決算時、銀行に「優良顧客」であることをアピールする方法

※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。本記事は、2019年5月7日、9日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

銀行に最重要視されるのは企業の「営業利益」である

そろそろ決算が確定します、という会社が多い時期に入ってきます。「銀行にはどう対応すればよいでしょうか?」と気にされる経営者も多いです。この場合、対応といっても、一律ではありません。まず大きく、銀行からの融資の有無によって、決算確定後の銀行への対応は、異なるのです。

 

融資を受けている会社、要は、借金のある会社の場合は、どう対応すればよいでしょうか。設備産業・メーカーなど、業態上、借入金が必要になる会社、卸売業など、在庫が必要で回収も時間がかかる会社などです。本体の会社では借りていないけれど、子会社で借りて、親会社が保証をしています、という場合も同様です。その場合は、決算報告と今期の業況見通しを銀行に報告します。

 

その前に当然、営業利益が最大限になるよう、決算書を整えて確定してください。損益計算書では、売上高に回せる雑収入は売上高にし、特別損失に回せる経費は特別損失に計上しておきます。銀行が最重要視する利益は、営業利益だからです。

 

貸借対照表では、経営者が貸しているお金があるなら、「経営者借入金」となっているか、確認してください。銀行は、決算書にある負債(借入金)を、何年で返済できるか、債務償還年数を重視してチェックします。

 

債務書簡年数は、借入債務÷(営業利益+減価償却費)で算出します。

 

経営者が貸しているのに、長期借入金と貸借対照表にあると、借入債務として判断されます。「経営者借入金」とあれば、借入債務には入りません。その分、借入債務が小さくなり、「債務償還年数」も小さくなり、評価が上がるのです。

 

決算が確定したら、支店長あてに約束をとりつけて、こちらから銀行へ伺います。呼ぶのではありません。こちらから伺うのです。で当日、決算状況と、本年度の業績動向を報告します。特に、決算状況が芳しくなかったのなら、おおげさにでもよいので、それは単年度のことで、今年は業績が回復します、と言ってください。来年には、支店長も変わっているかもしれないのですから。

 

とはいえ、銀行にこびへつらうのではありません。上から目線で報告するのでもありません。良い条件で融資を受け続けるには、それなりの仁義を通し、優良顧客とみなされることを、しておくのです。

 

なぜなら、このようなことをする中小企業は、少ないのです。よそがやらないことをしておくことで、いざ条件交渉の時に、「うちはよそに比べて、それなりの仁義を通しているはずですよ」と言い切れるのです。決算報告は、その交渉時に向けての、仕込みみたいなものなのです。

銀行は「中小企業の経営者」を信用していない⁉

借入金のある会社は、決算確定後に銀行へ訪問して、決算報告と業況見通しをお伝えしなさい、と前述いたしました。

 

そうしておくことで、銀行交渉時には、自社が優良顧客であることを、アピールできるからです。ではなぜ、そうしたほうがよいか、ということです。理由は簡単です。銀行は基本、中小企業の経営者を、信用していないのです。「けしからん!」と思うかもしれませんが、こちらも銀行を信用していないのですから、仕方がありません。

 

そのことを語るデータが、4月下旬、金融庁から発表されました。金融庁から地域銀行に対する、「経営者保証に関するガイドライン」のアンケートの結果、がそれです。アンケートの対象は、地域銀行105行です。そのなかの質問に、「ガイドラインに基づいて個人保証を外した場合の、銀行のデメリットは何か?」というものがあります。

 

その回答の52%を占めるのが、「経営者への規律付けの低下に繋がるから」というものでした。(2019kojinhosyou.pdf ※ファイルの7ページ)

 

わかりやすくいえば、保証をとっておかないと、返済しないかもしれないから、ということです。

 

いかがですか。なんとも失礼な回答なのです。それも、なんという上から目線!「貸してやっている」という姿勢を、ここに感じます。しかもこの回答が52%を占めるのですから、中小企業で個人保証を外すことが進んでいないのは、当然です。

 

さらにその根底にあるのが、「返済されなかったら自分の成績にひびく」というものです。結局は、銀行員自身の身を守るため、なのです。

 

個人保証に関する交渉をするのなら、先のデータファイルを印刷して見せて、「地銀の半分は、こう考えているらしいですね。お宅はどう考えているんですか? うちの財務体質からみても、そう思うんですか?」と、たずねてみてほしいのです。

株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 代表取締役

昭和40年 大阪府生まれ。

平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。

平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。

指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾長:井上和弘)、に塾長補佐として参加し、後継社長の育成にも尽力している。

著者紹介

連載経営者必読!融資を勝ち取る銀行交渉術

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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