総務・経理部門はどう評価?「人事評価基準」を明確にする方法

これまで「人事評価」と「社員の目標・役割」を有機的につなげる「社員チャレンジ制度」のメリットを説明してきましたが、実際にどうすれば会社も社員も納得できる分かりやすい人事評価ができるのでしょうか。今回は、人事評価基準を明確化する「社員チャレンジシート」の作り方をレクチャーします。※本連載は、株式会社中央人事総研代表取締役・大竹英紀氏の著書、『今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度』(合同フォレスト)から一部を抜粋し、これまで100社以上のコンサルタントを通じて多くの成果を出してきた経験をもとに筆者が構築した、社員のやる気と能力を最大限に引き出して会社の業績をアップさせる「社員成長支援制度」の活用法を紹介します。

部門(職種)階層(等級の区分)ごとに評価基準を設定

前回、社員チャレンジシートの内容を説明しましたが、次にチャレンジシートの対象者を決めていきます(関連記事『人事評価と人材育成を効率化する「社員チャレンジ制度」とは?』)。どの階層、どの部門(職種)に対して作成していくかです。つまり、部門(職種)×階層(等級の区分)=社員チャレンジシートの枚数となります。

 

等級ごとに設定するという考え方もありますが、中小企業の場合、等級ごとの差を埋められずに運用も大変難しくなるため、階層で設定することをお勧めします。さらに具体的に説明しますと、階層別はおおよそ2~3つが目安です。会社全体として、上級職(管理職)、中級職(中堅職)、初級職(一般職)として区分します。

 

たとえば会社として6等級の等級区分であれば、上級職を6、5等級、中級職を4、3等級、初級職を2、1等級とします。以上が3階層です。会社全体として、4等級の場合、上級職を4、3等級、初級職を2、1等級とすることも可能です。4等級というのは、社員数からいうと10~20人を想定します。

 

まだこのレベルだと組織がしっかりしていないため、まずは2階層で設定したほうがうまく運用しやすいのです。

評価基準を明確にするには?

次のステップとして、社員チャレンジシートの評価項目における評価基準を決めます。この評価基準については、「評価者の評価にバラツキが大きい」「3という真ん中の基準になりがち」「評価者によって甘辛傾向がありすぎる」などの問題を個別相談からよく聞きます。まずここでは評価基準を明確にします。

 

【評価の基本的な基準】

まず、通常5段階のレベルの中で「3」を明らかにします。つまり、「3」というのは「会社が期待をし、要求するレベル」を考えてください。わかりやすい言い方をすると「この仕事はここまでやってください」という目標(指示)に対して、達成すれば「3」となります。これが世間一般でいう「普通」というレベル感です(図表1~4)。

 

※「3」という数値基準は各企業によって変わります。企業によっては3が、90%~という基準の例もあります。
[図表1]評価の基本的な基準
※「3」という数値基準は各企業によって変わります。企業によっては3が、90%~という基準の例もあります。

 

[図表2]評価基準(役割成果の基本形)

 

[図表3]評価基準(事例・役割成果)
 
[図表4]評価基準(事例・重点プロセス業務)

 

ウエイトは、等級、役職、仕事の重要度によって変えていきます。ウエイト付けをすることにより、社員にどの分野に力をかけてほしいかを会社がハッキリと伝えることができるのです。以下の5つの考え方で検討してください。

 

①仕事の重要度・責任・期待度に応じてウエイトの配分を設定する。

②上級職になるほど、役割成果に対するウエイトが高くなる。

③初級職になるほど、役割成果に対するウエイトが低くなり、反対に重点プロセス業務・チャレンジ目標・取り組み姿勢が高くなる。

④等級が低い社員に対しては、仕事の基本を確実に習得するために、重点プロセス業務、取り組み姿勢に重きを置く。

⑤上級職は役割成果に重きを置きながら、同時にマネジメントと人材教育を重視する(図表5)。

 

[図表5]ウエイトの例(製造業S社)

総務・経理部門など間接部門の目標設定方法

役割成果において、営業部門等の比較的数字目標を設定しやすい部門はいいでしょうが、数字目標を設定しにくい総務・経理部門など間接部門では、最初はかなり設定に戸惑うかもしれません。

 

そこで、間接部門はもちろん、直接部門を含めて自部門の役割を考えることによって、役割成果が出やすくなります。それは、次の視点で検討することがヒントになります。

 

「あなたの部門がなくなったら、誰がどのように困りますか?」

 

この問いに答えることで、自部門の役割がはっきりとしてきます。たとえば、総務経理であれば、もし総務経理がなくなったら誰が困るかです。「毎月の給与を払えなくなる」「毎月の試算表が出なくなる」「人の採用ができなくなる」「社員教育の計画とその実行ができなくなる」「社員の評価の手続きができなくなる」など・・・。

 

経営を揺るがす根幹的な問題が生じます。それをもとに、以下のように部門の役割を検討します。製造業K社の事例です。

 

【K社部門の役割の例】

□営業部門:会社のブランド、商品サービスを取引先にPRし、取引、回収、継続受注する。

□製造、技術部門:顧客に喜ばれる品質、適正価格で製品を作り続けること、また市場や顧客のニーズに合ったサービスを開発および提供し続ける。

□管理部門:会社と社員を共に元気にするために、人とお金の両面を効果的に活用して、会社の業績アップに貢献する。

 

次に数値設定をしにくい管理部門の役割をもとに、実際にどうやって社員チャレンジシートを作っていくのかを以下に説明します。作成のステップは次の2点です。

 

①管理部門で実際にやっている・やるべき業務を整理する。

②どの階層で各業務における実行責任者なのか、実務担当者なのかを明確にする(図表6)。

 

[図表1]K社管理部門の担当業務表
[図表6]K社管理部門の担当業務表

 

まず、図表6について説明しましょう。

 

この表はK社の管理部門が、①実際に担当している業務を洗い出し、②今一度、部門の役割に立ち返って不足していたと考える業務を追加したものです。表の(*)の部分が追加検討した一部です。

 

(*1)から(*5)に関しては、単に担当者がやっているだけで、チェック、改善などの全社的視点がありませんでした。また(*6)の売上・利益計算も事務担当者任せで集計しているのみで、それに対して他部門へ収支改善を積極的に働きかけていませんでした。それも踏まえて、③各々の業務を、初級・中級・上級の各階層の社員が何を主に担当すべきかを見える化しました。◎、○、△で表し、以下のように定義しました。

 

◎:「実行責任者」その階層が実行の職責(責任)を負うべきもの

〇:「主担当」実行責任者の指示や要請によって実行すべきもの(実務担当者)

△:「場合によって実行」人員不足(急な担当者欠員、休暇・欠勤等)の場合に実行・補助すべきもの

 

さて、この定義にはもう一つの「想い」も込められています。

 

多くの中小企業では、人財役割責任等級基準を定めても、実際の個人の業務では初級・中級・上級の階層枠をまたいで実行していることがほとんどです。人手不足等のさまざまな要因で、プレーイングマネージャーとして一人二役・三役をこなしている管理・監督職が多いのも実態です。

 

そのような背景のもとで、杓子定規な業務分担表を作ってしまうと、多忙な日々の中でついつい「これさえやればいいんだ」となってしまい、本末転倒になってしまう恐れがあります。

 

そこで「実行責任者」が、その階層が絶対的に責任を負うべきことを明確にします。そうはいっても、「主担当」「場合によって実行」に該当する者が業務支援や補助をする必要があるということを、会社の意思として定義しておくのです。◎〇△ではなく、階層別の業務優先度(順位)付けをして、多種類の業務を担ってもらう必要性を示している企業もあります。

 

図表6と「人財役割責任等級基準」「部門の役割」「部門目標」を確認することによって、個人の社員チャレンジシート上の項目(役割成果、重点プロセス業務、チャレンジ目標)への記入内容の絞り込みをしやすくすることが、この表を作成する目的(狙い)となります。

 

図表7は、「人財役割責任等級基準」「部門の役割」「部門目標」「担当業務表」をもとに、各階層が記入した社員チャレンジシート項目の記入事例です。

 

[図表7]K社管理部門の社員チャレンジシート 各項目への記入事例
[図表7]K社管理部門の社員チャレンジシート 各項目への記入事例

 

役割成果欄には、①数値目標、②状態目標、③スケジュール目標で目指すことが記入されています。このように書くことで、評価する側・される側双方の検証(PDCAの中の「C」)ができます。

 

重点プロセス業務欄では、役割成果を達成するための重点業務内容が具体的に記入されています。チャレンジ目標欄では、①一つ以上高い等級の主担当業務に挑戦、②現在の担当業務の質やスピードをより高めるための挑戦事項が記入されています。

 

取り組み姿勢欄では、会社として初級・中級には「積極性」「責任性」「規律性」「協調性」を求め、各自が具体的にどんな行動をとるのかを記入してもらいます。上級には「積極性」「責任性」「協調性」に加えて、「人間性」を求めています。この会社では、管理職には人間性を磨き、部下の納得性を高める行動を望んでいます。

 

いかがでしょうか。以上の考え方と事例を参考にすれば、記入にあたっての戸惑いはかなり軽減されるのではないでしょうか。

管理職を巻き込んで人事プロジェクトを立ち上げる

実際に制度を作る体制、やり方について一つ言及します。それは、プロジェクトチームを作って行う方法です。

 

このプロジェクトは部門長、責任者などの管理職を集めて、人財役割責任等級基準、社員チャレンジシート、昇格ルールなどを一緒になって作り上げていきます。会社側で一方的にこの制度を作るより、各部門の責任者を集めることにより、制度に対する理解が深まり、自分たちが改善しようとする意欲や行動につながるからです。

 

この方法により、人事制度を構築した後の運用で効果が発揮されます。

 

制度を運用するにあたっては必ず問題点が発生しますが、プロジェクトメンバーが制度全体を理解しているために、改善がうまくでき、とても有効な手段です。さらに、初めて制度構築を行う際は、我々のような外部の専門家を導入し、実施するとスムーズにいくでしょう。

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株式会社中央人事総研 代表取締役
中小企業を元気にする組織変革コンサルタント
愛知県商工会連合会エキスパート相談員 

愛知県西尾市生まれ。
昭和63年南山大学経営学部卒業。
セントラルファイナンス株式会社(現セディナ)勤務後、平成3年よりアタックス・今井会計グループ(現アタックスグループ)にてさまざまな業種にわたり経営及び人事コンサルティングに従事。
平成16年、「夢と希望 成長する元気な会社を創出」をモットーに、中央人事総合研究所を設立。
平成22年7月に株式会社中央人事総研代表取締役に就任する。
病院、住宅販売業、不動産販売業、テープ製造業、食品卸売業、木材加工販売業、自動車部品加工業、自動車設備業、制御盤製造、新聞販売業、食品製造販売業、ダイキャスト製造業、鋳物製造業、電気工事業、鉄鋼卸売業、運送業、印刷会社、メガネチェーン店、ビジネスホテル、旅館、スイミングスクール、広告代理店など100社以上のコンサルティングの実績あり。それぞれの中小企業の良さ
を引き出しながら、人事制度構築と運用、経営計画策定、社員教育などの支援を展開中。離職率が下がり、定着率が2桁以上のアップという多くの成果を出している。
現在も中小企業社長から、「人を成長させる仕組み」を作りたいと、相談が絶えない。
経営理念「人財育成を通じて、日本の中小企業を元気にする」の実現のために、クライアントの現場に日々奔走している。

《保有資格・公的活動》  
●NPO日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー
●愛知県商工会連合会エキスパート相談員
●名古屋商工会議所 人事労務サポート事業専門相談員
●社団法人日本経営協会 専任コンサルタント
●愛知中小企業家同友会 正会員

著者紹介

連載今の社員たちだけで成果を上げる! 中小企業のための「社員成長支援制度」構築のススメ

今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度

今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度

大竹 英紀

合同フォレスト株式会社

社員のやる気と能力を最大限に引き出し、会社の業績をアップする! そんな人事制度・評価制度を構築する方法をご紹介。 事例を交えた具体的な運用のコツも詳細に解説しています。

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