役職者としての適正、人望、リーダーシップ力を勘案
今回は、中小企業の管理職の昇進に関する具体策についてご説明します。
①社内的に判断できる昇進ルールを作る
私は、昇進のルールは「役職者(たとえば課長)としての適性、人望、リーダーシップ力等を勘案して決定する」とクライアントに指導しています。
昇格ルールと違って、昇進ルールはかなり大ざっぱになっています。なぜかというと、役職というのは、そのときの組織上の課題、部下の能力度合いなどによって役職者に求められる役割や責任などが変わってくるからです。したがって、より細かく明示することは、結果として運用が無意味になります。
重要なのは、昇進する本人が本当に役職者として部門、部署を任せるに価するか、それまでの実績、経験、期待値を考えに考えて最終的に決定するということです。
もちろん、どうしても昇進させなければ組織が回らないというケースもあるかと思います。その際は、社長自身が本人に、期待する管理職の役割を繰り返し伝え、定期的に教育指導をしていく必要があります。そうして社長が考える管理職像に近づけるのです(図表1)。
不適格管理職は是正の猶予を与え、改善がなければ解任
②ダメな管理職は解任することを真剣に考える
管理職登用後、数年間の仕事の成果を評価したときに、期待に応え、責任を果たしていないと判断した場合、そのまま放置していませんか。
少しのギャップであれば、面談を通じての指導や教育を実施することによって是正される可能性はあります。
しかし最悪の状態は、不適格管理職をそのまま放置していることです。それにより部門が機能しなくなり、部下が成長せず、辞めていくことも多くなります。こうした場合、会社が取るべき判断は、役職を解任することです。または、専門職として役割を変えることです。同時に下の者を昇進させることも考えます。
もちろん、急に本人に「オマエは管理職としてクビだ」と告げると、本人との関係性も最悪になります。
少なくとも数カ月前から「このままでは、この部署を君に任せることは無理だ。6カ月間、猶予を与える。この期間に挽回してほしい。もし状況が変わらないときは課長を降りてもらうことになる。君の奮起を期待している」と訴えかけて、本人が起死回生を図るのをじっくりと待ちます。ダメなら、計画どおりに解任します。
中国の『三国志』に「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」という故事成語がありますが、機能しない管理職に対しては、解任する勇気と決断が会社を安定的に存続させるために欠かせないことを忘れないでください。
評価と連動する賃金制度の作成
図表2からわかるように、人事評価をした後に成長支援面談、昇格・昇進と続き、最終的に昇給、賞与といった賃金制度に結びつくわけです。
これは人事評価結果を成長支援面談ですり合わせた結果ですから、最後の賃金制度が曖昧では社員のモチベーションが下がります。社員が納得できなくなるのです。したがって、この社員チャレンジシートの作成後に(関連記事『総務・経理部門はどう評価?「人事評価基準」を明確にする方法』参照)、賃金制度を明確にして社員成長支援制度を仕上げてください。