「財務状況が悪い会社」に融資をしているケースも…
先日発売された週刊誌にて、銀行危険度ランキングの記事が掲載されていました。地方銀行を対象としたもので、毎年掲載されています。
銀行借入のみならず、銀行との取引は、中小企業であれば何かしらあるはずです。自社の取引銀行がどの程度のランクにあるのか、知っておいてほしいのです。
危険度上位に共通するのは、「業績が悪く貸す先に困っている」ということです。なので、これらの銀行は基本、融資の審査がゆるいです。そのため、「この財務状況でよくもこれだけ銀行から借りられましたね!」という、財務状況が悪い会社に融資をしているケースをよくみかけます。
そのような会社は、他行からうまく融資を受けれません。結果として、審査のゆるい銀行に頼ることになってしまうのです。そうなると、その会社の社長にすれば、「貸してもらえて助かった」となります。貸す側はその状況を承知なので、金利は高めになり、担保・個人保証、保証協会まで、びっちり確保しにかかります。
結局、危険度の高い銀行ほど、金利などの取引条件が悪いのです。貸し先に困る分、審査をゆるくして、ほかの銀行が貸さない会社にまで貸し込み、その融資先から高めの金利を受け取ることで、生きながらえているのです。
ゾンビ企業という言葉がありますが、こちらはゾンビ銀行、といってもいいくらいなのです。お互いに死に体でありながら、互いの血肉を喰いあって生きながらえている、という銀行です。いずれはどこかに、合併・併合されてゆく可能性が高い銀行です。できることなら、そのような銀行との取引は、ないようにすべきでしょう。
「越境銀行支店」をおおいに活用すべき理由
ある地域のある会社でのことです。
その会社の近くに、隣の県から、ある地銀が越境出店してきました。その社長は、「それでなくても資金需要のない時代に、他府県からこの支店に転勤になる銀行員もたいへんだなあ」と感じていたのです。当然、近隣のあいさつと称して、その越境支店から担当者があいさつに来ました。
その会社はもともと、地域の第一地銀から融資を受けていました。銀行にとって不利な環境下でありながら、態度が大きく、金利もさほど低くありません。0.6%だったのです。そこで私は社長にいいました。
「これはいいところに、他府県の銀行が出店してくれたじゃないですか!」
「どういうことですか?」
「その他府県からの銀行支店は、まず、取引先の確保に苦労するはずです」
「そうでしょうね」
「だったら、うちはお宅に乗りかえてもいい、ということで、声をかけてみればいいじゃないですか。せっかく挨拶にも来られたのだし」
「そうですね」
ということで、越境支店の担当者に連絡して来社してもらい、条件によっては現状の地銀から乗り換えてもいいという旨を伝えました。
「本当ですか! ありがとうございます!」と、担当者は大喜びしました。現在、金利0.3%を指し値で要求し、交渉をしている最中です。もちろん、担保・個人保証はなしです。
他府県からの越境銀行支店は、なにはともあれ、取引先の確保をしなければいけません。その成果が個人成績に大きく反映してゆくのです。とはいえ、なじみのない土地で、取引先を開拓するのは、容易ではありません。銀行を取り巻く環境の悪さを考えれば、なおのことです。
そのような状況のなか、自ら銀行へ声をかけ、乗り換えてもいいといってくれるお客は、越境支店の担当者にとっては、まさに救いの神なのです。
それに、第一地銀の客を自分の銀行にかえさせた、ということは、支店成績にも大きくプラスになります。最大のライバルの客を奪うわけですから。なのでその担当者は、大いに喜んだのです。
その地域の第一地銀はたいてい態度が大きいものです。他府県からの越境銀行支店が近隣にあれば、ぜひ銀行交渉にうまく活用し、態度の悪い銀行をしめあげてほしいのです。