銀行から通達された「振込手数料値下げ」の中身とは…
ラインやペイペイなど、銀行とは異なる業態による、金融業界への参入がどんどん増えてきました。そんななか、銀行業界での生き残りをかけて、各銀行も巻き返しを図る行動を起こしています。それらの行動には、銀行の危機感を感じるのです。
先日、ある経営者から、「銀行から振込手数料を下げます、って言ってきました!」との連絡を受けました。これまで、振込手数料の引き下げ交渉は、こちらからしなければ、銀行からは絶対に言ってこない、と申し上げていました。
で、通達を見せていただきました。こうありました。
同行あて(他店含む)
3万円未満 108円→変わらず
3万円以上 324円→216円
他行あて
3万円未満 432円→324円
3万円以上 648円→540円
インターネットの振込に限り変更する、とのことでした。
但し、その経営者の会社は、すでに個別交渉し、もっと安い振込手数料で取引していました。「それは安くならないのですか?」と聞くと、「さすがにそれは、下がらないみたいです」とのことでした。
しかし、ちゃっかりと値上げもありました。給与振り込み分です。他行あてを、これまで無料だったのを、108円と有料化になったのです。ちなみに同行あては、他支店あても含めて無料です。これは、銀行口座の囲い込みです。「よその銀行に振り込むなら108円かかります。うちに給与振込口座を開設すれば、同行あて扱いで0円ですよ」と言いたいわけです。その経営者の会社でも、一部の従業員に、その銀行での口座開設を求める、とのことでした。
昨今、巷では「ラインペイ同士なら送金手数料がいらないらしい」「この送金アプリがいいらしい」など、送金に関する低価格化の情報があふれてきました。ビジネス雑誌でも、どれが一番お得か、といった記事を見かけます。
どの情報を見ても、共通するのは、「銀行に比べて安い」ということです。実際そうなのです。そのことに、危機感を持った銀行が、今回の手数料改定の通達に至ったのであろう、と思わずにはいられないのです。銀行業界は、ライバル銀行に倣え、という横並びが基本です。おそらく他の銀行でも、手数料に関しては、積極的な働きかけがが出てくるものと思われます。そういうときは、「新たなライバルが登場しているから、大変ですね」と声をかけてみてほしいのです。
生き残りをかけた「ATM」最後の戦いがはじまった⁉
UFJ銀行と三井住友銀行が、ATMの共有化を進める、と発表しました。共有化により、UFJ銀行のATMで三井住友銀行の口座から現金を引き出しても、手数料がかからなくなります。振込に関しては、未決定とのことです。
共有化により、ATM維持管理費の削減を進めるのが、狙いのようです。確かに、最近はATMを使うことも減ったし、使う場合でも、並ぶことがなくなりました。どれか1台は、たいがい空いているのです。
それだけ、ATM機の稼働が落ちているのです。台数も減らしてゆくようですが、それでも維持管理費が大きく、今回の共有化となりました。
ネットバンクの進行で、ATMの稼働が上がらないうえに、ローソン銀行は新たにATMを導入させます。銀行ATM1台当たりの稼働はますます落ちます。客数は減り、単価も落ちる、という、パチンコやスロット機と同じような現象に陥っているのです。どこが残存者利益を勝ち得るのか、というATM最後の戦いです。
メガバンク同士が共有する、というのもこれまでにない、新たな動きです。当然、UFJと三井三友が主体になり、他の地銀にも共有化への参加を促してゆくことになります。
送金や振込の手数料の獲得競争は、ますます激しくなり、低価格化してゆくはずです。なのに、自社の振込手数料をまったく交渉せず、定価どおりに支払うなど、あってはならないことです。もし、なんの交渉もいまだにしていないようなら、今すぐ、支店長を呼び、「手数料の減免措置をお願いします」と交渉を持ち掛けてほしいのです。