今回は、他業種の金融分野への相次ぐ参入により、危機感を持ち巻き返しを図る銀行の事情などについて見ていきます。※本記事は、2018年12月11日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

銀行から通達された「振込手数料値下げ」の中身とは…

ラインやペイペイなど、銀行とは異なる業態による、金融業界への参入がどんどん増えてきました。そんななか、銀行業界での生き残りをかけて、各銀行も巻き返しを図る行動を起こしています。それらの行動には、銀行の危機感を感じるのです。

 

先日、ある経営者から、「銀行から振込手数料を下げます、って言ってきました!」との連絡を受けました。これまで、振込手数料の引き下げ交渉は、こちらからしなければ、銀行からは絶対に言ってこない、と申し上げていました。

 

で、通達を見せていただきました。こうありました。

 

同行あて(他店含む)

3万円未満 108円→変わらず

3万円以上 324円→216円

 

他行あて

3万円未満 432円→324円

3万円以上 648円→540円

 

インターネットの振込に限り変更する、とのことでした。

 

但し、その経営者の会社は、すでに個別交渉し、もっと安い振込手数料で取引していました。「それは安くならないのですか?」と聞くと、「さすがにそれは、下がらないみたいです」とのことでした。

 

しかし、ちゃっかりと値上げもありました。給与振り込み分です。他行あてを、これまで無料だったのを、108円と有料化になったのです。ちなみに同行あては、他支店あても含めて無料です。これは、銀行口座の囲い込みです。「よその銀行に振り込むなら108円かかります。うちに給与振込口座を開設すれば、同行あて扱いで0円ですよ」と言いたいわけです。その経営者の会社でも、一部の従業員に、その銀行での口座開設を求める、とのことでした。

 

昨今、巷では「ラインペイ同士なら送金手数料がいらないらしい」「この送金アプリがいいらしい」など、送金に関する低価格化の情報があふれてきました。ビジネス雑誌でも、どれが一番お得か、といった記事を見かけます。

 

どの情報を見ても、共通するのは、「銀行に比べて安い」ということです。実際そうなのです。そのことに、危機感を持った銀行が、今回の手数料改定の通達に至ったのであろう、と思わずにはいられないのです。銀行業界は、ライバル銀行に倣え、という横並びが基本です。おそらく他の銀行でも、手数料に関しては、積極的な働きかけがが出てくるものと思われます。そういうときは、「新たなライバルが登場しているから、大変ですね」と声をかけてみてほしいのです。

生き残りをかけた「ATM」最後の戦いがはじまった⁉

UFJ銀行と三井住友銀行が、ATMの共有化を進める、と発表しました。共有化により、UFJ銀行のATMで三井住友銀行の口座から現金を引き出しても、手数料がかからなくなります。振込に関しては、未決定とのことです。

 

共有化により、ATM維持管理費の削減を進めるのが、狙いのようです。確かに、最近はATMを使うことも減ったし、使う場合でも、並ぶことがなくなりました。どれか1台は、たいがい空いているのです。

 

それだけ、ATM機の稼働が落ちているのです。台数も減らしてゆくようですが、それでも維持管理費が大きく、今回の共有化となりました。

 

ネットバンクの進行で、ATMの稼働が上がらないうえに、ローソン銀行は新たにATMを導入させます。銀行ATM1台当たりの稼働はますます落ちます。客数は減り、単価も落ちる、という、パチンコやスロット機と同じような現象に陥っているのです。どこが残存者利益を勝ち得るのか、というATM最後の戦いです。

 

メガバンク同士が共有する、というのもこれまでにない、新たな動きです。当然、UFJと三井三友が主体になり、他の地銀にも共有化への参加を促してゆくことになります。

 

送金や振込の手数料の獲得競争は、ますます激しくなり、低価格化してゆくはずです。なのに、自社の振込手数料をまったく交渉せず、定価どおりに支払うなど、あってはならないことです。もし、なんの交渉もいまだにしていないようなら、今すぐ、支店長を呼び、「手数料の減免措置をお願いします」と交渉を持ち掛けてほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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