今回は、「社員成長支援制度」の構築前に重要な会社の人事基本方針を明文化する方法について見ていきます。※本連載は、株式会社中央人事総研代表取締役・大竹英紀氏の著書、『今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度』(合同フォレスト)から一部を抜粋し、これまで100社以上のコンサルタントを通じて多くの成果を出してきた経験をもとに筆者が構築した、社員のやる気と能力を最大限に引き出して会社の業績をアップさせる「社員成長支援制度」の活用法を紹介します。

「社員成長支援制度」作成の前にすべき目標の明確化

社員成長支援制度の構築のステップとして特に重要なのは、この制度の目的を明確にすることです(関連記事『上司個人の指導力に左右されない「社員成長支援制度」とは?』)。何のために行うのか、目標はどこに設定するかを会社として明らかにすることが必要です。その後の構築ステップは図表1をご参照ください。

 

[図表1]社員成長支援制度の構築のステップ

 

社員成長支援制度は、いきなり作るのではなく、まず会社として、社長としての人事に関する考え、方針を示すことが必要です。

 

いわば人事方針づくりです。具体的にいうと、この社員成長支援制度を導入することによって、社員にどう変わってほしいのか、そのために採用、評価、昇格・昇進、教育、賃金などの仕組みをどのような形にすべきかの基本的な考えを明文化する必要があります。

 

実際の作成では、会社の経営ビジョン(経営計画)に基づいて、ブレークダウンして人事方針を決めていきます。そうすることで一貫性が増し、社員に制度の概要や狙いをわかりやすく伝えることができます。反対に、人事方針を作らずにいきなり細かい人事評価を社員に渡して、「今度から、この新しい評価表であなたたちを評価します」と言ったところで、社員は本来の目的を理解しようとはしません。

 

図表2に従って、順番に検討していきましょう。1の人事基本方針については、会社として、どんな人事制度を目指していきたいのかのビジョンです。それを一言で表してください。それを階層別に、部長・課長、リーダー(係長、主任)、一般社員といった順に整理してください。これが会社における必要な人材の要件となります。

どんな社員が何名必要で、いつまでに採用するのか

[図表2]社員成長支援制度の人事基本方針明確化シート

1.人事基本方針について

 

□方向性・・・どんな人事制度(社員の成長支援制度)を目指していきたいですか?

一言で表すなら・・・

 

□階層別では、この制度を導入することで、どんな社員に変わってほしいですか?

会社に必要な人材像を明確にします。

※会社の実情によって階層は変えてください。

●部長・課長は・・・

 

●リーダーは・・・

 

●一般社員は・・・

 

2.各制度の基本方針について

□採用方針

●いつまでにどんな人材を採用したいですか?

 

□等級制度(社員の成長の階段づくり)

●どこに主軸を置いて等級分けをしますか? ※何等級に分けるかを仮決定する。

例)業務の遂行能力、仕事の成果、果たすべき役割、負うべき責任・・・

 

□人事評価(制度)

●社員のどんなところを見て評価していきたいですか?

例)年齢、勤続年数、仕事の量や質、仕事の成果や結果、役割・責任の発揮具合、仕事への取り組み姿勢(態度)、知識や技術・技能の活用度合(職種別に)・・・

 

□報酬制度(賃金体系、昇給、賞与、昇格昇進、その他のインセンティブ)

●年収、月収、インセンティブ(やる気を喚起する仕掛け)等をどのように変えていきたいですか?

 

【社員のモデル賃金】についてどの程度が妥当だと思いますか?

 

 

□社員教育(制度)・・・社員成長支援制度の運用も含む

教育基本方針(全社員共通の教育)について

●どのような全社員共通の教育をしていきたいですか?

 

●今後、どの階層にどんな教育をしていきたいですか?

 

●具体的な項目については

例)専門的な技術・技能・知識、物事の考え方、物事に取り組む姿勢、マネジメント、コミュニケーション・・・

 

●フォロー体制はどうしていきますか?

※社員成長支援制度の運用も含め、方針を立てる。

例)管理職と一般社員の役割強化教育、成長支援面談の技法、考課者訓練など

 

2の各制度の基本方針については、採用に関しては、1で検討した基本方針を軸に階層別にどんな社員が何名必要で、いつまでに何名採用する必要があるかの要員計画を立案してください。

 

等級制度については、現在の会社のレベルに応じて等級数を決めてください。また、どんな役割や責任が必要なのかについても内容を検討してください(次回の「人財役割責任等級基準」を参照)。

 

人事評価については、階層別(管理職・中堅社員・一般社員)に、たとえば成果・必要な行動・取り組み姿勢などの項目でご検討ください(第5回の「社員チャレンジ制度」を参照)。

 

報酬に関しても同様です。特に社員のモデル賃金については、評価制度を構築した際に重要になってきますので、おおよそのモデル賃金額を月収(万円)、年収(万円)について検討してください。

 

社員教育は、人事制度の構築後の運用で必ず必要となります。今後の社員教育をどの階層に、どんな内容で、どのように定着させるか(フォロー体制も含める)を明らかにしてください。

 

以上の内容を人事基本方針として明文化し、新たに構築した社員成長支援制度の説明会の際に、これを全社員に発表をしていただきたいのです。

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