ねたみが原因⁉ 商工中金が他行に忖度する「ねじれ融資」とは

※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。本記事は、2019年5月23日、6月11日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

「タイボ」はその設定期間が短いほど金利が低い

「銀行借入の金利は、タイボ+スプレッドでしなさい!」といい続けています。

 

タイボは、TIBOR(Tokyo InterBank Offered Rate)の略で、東京の銀行間で日々取引されている金利のことであり、銀行員の間で「市場金利」と呼ばれているものです。そのタイボ金利に、スプレッド(上乗せ金利)を加算します。その条件で設定してもらいなさい、といっているのです。

 

タイボには、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年と、6種類がありました。銀行金利の場合多いのは、1ヵ月タイボでの設定です。かつては2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、となるほどタイボ金利も高くなっていました。

 

ちなみに2ヵ月タイボはこの1年半ほど妙な推移をしており、2019年の4月1日より廃止になりました。

 

というのも、かつては1ヵ月タイボよりも2ヵ月タイボのほうが高かったのですが、この1年半ほどは、1ヵ月よりも2ヵ月タイボのほうが低いという妙な逆転現象が発生していたのです。2年ほど前に、2019年の3月で2ヵ月タイボは廃止すると一般社団法人全国銀行協会から各銀行に発信され、その後運用が減り、このような事態が起こりました。

 

このタイボも、設定期間が短いほど金利が低いということを知っておいてください。

 

以前、「タイボ+スプレッドでできました!」と聞き「タイボの期間は?」と尋ねると、「聞いてみます!」となり、「1年でした!」ということがありました。

 

たとえば2019年5月21日の場合、

 

タイボ1ヵ月⇒0.05818

タイボ1年⇒0.13636

 

となります。

 

その差は2倍以上にもなります。だから、銀行はできるだけ長い期間のタイボ設定にしたがるのです。しかも、条件提案書にはあまり詳しく載せず、「TIBOR金利」「市場金利」などと書くのです。そして内容をよくよく聞くと6ヵ月や1年だったということが、これまでにも多々ありました。

 

このような事態を避けるため、「タイボ1ヵ月+スプレッドでお願いします」といってください。タイボ1週間のほうがさらに金利は低いですが、最初は1ヵ月から設定し、財務状況がさらに向上したら、「タイボ1週間に見なおしをお願いします」と交渉を進めてほしいのです。

「民業圧迫っていわれないですか? 大丈夫ですか?」

「銀行が変なこといってきたんです」と、ある経営者がいってきたので、「何をいってきたんですか?」と尋ねました。

 

「商工中金から長期で1億円借りる段取りで進めていたんですが、その担当者が『3千万円くらいは、よその銀行から借りてもらえませんか?』といってきたんですよ」

 

といわれたので、さらに伺いました。

 

「え!? 1億円のうち、3千万円ですか?」

「最初は『できれば別に』といってきたんですが、うちも余計な借入をする気もないし、結局、1億円のうちの3千万円でも構わないということになりました。なので、商工中金からは7千万円です」

「わざわざ融資額を減らさせたんですか?」

「そうなんですよ」

「なぜそうなのか聞きました?」

 

すると、「『商工中金だけの融資だと民業圧迫だといわれるから』と商工中金の担当者がいってました」との返事が返ってきました。

 

2017年に発覚した商工中金による不正融資事件の際、「政府系なのに制度融資以外にも融資しやがって! 民業圧迫の報いだ! 俺たちの客まで奪うな!」といわんばかりの体で、市中銀行から一斉にたたかれたのです。そのことへの配慮ということなのでしょうが・・・。

 

筆者は続けてその経営者にいいました。

 

「でもそれって、ヤラセ番組みたいなもんじゃないですか!」

「そうですよね」

「で、ほかの銀行に話したんですか?」

「取り引きのある地銀に話しました」

「どうでした?」

「めちゃめちゃ喜んでました」

「そうでしょうね。条件もほぼ、こちらのいいなりでしょ」

「そうなんですよ。それはそれで助かりました」

 

つまり、民間銀行に忖度して融資しなければいけないという状況に、商工中金は追い込まれているということなのです。資金需要が不足しているなかでの、銀行間のねたみ・やっかみがなせる出来事です。「ねじれ融資」とでもいいましょうか。

 

商工中金からのみの資金調達を予定しているなら、「民業圧迫っていわれないですか? 大丈夫ですか?」とリスクをあおってみてほしいのです。

株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 代表取締役

昭和40年 大阪府生まれ。

平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。

平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。

指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾長:井上和弘)、に塾長補佐として参加し、後継社長の育成にも尽力している。

著者紹介

連載経営者必読!融資を勝ち取る銀行交渉術

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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