銀行に最重要視されるのは企業の「営業利益」である
そろそろ決算が確定します、という会社が多い時期に入ってきます。「銀行にはどう対応すればよいでしょうか?」と気にされる経営者も多いです。この場合、対応といっても、一律ではありません。まず大きく、銀行からの融資の有無によって、決算確定後の銀行への対応は、異なるのです。
融資を受けている会社、要は、借金のある会社の場合は、どう対応すればよいでしょうか。設備産業・メーカーなど、業態上、借入金が必要になる会社、卸売業など、在庫が必要で回収も時間がかかる会社などです。本体の会社では借りていないけれど、子会社で借りて、親会社が保証をしています、という場合も同様です。その場合は、決算報告と今期の業況見通しを銀行に報告します。
その前に当然、営業利益が最大限になるよう、決算書を整えて確定してください。損益計算書では、売上高に回せる雑収入は売上高にし、特別損失に回せる経費は特別損失に計上しておきます。銀行が最重要視する利益は、営業利益だからです。
貸借対照表では、経営者が貸しているお金があるなら、「経営者借入金」となっているか、確認してください。銀行は、決算書にある負債(借入金)を、何年で返済できるか、債務償還年数を重視してチェックします。
債務書簡年数は、借入債務÷(営業利益+減価償却費)で算出します。
経営者が貸しているのに、長期借入金と貸借対照表にあると、借入債務として判断されます。「経営者借入金」とあれば、借入債務には入りません。その分、借入債務が小さくなり、「債務償還年数」も小さくなり、評価が上がるのです。
決算が確定したら、支店長あてに約束をとりつけて、こちらから銀行へ伺います。呼ぶのではありません。こちらから伺うのです。で当日、決算状況と、本年度の業績動向を報告します。特に、決算状況が芳しくなかったのなら、おおげさにでもよいので、それは単年度のことで、今年は業績が回復します、と言ってください。来年には、支店長も変わっているかもしれないのですから。
とはいえ、銀行にこびへつらうのではありません。上から目線で報告するのでもありません。良い条件で融資を受け続けるには、それなりの仁義を通し、優良顧客とみなされることを、しておくのです。
なぜなら、このようなことをする中小企業は、少ないのです。よそがやらないことをしておくことで、いざ条件交渉の時に、「うちはよそに比べて、それなりの仁義を通しているはずですよ」と言い切れるのです。決算報告は、その交渉時に向けての、仕込みみたいなものなのです。
銀行は「中小企業の経営者」を信用していない⁉
借入金のある会社は、決算確定後に銀行へ訪問して、決算報告と業況見通しをお伝えしなさい、と前述いたしました。
そうしておくことで、銀行交渉時には、自社が優良顧客であることを、アピールできるからです。ではなぜ、そうしたほうがよいか、ということです。理由は簡単です。銀行は基本、中小企業の経営者を、信用していないのです。「けしからん!」と思うかもしれませんが、こちらも銀行を信用していないのですから、仕方がありません。
そのことを語るデータが、4月下旬、金融庁から発表されました。金融庁から地域銀行に対する、「経営者保証に関するガイドライン」のアンケートの結果、がそれです。アンケートの対象は、地域銀行105行です。そのなかの質問に、「ガイドラインに基づいて個人保証を外した場合の、銀行のデメリットは何か?」というものがあります。
その回答の52%を占めるのが、「経営者への規律付けの低下に繋がるから」というものでした。(2019kojinhosyou.pdf ※ファイルの7ページ)
わかりやすくいえば、保証をとっておかないと、返済しないかもしれないから、ということです。
いかがですか。なんとも失礼な回答なのです。それも、なんという上から目線!「貸してやっている」という姿勢を、ここに感じます。しかもこの回答が52%を占めるのですから、中小企業で個人保証を外すことが進んでいないのは、当然です。
さらにその根底にあるのが、「返済されなかったら自分の成績にひびく」というものです。結局は、銀行員自身の身を守るため、なのです。
個人保証に関する交渉をするのなら、先のデータファイルを印刷して見せて、「地銀の半分は、こう考えているらしいですね。お宅はどう考えているんですか? うちの財務体質からみても、そう思うんですか?」と、たずねてみてほしいのです。