今回も前回に引き続き、ライン等の金融業界参入に危機感を覚えた銀行の巻き返し行動について見ていきます。※本記事は、2018年12月18日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

「会社のイメージアップにつながる」と社長は喜ぶが…

ラインペイやペイペイなど、銀行とは異なる業態による、金融業界への参入がどんどん増えてきました。そんななか、銀行業界での生き残りをかけて、各銀行も巻き返しを図る行動を起こしています。それらの行動には、銀行の危機感を感じるのです。

 

前回の続きです(関連記事『パチンコと同じ状況?生き残りをかけた「ATM最後の戦い」』)。

 

最近、新聞広告で見かける機会が増えてきたのが、「私たちはCSR私募債で社会貢献しています!」というものです。

 

いいように言っていますが、要は、銀行引受の社債です。あれやこれやと手数料のバカ高い、だまし商品です。で、CSR私募債は、社債の発行額に応じて、銀行が学校や公共機関に、物品を寄贈する、というものです。

 

発行額の0.2%相当、というのが多いです。1億円の社債なら、20万円相当の物品です。その程度なら、カバーするに十分な手数料を受け取っています。20万円の販促費で1億円の社債引受をゲットし、数百万円の手数料を得られるのです。それくらいなら安いものだ、という感覚です。

 

それに、0.2%相当、というのもくせ者です。20万円相当の物品を、それよりもうんと安く仕入れて寄付している、という臭いが漂うのです。そこでも利ザヤを稼いでいるのです。

 

で、ある程度の数を引き受けた時点で、「私たちはCSR私募債で社会貢献しています!」と新聞広告を打ちます。発行元の会社名がズラリと記載されたりします。「会社のイメージアップにつながる!」と社長は喜びます。しかし私にすれば、まんまと銀行にしてやれた会社のリストです。銀行がその広告を出しても十分に利益を取れるくらいの手数料を、それらの会社でまかなっているのです。

 

これまでの私募債では、引受獲得数が少なくなってきたのです。獲得できるのは、財務内容がさほどよくない会社ばかりです。やはりそれでは銀行もリスクが大きいのです。何か目新しさを、ということで増えてきたのがCSR私募債です。

 

「発行額の0.2%相当を当行から寄付いたします。社会貢献の内容を、対外的にもアピールします。もちろん、御社のお名前も掲載いたします。御社のイメージアップにもつながります。いかがでしょうか」といった誘い文句に、引っかかってしまうのです。

 

銀行は、稼ぎの最後の砦となっている手数料を死守すべく、あの手この手を考えてくるのです。

銀行がクラウド会計との提携を進める本当の理由

フリーやマネーフォワードなど、クラウド上での自動会計が存在感を高めています。それらのクラウド自動会計の会社と銀行が連携する、という発表が2018年はやたらと多かったのです。

 

クラウド会計では、銀行口座やクレジットカードを登録します。で、その口座の入出金やカード支払いの明細を、自動で経理処理をしてゆきます。自動仕分けで不明なところは、人が補い、精度を高めてゆきます。財務諸表が自動でできてゆきます。

 

で、銀行はクラウド会計会社と提携し、企業に銀行口座を登録してもらいます。さらに、企業の承認を得て、日々できあがる、クラウド財務データを入手します。そのリアルな日々の財務データに応じて、融資や回収業務を行おう、というわけです。

 

とはいえ、まだこの方法での融資は確立されていません。単に、今のところは、参考データとして見られます。ただ、クラウド財務データの開示を銀行に承認すれば、すべてをさらけだすことになってしまいます。金利や手数料など、交渉時に不利になることは明白です。

 

クラウド会計は良いものの、銀行への財務データ開示は禁物なのです。おそらく銀行からは、「データを開示いただければ、融資の決裁が早いですよ」「手数料を若干さげさせていただきます」「普段より多くの融資枠が可能ですよ」など、新たな誘いの声が出てくるものと思われます。

 

銀行がクラウド会計との提携を進めているのは、新たな飯のタネを見つけなければ生き残れない、危機感の表れなのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/「会社のイメージアップにつながる!」

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