めてゆきます。財務諸表が自動でできてゆきます。
で、銀行はクラウド会計会社と提携し、企業に銀行口座を登録してもらいます。さらに、企業の承認を得て、日々できあがる、クラウド財務データを入手します。そのリアルな日々の財務データに応じて、融資や回収業務を行おう、というわけです。
とはいえ、まだこの方法での融資は確立されていません。単に、今のところは、参考データとして見られます。ただ、クラウド財務データの開示を銀行に承認すれば、すべてをさらけだすことになってしまいます。金利や手数料など、交渉時に不利になることは明白です。
クラウド会計は良いものの、銀行への財務データ開示は禁物なのです。おそらく銀行からは、「データを開示いただければ、融資の決裁が早いですよ」「手数料を若干さげさせていただきます」「普段より多くの融資枠が可能ですよ」など、新たな誘いの声が出てくるものと思われます。
銀行がクラウド会計との提携を進めているのは、新たな飯のタネを見つけなければ生き残れない、危機感の表れなのです。