※本連載は、株式会社中央人事総研代表取締役・大竹英紀氏の著書、『今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度』(合同フォレスト)から一部を抜粋し、これまで100社以上のコンサルタントを通じて多くの成果を出してきた経験をもとに筆者が構築した、社員のやる気と能力を最大限に引き出して会社の業績をアップさせる「社員成長支援制度」の活用法を紹介します。

役職者としての適正、人望、リーダーシップ力を勘案

今回は、中小企業の管理職の昇進に関する具体策についてご説明します。

 

社内的に判断できる昇進ルールを作る

私は、昇進のルールは「役職者(たとえば課長)としての適性、人望、リーダーシップ力等を勘案して決定する」とクライアントに指導しています。

 

昇格ルールと違って、昇進ルールはかなり大ざっぱになっています。なぜかというと、役職というのは、そのときの組織上の課題、部下の能力度合いなどによって役職者に求められる役割や責任などが変わってくるからです。したがって、より細かく明示することは、結果として運用が無意味になります。

 

重要なのは、昇進する本人が本当に役職者として部門、部署を任せるに価するか、それまでの実績、経験、期待値を考えに考えて最終的に決定するということです。

 

もちろん、どうしても昇進させなければ組織が回らないというケースもあるかと思います。その際は、社長自身が本人に、期待する管理職の役割を繰り返し伝え、定期的に教育指導をしていく必要があります。そうして社長が考える管理職像に近づけるのです(図表1)。

 

※役職ポストの空き状況も勘案して決定する。 ≪昇進の考え≫ 昇進=昇格+適性+定員
[図表1]昇進の方法
※役職ポストの空き状況も勘案して決定する。
≪昇進の考え≫ 昇進=昇格+適性+定員

不適格管理職は是正の猶予を与え、改善がなければ解任

ダメな管理職は解任することを真剣に考える

管理職登用後、数年間の仕事の成果を評価したときに、期待に応え、責任を果たしていないと判断した場合、そのまま放置していませんか。

 

少しのギャップであれば、面談を通じての指導や教育を実施することによって是正される可能性はあります。

 

しかし最悪の状態は、不適格管理職をそのまま放置していることです。それにより部門が機能しなくなり、部下が成長せず、辞めていくことも多くなります。こうした場合、会社が取るべき判断は、役職を解任することです。または、専門職として役割を変えることです。同時に下の者を昇進させることも考えます。

 

もちろん、急に本人に「オマエは管理職としてクビだ」と告げると、本人との関係性も最悪になります。

 

少なくとも数カ月前から「このままでは、この部署を君に任せることは無理だ。6カ月間、猶予を与える。この期間に挽回してほしい。もし状況が変わらないときは課長を降りてもらうことになる。君の奮起を期待している」と訴えかけて、本人が起死回生を図るのをじっくりと待ちます。ダメなら、計画どおりに解任します。

 

中国の『三国志』に「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」という故事成語がありますが、機能しない管理職に対しては、解任する勇気と決断が会社を安定的に存続させるために欠かせないことを忘れないでください。

評価と連動する賃金制度の作成

図表2からわかるように、人事評価をした後に成長支援面談、昇格・昇進と続き、最終的に昇給、賞与といった賃金制度に結びつくわけです。

 

これは人事評価結果を成長支援面談ですり合わせた結果ですから、最後の賃金制度が曖昧では社員のモチベーションが下がります。社員が納得できなくなるのです。したがって、この社員チャレンジシートの作成後に(関連記事『総務・経理部門はどう評価?「人事評価基準」を明確にする方法』参照)、賃金制度を明確にして社員成長支援制度を仕上げてください。

 

[図表2]賃金制度は人事評価とセットで考える
今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度

今いる社員で成果を上げる 中小企業の社員成長支援制度

大竹 英紀

合同フォレスト株式会社

社員のやる気と能力を最大限に引き出し、会社の業績をアップする! そんな人事制度・評価制度を構築する方法をご紹介。 事例を交えた具体的な運用のコツも詳細に解説しています。

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